にぶちん(適当)



あ、またぼんやりしてる。
凄腕の上忍のはずなのに、はたけカカシと言う男はどうも少しばかりぼんやりしすぎていると思う。
腕は立つ。
戦う姿を間近でみたのは同じ任務についたたった一回だけだが、それでも十分すぎるほどに、この男の強さは理解できた。
業の冴えといい、知略といい、なるほど女たちが騒ぐわけだと納得もしたさ。
それなのにこの人は、里にいるとおどろくほどぼんやりしているのだ。
憂い顔がかっこいいと、そう騒ぐ同僚の言葉に窓の外を見てみれば、樹上で明らかにぼんやりしている男がいたとか、夜と昼の狭間、うす赤い空に照らされて美しい男が物思いに耽っていたというから視線をやれば、やはりぼんやりしてる男が…。
何であの人いつもこんなにぼんやりすごしてるんだろう。
四六時中集中しろなんて間違っても言わないが、流石に里の中とはいえ、あそこまで四六時中ぼんやりすごしてるってのはどうなんだ。
あれじゃ危ないだろう。それでなくたって狙われてるってのに。
とはいえ相手は成人した男。しかも階級も上だ。何事もなければ黙って見過ごすつもりではあった。
あくまで、つもりではだったんだと気づいたのは、ぼんやりした男が水溜りに突っ込もうとしていた時のことだった。
「なっなにやってんですか!」
「あ、イルカ先生?」
初めて気づいたとばかりに俺を見る男の顔は、明らかに驚いていた。
気配なんて殺してない。里にいるときは忍とはいえ気配を消して過ごしたりする忍は一握りだし、アカデミー教師は子どもたちのために、むしろ意識して気配を出す訓練すらする。
…こんなにぼんやりしてちゃ心配すぎるだろ。流石に。
「気をつけなきゃ駄目でしょう!ずっと緊張してろとは言いませんが、ここの所ずっとぼんやりしすぎですよ!」
この人は、俺の生徒でもなんでもないってのに、言いすぎだ。
言ってしまってから気づいたんだからもうどうしようもないけど。
怒鳴られるか無視でもされるか。俄かに緊張しだした俺に、上忍が笑った。
「そっか。ここの所、ずっと、ね?」
「…え、え。何か気がかりなことが?」
相談ごとの種類によっては、里常駐でそれなりにネットワークがある俺のほうが動きやすいこともあるだろう。
思い切って水を向けると、なぜか手を握られた。
「ありがとう」
礼を言われただけだ。それなのに。
顔が熱い。鼓動がうるさい。ああこの人の素顔ってこんなに綺麗なのか。って、なんで覆面下げてんだ?
「た、たいしたことないですって!通りがかっただけですし!」
「んーん。でもお礼がしたいんです。だめ?」
断ろうと思った。でもその目があんまりにも必死だったから。
「礼は、いいです。ただその、今日飯でも一緒に」
礼を下手に断ったら泣くんじゃないかと思ったから妥協に妥協を重ねた返事をしただけなんだが、かわいい返事が返ってきた。
「はい!」
百戦錬磨の上忍様のはずなのに、どうしてかかわいいとすら思う。
まあ諸々訳がわからんことが多いけど、それはそれ、だな?
「じゃ、いきますか」
「はい」
何故か手を握られた。…うーん。まあこの人ぼんやりしてるしなぁ。ちょうどいいか。はぐれたりしたら大変だもんな。ちゃんと食ってないからぼんやりしてるのかもしれないから、今晩はいっぱい飯を食わせてやろう。
そんな決意を固めていた俺は、男が恋わずらいをこじらせた挙句に実力行使にでるかどうか悩んでいたなんてことに、少しも気づかなかったのだった。

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適当。
恋わずらいは二人分だったりして。
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