とある上忍のけいかく15(適当)


これの続き。



「先生。今日はえらくご機嫌だね!そっちの坊主は…いつもの子じゃないがソイツもほそっこいじゃねぇか?」
「ほそっこい?」
きょとんとした顔をかしげる仕草がまたかわいらしくて、育ったはずなのに幼さを感じさせる。
そうか。久しぶりに見たせいか、随分でっかくなってるように思えたけど、そういや細い、か?
1年前の小さくて折れそうだった体は、もうすっかりしなやかに育って、額宛も前より大分様になっている。
といっても、せいぜい下忍に成り立てって言われたら違和感がない程度なんだけどな。
カカシは低ランク任務で頭部に裂傷を負うような落ち着きのない子じゃないから、最低でもCランク以上の任務についてるんじゃないかと思う。
そう考えると育ったように思えたカカシが、途端に細くて脆くて小さい生き物に思えてきて不安で仕方がない。
って、落ち込んでてもしょうがないんだけどな…。
とにかくちゃんと食わせないとなぁと考えてから、そういえばいつまで一緒にいられるかわからなかったことを思い出した。せめている間だけでもたっぷり食わたい。
「味噌とんこつチャーシュー2つ!あと野菜炒めとチャーハンも!」
後は何がいいだろう?甘い物を喜んで食ってたという記憶はない。どっちかというと苦手そうだった。魚が好きだったけどラーメン屋に魚っぽいものなんて、ラーメンのスープくらいのもんだろうし、味噌とんこつにしちまったから魚介の風味もわかりにくくなってるだろう。ええと。何を食わせたら良いんだ?
焦燥感と義務感がない交ぜになって、とにかく何か食べさせたくてメニューを食い入るように見つめた。
…ビール、は無理だし。ザーサイも何か違う気がする。つまみだよな。これじゃ。チャーシュー…はラーメンにトッピングした。煮たまごも頼むか?飲み物もオレンジジュースよりも牛乳のが好きだもんな。カカシは。
「たらふく食ってっておくんな!うちのラーメン食ったらすぐにでっかくなるぞ!」
相変わらず店主のテウチさんは威勢がいい。
本当にすぐにでっかくなれたらいいんだけどな。
この言葉を信じて通いつめていた頃、毎日のようにがんばったからサービスだって、野菜炒めとか餃子とかもつけてくれた。あれは経済的にも精神的にも不安定だった俺に、たっぷり飯を食わせるための方便だったんだと思っている。
任務から帰ってきてここで飯を食うと、とてつもなく幸せな気分になったもんだ。
カカシも気に入ってくれるといいな。ここの餃子は皮がぱりっとしてるのに中がジューシーで…あ、そうだ!餃子!餃子も頼もう!
「あと餃子!2つ!」
「あいよ!」
よし!とりあえずこれで一旦様子を見て、足らないようならチャーシュー丼とかもあるしな!
何かを成し遂げたような気分になって、カカシに足りない物があったら頼むように言おうとしたら、ものすごく渋い顔をしていた。
「え?あれ?餃子嫌いか?」
「なんだ坊主?苦手なら無理しなくてもいいんだぞ?まあうちの餃子は餃子嫌いもひっくり返るくらい美味いけどな!」
そうなんだよ!確かに滅茶苦茶美味いんだ!持って帰ってあっためなおしても美味くて、家で料理が上手に作れなかった頃は、ラーメン食った後お土産に包んでもらうことも良くあった。
一口食ってみて駄目だったら俺が食うからいいんだけどな。久しぶりなのに食べたくない物を無理強いする必要はないし。
「ううん。餃子は平気」
「お!そうか!ここの餃子は美味いからなあ!」
「そうじゃなくてね。ねぇ。いつもの子ってだれ?」
「へ?」
いつもの子…ああ、あれか。さっきテウチさんが言ってたっけ。よく聞いてるなぁ。やっぱりカカシは優秀だ。
「ああ、教え子なんだ。とんでもない悪戯小僧でな。しっかり後片付けしたら飯食わせることが良くあるんだ。たっぷり叱ってるんだけどなぁ…やめる気配がない」
まあ俺もそんな感じだったからどうも無碍にできない。
俺の場合、悪戯が楽しいのは寂しいからだって気付いてからは、ちょっとずつやらなくなったけど。家に帰っても誰もいなくて、だからちょっとでも誰かに俺を見て欲しくて、ある日ふっとそんな自分がかっこ悪いと思ったから止められた。
でもなぁ。アイツはまだガキんちょで、純粋に他人の反応がおもしろいって部分もあるだろうし、もうちょっとするまで収まらないだろうとある程度諦めてもいる。
「…それじゃ、きっと悪戯やめたりなんてできないね」
「え?」
低く呟くような声。
何かを納得したような、そのくせ諦めたような顔でため息をつくから反応に困った。
なんだよ。怒ってる…にしちゃ変だよな?
「イルカ先生。俺これ頼んでもいーい?」
そういってカカシが指差したのは、杏仁豆腐だった。ぷるぷるなのにもちもちしてて美味いって、そういえばカカシに言ったことがあったっけ。
「おう!あと野菜炒めとかも来るからな。たっぷり食えよ!」
「うん」
ちゃんと飯食わないとでっかくなれねぇからな。食欲がちょっとだけ有りそうで安心した。
「へいお待ち!さあ坊主!しっかり食えよ!先生もな!」
「えと、はい」
「へへ!もちろん!」
手際よく並べられていく料理はどれもこれも美味そうで、カカシが食ってるのを見るのが楽しくて、もちろん味はいつも美味いんだけど、今日のらーめんは殊更美味く感じた。
目が合うとにこって笑うのがまたかわいいんだよ!
さっきの反応がちょっと気になるけど、まあ、後で聞けばいいや。
一泊くらいはできるみたいだし、その間に場合によったら三代目にお願いしにいこう。
二人してもりもりラーメンやらなんやらを平らげて、パンパンになった腹を抱えて、やっぱり一楽は最高だなと思った。

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適当。
杏仁豆腐はイルカ先生用でしたとさ。
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