なみだのいいわけ(適当)

床の上に寝転がってごろごろしてたら帰って来た人に足蹴にされた。
「なーにやってんですか?」
一応上忍だとか、俺の方がちょこっとだけ年上だとかそういうのをおいといたとしても。
…この扱いはちょっと酷いんじゃないだろうか。
思いっきり踏まれたって訳じゃなくて、やんわりと痛みを 感じない程度に腹を足でもまれているっていうか。
…なんでかちょっときもちいいのが逆に腹立たしい。
「せんせーったらテクニシャン」
そういったら殴られたけど。
「アホなことばっかり言ってないで、飯とか食ったんですか?」
「んー…?」
どうだったっけ。
今回の任務は薄暗くて簡単で…簡単すぎたから却って疲れた。
あっさり摘み取られていく命を他人事のように眺め、でもきちんと報告書に記録して提出して…。
悪い盗賊をやっつけましたってことに、書類上はなる。きっと。
…本当にそうだったのか疑問に思っても、違うかもしれない証拠を見つけても心の中にしまう、浴しつけられた里の犬になって。
イイ子にしてないと、色々取り上げられちゃうからね。
地位なんてどうでもいい。
でも仲間とか…最愛の恋人は譲れない。
不満は言わない。まだいえるほど里の傷は癒えていない。
この任務の裏を記録するのは俺の頭の中だけにして、口に出す日がくるとしてもそれはきっとずっと後になるだろう。
俺の胸の奥にしまいこんだそれは酷く冷たくて重くて、でもそんな記憶がもう山のように自分の中に詰まっているコトに気付かされる。
新しく増えたって何にも変わらないと思おうとして失敗した。
なにもかも面倒になって、ベストもポーチも適当に脱ぎ捨てて、いつもイルカ先生とご飯食べたりいちゃいちゃしたりイチャイチャしすぎて殴られたりする居間に転がってた。
食事…途中で兵糧丸位は摂ったっけ?
「はぁ…飯、買ってきたからとっとと食う!その間に風呂も入れてきますから」
どさっと今度は弁当らしい生暖かい物を腹の上に乗せられてしまった。
酷い。俺ちょっと傷ついちゃった。
だからわがまま言ってもいいよね?
「お風呂―入るから、洗って?」
また殴られるかなぁと思ったら、今度はワシワシ頭をかき混ぜられた。
「洗って欲しかったら…イイ子にしてなさい」
そういって折り畳まれたちゃぶ台を指差して、すっと風呂場に行ってしまった。
寂しい。
…でも、手が。
…俺よりちょっとだけ小さいのに、俺よりずっと大きく見える手が震えていた。
「イルカせんせ…大丈夫?」
弁当をひょいっと手に提げて、イルカ先生を追いかけて、そしたらじゃばじゃば流し込まれるお湯を見つめながら、苦しくて悲しそうな顔してた。
「後で…髪、洗ってあげます。でもシャンプーハットはしてあげないから、目に染みて痛かったら好きなだけ泣きなさい」
もの凄いいい訳だ。でも。
「…うん。イルカ先生に洗ってもらうの楽しみにしてる」
後ろからぎゅっと抱きしめたら、体重を預けてくれた。
暖かくて、誰よりも大事な人。項に鼻をこすりつけてこの人の匂いで一杯にして、それから。
「まず飯です。それから風呂」
「イイ子はちゃぶ台出してきます!」
ちょっとだけ泣いてるこの人に気付かないふりをするために、風呂場を後にした。
腹を、鍛えたとはいえ筋肉だけで骨には守られていない急所をこの人にさらしても、怖くない。
怖いのはこの人がこうやって静かに傷ついて泣かせてしまうことだ。
「…俺もシャンプーハットなんか使ってあげないから」
今日は二人でシャンプーが染みたせいだっていって泣こうかな。
…それからそれでも意地張って泣かないだろう愛しい人は、無理やりにでも鳴かせてしまおう。
寄り添って交じり合って…やるせない思いも全部二人なら飲み込める。
「これも愛ってやつなのかね…?」
あの人を苦しめる自分に反吐が出そうなのに、苦しんでくれる人を手放せない。むしろ狂喜さえしている。
この薄暗い感情の名前なんて、知りたくもなかったのに。
あの人が風呂場から出てくる前に少しだけ俺も泣いた。
この感情に捕らわれてしまった俺とあの人のために。


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適当ー!
なんとなーくうすっくらい感じでー。
ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ!

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