ぬくもり(適当)

大体暗部の衣装ってものがよくないと思う。
「さっむ…」
二の腕晒してたら、いくらマント着込んでたって意味がないでしょ。
ま、チャクラでどうとでもできるけど。
それにしたって気分ってものがあるよねぇ?
「隊長」
「んー。今行く」
これからたくさん殺しに行く。
…そんな俺には似合いなのかもしれないけど、ね?
身を切るような冷気が肌を撫で、その感触はいっそ痛みに近いほどだ。
この寒さが心まで凍らせてくれたらと思う。
今更だ。何もかも。これまでだってたくさんたくさん奪い、消してきた。
それが少しばかり多いからといって、どうこう言うほどのことでもないはずなのに。
こんなに感傷的になるのは、寒いからだろうか。
「すでに結界は手配済みです。念押しの式も。…殲滅せよと」
「ん」
依頼は、殲滅というより虐殺に近い。
取り囲んで逃げられないようにして、全員見せしめのために殺すのだ。
間違っても自然死なんかには見えないように、きれいにばっさり切り刻む。
…わかりやすくその爪あとを残すために。
「…相手も覚悟の上でしょう。女子供はすでに退避させたようです」
「ま、そっちの方がありがたいねぇ?あんまりたくさんだと疲れるし」
もっと別の理由で安堵していることなどおくびにも出さない。
…副官として側に控えて長いこの男なら、気付いてるだろうけどね。
「早く片付けましょう」
「そーね。…寒いもん」
「そう、ですね」
ここに非戦闘員はいない。
数はおそらく予想された分の三割に満たないだろう。
…この村に残るもの全ての命を刈り取れば、俺は里に帰ることができる。
「さて、行きますか」
「そうですね」
帰ったらなんでもいい。…そうね。おでんでもらーめんでもいいから、何かあったまるものが欲しいな。
そのことだけ考えていれば、きっと他に気を回す余裕はなくなるはずだ。
「…ごめんね」
意味のない謝罪は雪のちらつく空気に混じって、きっと誰にも届かなかった。
*****
「おかえりなさい」
「え?」
三代目の元に報告に行ったまでは普段のことだったはずだ。
汚れて使い物にならない外套は焼き捨ててきたから、見てくれだけは取り繕えた。
…で、なんでそこにこんな子供がいるわけよ?
「おお、イルカ。すまんのう?こやつを風呂に。それから…うむ。寝巻きも貸してやりなさい」
「はい!じい…三代目!すぐ持ってきます!」
「カカシ。その茶を飲め。暖まるぞ?」
「はぁ」
差し出されたものに毒の気配はない。
面倒になって飲み干すと、その熱で少しは体が温まった気がした。
「今日は珍しくあやつが泊まりに来ていてのう。すまんが一緒に寝てやってくれんか」
「えーっと?閨房術の指南なら、くノ一の方が…」
「違うわ!馬鹿たれ!…今日は寒いからのう?」
暖房のきいたこの部屋で、それは何の理由にもなっていない気がしたが、里長に逆らうのも面倒だ。
家に帰ってもどうせ一人だし、女を抱きたい気分でもない。
…虚空に伸ばした手と、女の名を呼ぶかすれた声、それからその瞳が光を失う瞬間まで、全部が俺にまだ染み付いている。
本当ならあんな小奇麗な子供にも触れたくはない。
汚してしまいそうだから。
「…風呂は、お借りします。でも」
「良いか。ちょっかいはかけるなよ。アレはまだまだ子供じゃからの」
「はいはい」
これは逆らっても無駄だろう。なにより俺にはもう本気で考える気力すら残っていない。
「では、の?」
ぱたぱたと走りよってくる足音に、俺は全てを諦めるほかなかった。
*****
風呂は流石に火影邸だけあって湯加減も申し分なかった。
汚れた体をきれいに洗い流すと、少しだけ楽になった気がする。
それを待ち構えていたように子供が駆け寄ってきたのには閉口したけれど。
「お布団こっちです!」
「んー?でもほら、もう帰るよ」
布団は大人用だ。確かに俺とこのほそっこい子供が一緒に収まるくらい訳ないだろう。
「…じいちゃんが一緒にお泊りって…」
「あーわかったわかった。寝相悪くても怒んないでね?」
泣かれるよりはいいだろう。
…泣き声なんて今聞きたい気分じゃない。
「大丈夫!俺寝たらおきないもん!」
それは忍としては自慢できないぞとは思ったものの、子供が浮き足立った様子で布団に収まるのを見れば、抗う気もなくなった。
「じゃ、お休み」
隣に滑り込むと、子供が先にここで寝ていたのか布団が随分と暖かい。
それから、へばりついてきた子供の体温も、妙に俺になじんだ。
「おやすみなさい」
宣言通りあっという間に寝息を立て始めた子供は、しっかり俺にしがみついたままだ。
「んー?ま…あったかいからいいか」
日向のにおいがする子供を抱きこんで、俺の瞼を閉じた。
足元から滲み出ているように感じた洗っても消えない血の匂いが、今は遠い。
そういえば、里に帰ってきたらあったかいものが欲しかったんだっけ。
…この子供はそういう意味ではうってつけだ。
あの爺さん、どこまでわかってるんだかね?
狸爺の腹の底を知る努力は、また今度することにしよう。
抗いがたく襲ってきた眠気に、今は溺れてしまいたいから。
「ふふ…」
顔を横切る鼻傷にこっそりと口付けを落としたのは…どこかで覗いているだろう爺への意趣返しだ。
それから、もっと別の…。
そんな思考さえかすれて消えて。
俺は驚くほど穏やかな眠りに溺れていったのだった。


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ちょっと間に適当小話挟んでみる。
ねむい…(´;ω;`)。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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