「なんで?」 「いや、なんでって言われてもですね」 「だって…なんで?」 誰かこの上忍どっかに連れてってくれよ…。 そう思わせてくれるほど、この人には言葉が通じない。 「とりあえず、今が受け付け業務中だからというのも入ってます。説明には時間がかかりそうですので、またの機会にしてください」 そういうと一応しょんぼりした顔をしたから、ダメだってことは分かってくれたらしい。 とりあえず。今は。…理由は理解できてないだろうけどな。 「じゃ、また後できますね?」 いい年した男が小首をかしげてきたって、どうってことないはずなんだが。 どうしてこう…罪悪感が湧いてくるんだろうな。 いつも思うがあの人は仕草が幼い。思考も…戦略に関しては別だが、どうも子どもっぽいような気がしてならない。 昔みんないなくなっちゃったから、もういらないんです。 なんて舌っ足らずに言われると、胸が痛くてたまらない。 まあ酒が入ってたのもあったにしろ、言葉の一つ一つが自分を少しずつすり減らし、最近では放っておくのが怖いとさえ思うようになっていた。 ナルトと一緒だ。一人でいることが当たり前すぎて、甘え方を知らない。だから加減もできない。 ナリは大きくても、中身は下手をするとナルトより幼いかもしれない。 そしてタチの悪いことに、この人は上忍なのだ。 望めば大抵のことが叶ってしまう特権階級にありながら、今までは多分わがままを知らずにきたんだと思う。 いつも持ち歩いている成人向けの怪しい本以外の何かを欲しがるこの人なんて、めったに見たことがない。 ちょっと言うだけでもらえるって怖いじゃないですかなんていっていたのも知っているから、元々無欲なのに加えて、頭はいいから、自分の影響力を理解しているせいもあるのかもしれない。 で、だ。だからって報告書片手にニコニコやってきて、ついでとばかりに…イルカ先生くださいはないだろう? 一から十までおかしい。 まず第一俺はものじゃない。それにここは受付所だ。それから…何でついでみたいにそれはもういい笑顔で…。 何かいいことを思いついた!って時の顔だ。あれは。子どもたちがああいう顔をする時は、確かにすごい発想であることもあるが、大抵は…突拍子もないことであることが多い。 あの人、忍としての能力を極めすぎて、他にまわす分を使い果たしちゃったんだろうか。 もちろん嫌いじゃない。ペットになる気は毛頭ないにしても、悲しませたくないと思うくらいには、あの人のことを気に入っている。不遜かもしれないが放っては置けない。 下さいなんていわれてあげるわけには行かないのに。…普段わがままを言わない人なだけに、聞いてあげたくなるじゃないか。 「はぁ…」 受付のソファで長々とくつろいでいる姿は眼福だが、どう言ったらいいものか。 あと数分で受付が終わる時刻を示し、粛々と時を刻み続ける古びた時計が恨めしかった。 ***** しょうがないからうちに誘った。 この人には常識があんまりない。 外でめったなことがあったら困るじゃないか。 …いきなりとんでもないことを言おうものなら、翌日には噂話にもなるだろうし、下手をすると火影様まで話が行ってしまう。 で、差し向かいに座って茶の一つも出してみたんだが。 どうしてこの人がっちがちに緊張してるんだろう。 「あの、そのですね!」 「はい。…その、緊張しないでいいんですよ?別に尋問じゃないんですから」 事情を説明して欲しいとは言ったが、どうしてこうなってるんだろう。 こんな顔してるの始めてみたよ。結構付き合い長いのにな。 「あの、下さいって言ったのに、こ、これってイイってことですか?」 「下さい…ああ、その件ですが、まず下さいとはなんですか下さいとは!俺は人間なのでもののようにやりとりはできませんよ?」 優しく諭す…まあちょっとはムカッときてたから口調がすこーし厳しかったかもしれないが、一応ゆっくり説明したつもりだった。 それでどうしてこう…悲しそうな顔されるんだ? 「ああ…やっぱり意味わかってないのね…。鈍いからちゃんと言わないとわかんないとおもうってばよーなんていうからいくらなんでもそれはないでしょって思ったのに」 その口調は…この原因はナルトか?少なくともナルトが絡んでいるってことははっきりした。こんな行動とるなんて、この人らしくないと思ったらあいつか。相変わらず意外性ナンバーワンすぎるな。 「えーっとですね。ナルトは置いておいて。…いいですか、俺は…」 「好きです。イルカ先生。えーっと恋愛感情ってやつですね。それから、下さいっていうのはこういう意味です」 いきなりキリッとした顔するから驚いてたら、いきなりキスされた。 なんだ。何が起こってるんだ。 「へ?」 「ああもう!わかってないじゃない!もういい!家に入れた方がわるいってことで覚悟してください!」 「わっあ!?え!?ええええ!?」 …で、その夜俺はめくるめくって言葉の意味とか、そんなとこにそんなものはいっちゃうのかとか、痛いのに気持ちイイとか太陽が黄色いとか…いろんなものを知る羽目になったんだが…そんなの望んでねぇよ! 結局、すっかり抜けた腰で寝込みながら上忍を問い詰めたところ、なぜか第7班で上忍師の恋愛相談会なんてものをしでかしてたってことが分かって憤死しそうになった。 「だって、好きなんだもん」 最終的に半泣きになりながらそういってきた男には、考えたくもない汚れで大変なことになってしまった部屋の掃除と、それから…とりあえず毎日キスから始めるように命じておいた。 …かわいそうだの放っておけないだの思い始めたときには、もう惚れちまってたらしい。 今更ながら気づいた自分の鈍さへの贖罪もこめつつ、でもしばらくは…自分も好きだってことはだまってやろうと思ったのだった。 ********************************************************************************* 適当。 ねむいいいいい ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |