濡れた髪(適当)


風呂から上がった。
…待っていた恋人に豪快に笑われた。
「あはははは!カカシさん…それっ!」
「なによ?」
楽しそうにしてる顔は嫌いじゃないが、なにも涙を零すほど笑う事はないと思う。
そもそも何に対して笑ってるのかが分からない。
風呂上りだ。それにこの所暑いから俺が身につけているのは腰に巻いたタオルだけ。
それなのに、今日初めて部屋に上げてくれた恋人は、何だか分からない理由で大笑いしているのだ。
…苛立つよりも不安になった。俺の体はパッと見でもどこかおかしいんだろうか。今まで閨を共にしてきた女たちは、むしろ見惚れるくらいだったのだが。
幸いといっていいのか、股間はタオルで覆われているから、肝心のソコがおかしいって訳じゃないだろう。
なら、一体何がここまで?
答えはあっさり分かった。
「髪!ぺしゃんこ!あんなに逆立ってたのに!こりゃすごい!」
似たような格好で涼んでいた恋人が、ぺたぺたと素足で近寄ってきたと思ったら、面白そうに濡れてへたった俺の髪を弄っている。
「濡れたらそうなるでしょ?アンタだってそうじゃない」
「ま、まあそうなんですけど…ぷっくく…っ!ここまでぺしゃんこになるなんて思わなくて…!」
熱心に髪を掬い取っては、その感触を確かめている。
歩いたせいで弛んだタオルは、今にも腰から落ちそうだ。晒された上半身は、拭ききれなかった雫が残っていて、光ながら落ちていくそれが酷く卑猥だ。
「で、ぺしゃんこの髪じゃ、ヤル気にならない?」
油断しきっていたらしい。抱き寄せたらぽかんした顔で俺を見つめてきた。
鈍い反応に焦れて、とっくに熱を孕み始めていた股間を押し付けると、その顔はあっという間に朱に染まった。
「え!あ…っ!」
「で、どうするの?やっぱり…ダメ?」
風呂に入るまではがちがちに緊張していた。この人も、…それから隠してはいたが俺も。
いつだって男らしいこの人は、普段通りでいようと努力してくれたのか、それとも単に風呂上りで暑かったからなのか、こんな格好で待っていてくれた。
まさかあそこまで笑われるとは思わなかったが。
「ダメじゃ、ないです。カカシさんこそ…!その、俺はこんなですが、それでもいいんですか…?」
こういう潔い真っ直ぐな所に惚れたんだと、こんな時になって思い知らされる。
寄せられる体に、俺の体は簡単に熱を上げた。
「アンタがいい。アンタじゃなきゃダメだ」
邪魔なタオルを床に落として、その上に押し倒したら、恋人はふわりと笑った。
愛おしいとその視線で告げながら。
*****
風呂の中で悶々と、寝室までどう持ち込もうかとか、抵抗されたらどうするかとか、そつなくことを運ぶことばかり考えていたのに。
…いざ本番になってみればみっともないくらい盛ってしまい、寝室にまでなんてとてもじゃないが我慢できなくて、お陰で居間は散々な有様だ。
「あーあ。やっちゃいましたね」
「やっちゃったねぇ」
後悔してるんだろうか。できるかぎり体を気をつけないようにしたつもりだが、恋人の媚態に途中で理性が千切れてしまったから、自信がない。
…この人は男相手なんて、きっと想像したこともなかっただろうに。
「そんな顔しない!…ててっ!」
「ああ!ほら!ちょっとまって!布団に…!あ、風呂が先か?」
腰を抑えて眉をしかめるのを抱き上げてうろたえる俺に、恋人は容赦なく拳骨をくれた。
「落ち着け!…だから、別にそういう意味じゃなくて…掃除、どうしようかなと」
語尾がだんだん小さくなって、顔が赤く染まっていく。
照れてるんだと分かったが、それだけでずくりと腰が疼いた。
「掃除は、俺が。えーっと。やっぱりまず風呂で」
「そうですね…あの、お願いします…これじゃ、流石に…」
すまなそうに腰を庇う人を抱きしめて、寝室まで己の理性が保つことを祈った。
そんなこととは知らずに、不安定な体を支えようと抱きついてくる恋人は…これで全部俺のモノだ。
「我慢、しなきゃね?」
「え?」
幸せな苦悩を抱きしめて、風呂場へ急いだ。
いつかきっとずっと先になっても、この日のことを思い出すんだろうなと思いながら。


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適当ー!
最初の夜に大笑いされた可愛そうなカカチの話?
いちゃらぶー!と、濡れ好きがついつい…。
ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー!

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