とある上忍のけいかく3(適当)


これの続き。


「おいしい!」
「そうかそうか!たっぷり食えよ!」
逆立ったふわふわの髪の毛の手触りは最高だ。指の間をするりとすり抜ける感触はやわらかくしなやかなくせに、ふわっふわでボリュームがある。
近所のむくむくの犬がこんな感じだったなぁと思い出しながらもふもふとなでていると、くすぐったそうに子どもが身をよじった。
おっと。食ってるのを邪魔するのはマズイな。いかんいかん。
それにしてもつくづく小さい。頭なんか俺の手のひらに収まりそうだ。 顔が小さいっていうか、華奢なんだな。全身が。
しかもこんなに小さいってのに一瞬で一目を集めてしまうほど整った容姿。俺でも心配なんだから、親御さんならさぞかし心配していただろう。今は…いないってのが任務なのかどうかわからんが、とにかく早いところ保護者を見つけてやらないとどっちも可哀想だ。
それでなくても子どもになにかあったらとなると悪い想像ばかりしがちだってのに、更にこの子はこの容姿だ。そりゃもうとてつもなく心配してるに違いない。
もぐもぐと麺をかみ締めては俺を見てにこにこ笑う子どもに思わず頬が緩む。
かーわいいなぁ!思わず俺の分のチャーシューを乗っけてやったら目を丸くして驚いて、それからありがとうってこう素直に礼を…!
いやアカデミー生ももちろんかわいいぞ?でもなーきっちり反抗期というモノを迎え、しかも好奇心旺盛な連中ぞろいだから、かわいいけどとんでもないことをしでかすという認識があって、こんな風に素直に無心に飯食ってるのを見ると癒されるんだよ。
…あれだな。疲れてんのかもな。俺。
「イルカ先生はさ、なんの先生?」
「え、ああ。トラップとか、術も薬学なんかも教えるぞ。忍になるために必要だからな」
流石にくノ一クラスの授業まではわからんが、大抵の授業は担任が一人で教えられる。
怪我で外勤をやめた先生から大規模な戦場についての講義があったり、後はたまに上忍の戦忍に特別講義してもらったりってのはあるけどな。
幼年クラスの担当になると、忍術の授業そっちのけで、とりあえずアカデミーに通うことに慣れることからはじめなきゃいけない。お漏らしやらホームシックやらと戦う日々にも馴れたつもりでも、少し疲れがたまっていたのかもしれない。
「そっか」
どうやら何かを納得したらしい。
なんていうか、賢そうな子だ。撃てば響くというか、無駄口は少ないのに状況をきちんと理解しているような…?
そんな子だから一人で迷子になっても泣いたり騒いだりせずに我慢してたんだろう。それで俺を見つけたときに思わず縋りついちまったって所か。
「なぁ。名前、聞いてもいいか?」
名前が分かれば施設の名簿と照らし合わせれば一発だ。それになんて呼んだらいいかわからんってのもな。
「カカシ」
素直に名乗ったことに、少し驚いた。俺に懐いているようでいて、妙に警戒しているというか、周囲への気の配り方が尋常じゃなかった。まるで忍のような…って、まあ親がそうだと子に仕込むってことは珍しくはないんだが。
「そっか。じゃあカカシの今住んでるところを教えてもらってもいいか?」
この分なら自分で言えるだろうと思ったのに、何故か急にうつむいてしまった。
「…母さんは病気で療養してる。父さんは家にあんまり帰ってこない。任務で」
それでか。寂しかったのか。
ぐっとこみあげるものを押し殺して、必死で笑顔を作った。
この子を惨めな気分にさせたい訳じゃない。寂しさを少しでも薄められるなら、それでいい。
「あーその、保護者の人に連絡がつくなら、俺んち泊まるか?」
「え!でも、いいの?俺、一人でできるから大丈夫だよ?」
虚勢じゃないのは分かる。でも寂しいのを我慢してるってのもバレバレだ。
確かにこの子はなんでもできるんだとしても、心細いだろうに。
「カカシが嫌だったら無理はしなくていいんだけどな?今うちにもらいもんの野菜があって余ってるんだ。一緒に食ってくれたら助かるんだよ」
出来るだけ負担にならないように言葉には気をつけたつもりだが、この子なら俺の下手な言い訳に気付いてしまうかもしれない。
「…イルカ先生がいいなら、泊まってもいい?」
ああくそ!かっわいいじゃないか!
上目遣いで泣きそうな顔なんてされたら、もうどうあってもつれて帰ると決心するには十分だった。
「おうとも!」
もうこうなったら乗りかかった船だ。親御さんが任務から帰ってくる時期をちゃんと聞いて、伝染性のものじゃなかったら母親にも会えるように都合して、きっちり話をつけよう。
そう腹が決まると気分もすっきりした。
「あの、でも。ほんとに、いいの?」
「もちろんだ!たくさん食ってくれたら助かるよ」
言ってしまってから、無理をしてでも食ってくれそうだなと焦ったが、本人はぱあっと顔を輝かせて飛びついてきた。
「がんばるね!」
「ありがとな!」
こうなったら腕によりをかけて飯作らないとな。
ニコニコ笑う子どもを、これ以上悲しませないために。


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適当。
かふんやばいです。おめめがあかない。
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