ベッドの上の落し物(適当)


布団の上で丸くなって寝ているのは、知り合いというには親しく、友と呼ぶには壁がある上忍だった。
「えーっと…!?」
ここは俺の家のはずだ。
表札なんて毎日確認したりしないが、このくたびれたベッドも、墨の染みが取れなくなってしまったちゃぶ台も、ここが間違いなく俺の部屋なのだと教えてくれる。
靴は脱ぎ捨ててあるようだが、装備もなにもかもそのままで、おかげで鉄さび臭いモノが転々とシーツを汚していて、腹が立つより心配になった。
微動だにしない体。
顔を覆う布もそのままで、規則正しい寝息から、この人が生きていることがわかったが、この状況はとても楽観的になれるものじゃない。
開け放たれたままの窓から入り込んできたようだが、わざわざこんなところで眠り込む辺り、相当消耗しているはずだ。
「カカシさん!怪我は!?」
揺さぶるのは危険だ。
だが声をかけ、触れても目を開けない。
それどころか頬を遠慮交じりに軽く叩いても眠りこけている。
これはもう、力尽きたというか…噂にきくチャクラ切れというやつじゃないだろうか。
この人は自分のものじゃない瞳術を使いこなす代償として、チャクラを異常に消費するのだと教え子から聞いたことがある。
機密だと説教しておいたが、知っていてよかったかもしれない。
チャクラ切れだけなら寝かせておけばいいだけだ。
怪我の有無だけは確認しなければと、眠り続ける男から服を剥いだが、ずっしりと重い装備を取り去っても、怪我の一つも見つからなかった。
毒の可能性もある。だがこれはほぼ間違いなくチャクラ切れだろう。
剥くだけ剥いたら寒くなったのかもそもそと布団にもぐりこもうとしているから、そう酷い状態でもないだろう。
指一本すら動かせない状態ならことだが、これなら後で目覚めたときにでも十分だろう。
シーツはこの際諦めた。
他人の肌が直接触れたってのにも抵抗があるが、それ以前に男がほふった敵の返り血らしきものですでに汚れてしまっている。
ワゴンセールでかったそろそろ換えなければいけないと思っていたそれに、そこまで執着はない。
だが、流石にこのままというのもまずいだろう。
俺が同じ立場なら、他人の家でいきなり全裸で目覚めたら、パニックを起こすこと受けあいだ。
「とりあえず、拭いてそれから…着替えか?」
忍服ならサイズはともかくストックがある。パジャマも新品とはいかないまでも、それなりに新しいものが洗ってあるはずだ。
急いでタオルを湯で湿らせて、それから顔を出来るだけ見ないようにさっさと拭き清めてやった。
男はそんなことをされても目覚めない。眠りの深さに痛ましささえ覚えるほどだ。
迷った末にパジャマを着せてやった。忍服は流石に本人の意識がない状態では着させにくいから。
それだけ弄り回しても動かないことにほっとしつつ、とりあえず自分の今晩の寝床は諦めるほかないことには少しだけため息を吐いた。
「しょうがねぇなぁ…」
「うー…?」
アレだけ弄り回しても動かなかったくせに、いきなり腕をつかまれた。
「うわ!え?」
「んあ…?イルカせんせ?んー…いい夢かも…」
「夢じゃないですって!起きてくださいよ!」
あれだけぐっすり眠っていたとは思えないほどその力は強く、とっさに結構な力で押し返したというのにその拘束は緩まないどころかしっかりと抱き込まれてしまった。
服を着せた後でよかったというかなんと言うか…。
「…狭いけどいいよな…どうせこの人はなしてくれなさそうだし」
諦めて目をつぶったら、男がもにょもにょと何事か呟いた。
「こんなじゃなきゃ突っ込んであんあん言わせてるのにな…夢の中までこんなとか、起きたら、絶対…」
…不穏な発言だ。女性関係には噂が切れたことがない人だから、色々あるのかもしれないけれど。
「…起きたら洗濯くらいやってもらいますからね?」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられながらそれだけは言ってやった。

…結局俺より先に目覚めた男が不穏な言動の通りのことを実行に移したのだが、それはまあ置いておいて。
男がただ単に夜這いに来ただけだってことの方で大騒ぎになったことを付け加えておく。


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適当。
ねむけにかてません。
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