膝の上の楽園(適当)

漣のように穏やかに、だがとどまることなく押し寄せる眠気に流されてしまいそうだ。
いっそこのまま永遠に目覚めなくてもいい。
この人の傍らは居心地が良すぎてそんなことさえ思う。
…そんなことが許されるわけがないとわかっていても。
「無防備に寝ちまって…しょうがねぇなぁ」
溜息交じりの呆れ声。
本当はこんな風に迷惑を掛けるつもりじゃなかった。
だがあともう少しだけ…こうしていることを許してもらえないだろうか。
好きで、好きで…ずっと好きで。
頭がおかしくなりそうなほど、この人のことばかり考えていた。
一目見るだけで愛おしさと突き上げるような焦燥感に胸が疼く。
だがその以上を求めたらまずいなんてこと、分かりすぎるほどに分かっていた。
この人は幸せになるべき人だから。
この人の全てを食いつくしてしまいそうなほどの執着など、毒にしかならない。
友人ともつかぬ曖昧な関係。それでも…受け入れてもらえたこと自体が奇跡だと思おうとした。
この人に対してだけは貪欲な己が理性の鎖を引きちぎるのはあっという間だったけれど。
それでも、この人が受け入れてくれると、どこかで俺は分かっていたのかもしれない。
無造作に俺の頭を撫でる人は、膝に懐く俺に溜息と共に穏やかで柔らかい眼差しをくれる。
熟睡することなどとは縁遠い生活を送ってきていたが、この人の側にいると警戒することを忘れてしまいそうだ。
「イルカせんせ…」
視線だけで強請ると照れたように鼻傷を掻いて、笑ってくれた。
「あー…いいから、寝る!」
なんでそんなに恥ずかしそうにしてるんだろうと思う前に、俺のせいでそんな顔をしてくれるってことだけで幸せな気分になって…そのままふわふわと眠りの海に沈みかけるに任せ瞳を閉じた。
「好き」
それが言葉になっていたのかどうか。
覚えているのは全てがどうでもよくなるほどに穏やかで幸せな気持ちになれたことだけだった。
*****
無防備に眠る人は、どこかあどけなくさえ見えて、通り名持ちの高名な上忍にはとても見えない。
こうして膝にしがみ付かれていると何も出来ない。その上その重みは結構なものだ。
…それでも、こんなにも幸せなんだから始末に終えない。
「あんな顔、するんだもんなー…」
反則だ。
傍若無人に人の家に…ついでに体にも心にも上がりこんできたくせに。
人の膝を勝手に枕にして、そのくせ不安そうにじっと俺を見上げていた。
見ていられなくて眠るように促すと、幸せで仕方がありませんって顔で瞳を閉じて…こうして今も夢の中だ。
しかも。
「好きとか…!」
一方的に告げられた言葉に驚くばかりで、何も言えないうちに膝の上の上忍は眠り込んでしまった。
この男は普段はしれっとしてこっちの都合なんか考えもしないように振る舞うくせに、こうしてふとした隙に俺を骨抜きにする言葉をよこすから油断できない。
…とりあえず。
「起きたら、覚えてろよ」
せめて俺の方がアンタにめろめろなんだから、責任取れとでも言ってみようか。
俺の心を読み取ったわけじゃないだろうが、膝の上で嬉しそうに頬を緩めた上忍の髪の毛を撫でてやった。
この人が起きたら…もどかしいこの思いを思いっきりぶつけてやろうと決めて、俺もゆっくりと眠りの海に沈みこむことにしたのだった。
膝の重みを心地良く思いながら。


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適当!
凄くすごく眠いのと、甘えん坊上忍とか美味しいと思ったので。
ではではー!お気が向かれましたら突っ込み等御気軽にどうぞー!

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