もりのなかで(適当)

夜営中の忍がこんなに無防備でいいんだろうか?
任務帰り通りすがりにわずかな気配を感じたのは、すでに日付が変わろうとしていた頃のことだった。
闇に沈む森の中に潜む無視できる程度には薄い気配に、それでも足を運んだのは単なる気まぐれだ。
こんな所で気配をわざとじゃないかというほど微妙に残して消し、しかも居場所を知らせるかのように音がする。
気配を完全に消していないのが故意だとしても、俺が手間取るような相手とは思えなかった。
…なにせ聞こえてくるのは押し殺されてすらいない、男の呼吸音だったから。
木々の間に潜むソレを探り出すと、そこにいたのは木の陰で足を投げ出して、すやすやと寝息をたてる男。
余りにも心地良さげなその姿に思わず見つめてしまったほどだ。
「眠ってる、よね?」
間近に他者の存在があるというのに、眠る男はピクリとも動かない。
時折少しだけ身じろぎするその姿が可愛らしかったから。
…結局俺は朝まで男を観察してしまったのだ。
*****
「…はぁ…」
目覚めるなり俺の顔を見た男が深い深い溜息を突いた。
最初はしぶしぶ目蓋を上げたらしいのだが、俺を視界に入れているというのに驚いてはいないようだった。
「気付いてたの?」
どうやら気持ち良さそうに眠っているように見えたのは、俺の勘違いだったらしい。
俺の存在に気付いていたとは。
…ま、当たり前だけど。俺の方こそ気配だけ消してるだけだったし。
「気付いてるもなにも、あからさまに強いって分かる生き物が、話かけるでもなく側に居座ったら、化け物でも居ついたかと思うじゃないですか…。眠ってる間にどっか行くと思ったらまだいるし、アンタ忍、しかも木の葉のみたいだし…」
ぼそりと零す内容は、なるほど確かにそうかもしれないと思わされるものだった。
普通の忍ならば、敵の襲撃と判断するだろうが、この男は中々面白い。
「じゃ、どうして逃げなかったの?」
俺の気配が近づいてくるのに気付いていたなら、中途半端な隠業をするより全力で逃げた方がいいのに。
「そ、ソレは…!なんか、逃げ切れないというか、気配の薄さとかが変わってるから気になって…!」
言いよどむ男の言葉に、なぜか酷く納得がいった。
俺は気まぐれに男を見つけ、男も気まぐれに俺が近づくのを許した。
というコトは…。
「お互い気になったってことは、これも運命でしょ?」
口布を引き下げて、ぽかんと開いたままの口と重ね合わせると、その甘さにウットリした。
目を白黒させながら抵抗を忘れているこの男と、このままここで最後までしてしまいたいくらいに心地良さと突き上げるような欲望は強かったけれど。
「んむ…っ!ふ、ぅ…っ!」
吐息に快楽と戸惑いとを混ぜ込んでもがく男を、一端解放してやった。
「ってことで、これから宜しくね?」
一方的な宣言に潤んだ瞳をまんまるにしている男とは、きっとこれから長い長い付き合いになるだろう。
多分、俺の短いかもしれない一生分くらいには。
「な、なんだそれー!?」
全身真っ赤に染めて喚く男を抱きかかえると、焦るのが馬鹿らしくなってくる。
これから、少しずつ追いつめて、その全部を俺のモノにする。
そう決めると楽しくてたまらなくなってきた。
「なんで、こんな、意味がわからん!第一なんでこんなどきどき…!?」
一人でブツブツ言っているのも可愛いと思う自分が、相当に舞い上がっているのを自覚しながら、男をもう一度抱きしめた。
俺の一生分の幸せを手に入れた予感ごと。


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適当ー!
もりのなかでであったらおじょうさんお逃げなさいという話のようなそうでないような…?

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