久々の休暇でゆっくり眠れるかと思いきや、たっぷりヤれるからと張り切った恋人のおかげで夜というか朝まで眠れなかったおかげで、今日の朝は随分と遅かった。 朝っていうか、もう昼だな。休みじゃなかったら叫びだしてるところだ。 まあ休みであったとしても、こうしてどうにも堕落した感が否めないのだが。 まあとにかく、二人してゆっくり休める日ってのは貴重だ。だからこそ二人してくっついて惰眠をむさぼるなんていうのは、最高の贅沢なわけだ。 離れがたくてなんとなく同じベッドで同じ布団に包まっていられるその状況に、多分浮かれていた。 飯を食うのも億劫なくらい体は疲れきっていて、特にこのところ忙しくてお互いすれ違いがちだったせいか、離れたがらない恋人をもっと甘やかしたくなって、まあ一日くらいなにも食わなくてもと思ったんだが、胃袋はそうもいかなかったようだ。 盛大に空腹を訴えて鳴る意地汚い腹を、あのときほどうらんだ事はないだろう。 何かつまんできますととりあえずこの人の前にいるのがいたたまれなくて、軋む体に鞭打って、台所に逃げ込もうとしたら…普段料理なんて殆どしない人がくっついてきた。 「寝てていいよ?」なんていいながら、背中に張り付いて。 危ないし邪魔ですとか言っちゃったんだよ。実際火を使うときにくっついていられると怪我でもさせたら怖いじゃないか。 だがしかし。恋人は無駄にすごかった。 俺を椅子に座らせて毛布でぐるぐる巻きにしたかと思ったら、ちょいちょいちょっかいをかけつつ。あっという間に朝飯を作ってしまったんだ。 たまごとかふわっふわだぞ?大根おろしまでついてんだ。俺なんてせいぜい目玉焼きか面倒なときは白い飯にぶっかけてそのままくってるっつーの!味噌汁とかだしから取ってるし、時間がないからとか言ってるのに、レンコンの金平とかささーっと作っちまうんだ。 包丁捌きの滑らかさは、目を奪われるほどで、ああ、この人上忍なんだなってそんなところで感心した。 普段は甘えたで、俺の適当な飯を食わせると嬉しそうに頬張ってたのに。一回飯を食わせたら、イルカ先生のご飯が食べたいですとかいってしょっちゅう上がりこんでくるようになって、いつの間にか俺まで食われてたのがそもそもの切っ掛けだしな。 …我ながらちょっとたやすすぎると落ち込んだ。 だって、なんだよ。アンタのが料理上手なんじゃねぇかって。腹立つだろ?でも美味そうなんだよ。悲しいくらい。 でもいざ食おうって段階になったら膝に乗せられて、その段階でこっちは恥ずかしくていたたまれなくて、でも毛布のおかげで上手く逃げられなくて泣きそうだった。 そしたら、泣きそうな顔っつーか、ものすごくしょんぼりしたカカシさんが、イルカ先生のご飯じゃなくてごめんねっていうんだ。 上手そうな飯が並んでるのにだぞ? おいしくないご飯食べたくないかもしれないけどって、そんなことあるわけないだろ。 むかっぱらが立った勢いでそのままがつがつ食ってやったらそれがまた美味くてな。 「こんなに美味いのに、飯がかわいそうだろ!」とか怒っちゃったんだよなー。勢いっつーかうん。アホだと自分でも思う。 そしたら、笑ったんだ。そりゃもう嬉しくてたまらないって、ほっとしましたって顔でさ。 誓って言う。普段は淡白な方だ。ところかまわず盛ったりなんてしない。さんざっぱらやったあとだったし。 でも、駄目だった。それ見たらこうがーっとなんかこみあげてきて。 美味い飯がもったいないから、がつがつくって、作ったやつにも食わせて、不思議そうに味がするとか言うのを黙らせるためにガンガン口に放り込んでやった。 でだ、食い終わった食器の片付けもそこそこに、ベッドに連れ込んでそのまま続行したというか。 あれだ。ちょっとおかしくなってたんだきっと。 結果的に恋人は舞い上がって舞い上がって、そりゃもう…ってまあとにかく。 「俺のカカシさんにちょっかいかけたら殺す」 同僚が最近動きがぎこちなかったり、顔色が悪かったり、そのくせ妙にハイテンションだったりするもんだから、強引に連れ出した食堂で、これほど後悔したことはない。 色っぽいため息よねとか、茶化してたくの一の先生方のが正しかったのか…! のろけを駄々漏れにし続ける同僚にも困るが、それよりなにより…食堂の入り口で視線だけで殺せそうなほどの目でにらんでくるこいつの片割れだと今日判明した上忍が怖すぎる。 「幸せになれよ!」 そういい残して全速力で逃げ出した俺を誰が責められよう。 まあその後だれかれ構わず無意識に、だが盛大にのろけるようになった同僚と、それに引っ付いてだれかれ構わず威嚇するようになったその恋人のおかげで、被害は広がっちゃったんだけどな。 仲睦まじくすごす二人を見る限り、この状況は変わりそうにない。だけど、だけど…幸せそうな二人をみてると、しょうがないかなぁと思う自分もいて。同僚たちと肩を寄せ合って逃げたり冷やかしたり眺めて楽しんだりする日々を送っている。 ******************************************************************************** 適当。 |