その手のぬくもり(適当)

寒いから暖かそうな人につい物欲しげな視線を送ったら、どうやら気付かれてしまったらしい。
多分帰りがけだったんだろうに、わざわざぼんやり突っ立っていた俺のところまで駆け寄ってきて、心配そうな顔で俺に話しかけてきた。
「最近何かあったんですか…?まさかまたナルトに…!」
そういえば、あの子どもは随分とこの人に迷惑をかけたと聞いている。
まさかただ暖を求めて視線をさ迷わせてたら、あったかそうな生き物がいるからついつい見つめちゃいましたなんて思うわけないか。
無駄に心配させるのはマズイでしょ?流石に。それでなくてもこの人アカデミーでも自分の生徒のことばっかり心配してるみたいなのに。
すぐに勘違いを訂正しようと思ったのに、なぜか口をついたのは全く違う言葉だった。
「イルカ先生って、あったかそうですよね」
多分寒すぎたんだ。
雪に埋もれかけながらこなした任務は、理性ごと体温をごっそり削いでくれた。
おかげでふらふらと暖かそうな人についていきそうになる始末。上忍の癖に我ながらとんだ体たらくだ。
…だが、試しに握ってみたその大きな手は、予想以上に暖かい。
いいな。この人。寒さで死ぬほど弱くないけど、こういう熱源がそばにあったらよく眠れそうだ。
この身に纏わり着く血の臭いも痛みも忘れて。
「カカシ先生冷えちゃってますね!随分!これじゃ痛いんじゃないですか?」
握り返されるとは思わなかった。
陣割と染み入る体温と…それからもっと別の暖かい何かを感じて、ふわりと体が軽くなった気がした。
「イルカ先生、あったかいですね…」
イルカ先生はぎゅっと握り返したに驚くこともなく、むしろ心配そうに俺の手を引いてくれた。
「へへ!アカデミーはストーブがありますからね!まだそんなに冷たくは…そうだ!俺の家でお茶でも飲んであったまってってくださいよ!ここにいらしたってことは、家、近いんですよね?」
単にあなたが見えたから着いてきちゃっただけですなんて、とてもいえない雰囲気だ。
まあ近くに隠れ屋の一つはあるから、そうおかしくもないか。
「ん。そうね。…イルカ先生の家、あったかそう」
家って言うか、存在そのものがあったかそうだ。
ちょっとだけでも味わうと出たくなくなるこたつみたいな感じっていうか。ま、そんなといったら怒られそうだけど。
でも、いいよね?ちょっとだけなら。
だって今日はすごく寒いんだもん。
「にしてもホントに冷え切ってますね。いっそ酒でも飲みますか?なんなら泊まってっても平気ですよ!」
温めようとしてくれてるんだろう。
ぎゅっと握られた手の温もりも、心配そうな視線も心地よすぎて離せない。
いっそ中毒になりそうなくらいに。
「…じゃ、お言葉に甘えてちょっとだけ」
「へへ!じゃ、鍋にでもしましょうか!もらい物の野菜がいっぱいあるんで、肉だけ買って帰りましょうね!」
「じゃ、それと酒は俺が買います。イルカ先生は美味い物食わせてくださいね?」
「うっ!…ま、まあその、鍋なんで煮ちゃえば大丈夫です!…多分!」
貰いものって辺りがこの人らしい。
おかしくなって笑ったら、ふっとイルカ先生も笑ってくれた。
「帰りましょう。あったかいとこへ、早く」
ああ、あったかいな。この手がずっと俺の側にあればいいのに。
早くもっとあったかくて…この人を独占できる所へ行きたい。
「そうですね。急ぎましょうか」
「はい!」
にかっと笑って鼻傷を掻く人に見とれながら足を速めた。
…とっくに惚れてしまってるなんて、欠片も気づかずに。


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適当。
寒いので!寒いのでぇええ。゜。゜(ノД`)゜。゜。
このあとで強引に入浴剤入りの風呂に突っ込まれたり、どてら着せられたりなでなでされてより一層ここんちの子になりたくなったり、それに気づいちゃったイルカ先生が自分ちの子にしちゃおうとしたりといろいろありつつも、もじもじしたまま春になってしまえばいいのに。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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