「ぎゃああああ!?」 絹を割くような野太い悲鳴に飛び起きてみれば、散々人を喘がせた挙げ句、俺の隣でご機嫌に寝入ったらしい上忍が頭を押さえて蹲っていた。 「あんた何やってんですか…」 その強さと引き換えにしたかのように普段から奇矯な振る舞いの多い男だが、いきなり叫ぶとは。朝っぱらから近所迷惑にもほどがある。 取り敢えず殴ったまではよかったが…その手に妙にもふっとした感触が走った。 「痛い…ってそれどころじゃなくて!み、耳が…!?」 …普段通りまた訳の分からない行為を仕掛けようとしていたのかと思いきや、あからさまにパニックを起こしている上忍を見る限り、どうも違いそうだ。 おまけに頭を押さえて呻いているその背後ではパタパタと何かがシーツを叩いている。 「あんた、なにやらかしたんですか…!?」 見間違いようもない。 …それは明らかに尻尾だった。それもこの男の髪と同じく上等な毛並みの。 「何で…何で俺の方が!?」 まさか敵に術でも食らったかと焦ったが、その台詞で大体の事情が理解できた。 「あんたまだ懲りてなかったのか!」 今度も思いっきり降り下ろした拳は、再びフワッとした感触に受け止められたのだった。 ***** この上忍が黒く可愛らしい付け耳を、あろう事か成人して随分たった男である俺に付けさせるために持ち込んだのはつい最近のことだ。 ステキなお土産があるんです! …それをそう称した男によって大事そうに取り出されたシロモノに、最初は頭がついていかなかった。 二度三度と眺め、他の用途に使いようもないものだとようやっと理解した。 この男が大馬鹿であることも。 だが上忍は俺の苛立ちなど物ともせずににこやかに俺の頭にそれをすえつけようとしてきたので、羞恥とそれを上回る驚きと呆れを込めて鉄拳制裁を加えたのだ。 その時…不満げな瞳はあからさまに反抗的だったから、油断出来ないとは思っていた。 …だが、まさかここまでするとは。 「あんた、本当に馬鹿なんですねぇ…」 しみじみと呟くと、ぱたぱたとシーツを叩く銀色の尻尾だけがそれに答えてくれた。 …一頻り呻いた後、上忍はどうやら放心することにしたらしい。 その隙に毛並みをしっかりと堪能した。 手触りのいい頭をしているくせに、うかつに近づくと押し倒されて翌日の業務に差し支えるほど貪られるので中々触るチャンスがないのだ。 特に、今はさらにさわり心地の良さそうなものが頭に生えている。これを触らずして何を触る。 「フワフワ…」 そっと触れたそれは一瞬ぴくっと震えたものの、撫でられることが心地よいと理解したのか、大人しくその和毛を撫でられるに任せている。 不味い。ちょっと楽しくなってきた。 普段ならありえない道具やらなにやらを持ち出し、卑猥な行為にふけることばかり考えているような男をこうして好き放題にできるという誘惑に俺は勝てなかったのだ。 耳を触り頭を撫で、ついでに腹をめくってみたがそこには毛が生えていないことを確認し…調子にのって、尻尾の付け根まで手を滑らせた時の事だった。 「にゃう…っ!」 鼻にかかった声。それこそまるで盛りのついた猫のような。 それと共に俯いていた上忍がキラリと瞳を輝かせて俺を見た。 …しくじった。そう気づいた時には全てが遅かった。 それこそ獣のように飛び掛かってきた愉快な格好の上忍に獣のように四つん這いにされて後ろから貫かれ…散々に喘がされていた。 ***** 「あー気持ち良かった!」 先程までの落ち込みようが嘘のように、上忍は上機嫌だ。 それもそうだろう。溢れるほどに注がれた欲望が、今も無体を強いられたそこから零れ落ち続けている。 あれだけ吐き出してすっきりしないわけがない。 …俺の方といえば、慣れない姿勢での行為に、それもふわふわと背を撫でる本来なら人にはあり得ない器官の感触にまで翻弄されて、身動ぎするのさえ辛いのだが。 「うううぅ…」 痛みと己の不甲斐なさに呻くばかりの俺に、上忍は鼻歌混じりに言いやがったのだ。 「ま、こういうのもたまにはいいですよね!」 腹立たしい。なにがって…こんな馬鹿に惚れた自分が。 取り敢えず、体が言うことをきくようになったら殴ると決めて…今日だけは己に休息を許すことにした。 今殴ってもたいしたダメージは与えられないしな。 …覚えてやがれ…!このくそ上忍! ちなみに…翌日すっかり己の姿を忘れてご機嫌なまま任務に出た上忍が、和やかに余りにも普通どおりに振舞った結果、受付を大混乱に陥れたのだが…まあ残念ながらいつものことだってことにしておいて欲しい。 ********************************************************************************* 適当。 もそっとかいたものをちょっと訂正してやっぱりエロはかけませんでした(´;ω;`)。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |