はらりはらりと服を脱ぎ捨てていく。 白い肌が惜しげなく晒され、鍛え上げられたしなやかな筋肉にこれからもたらされる快感を思って身震いした。 男が、微笑む。そして。 「んなぁ」 赤い赤い口の中に飲み込まれてしまいそうだと思った。 ***** 「うわああああ!?」 「なに?どうしたの?恐い夢でも見たの?」 「み、耳は?尻尾もない…!」 さっきまで見ていたのとそっくり同じ姿形の男が、俺を心配そうにみつめている。 ああ、だが違う。さっきは…逆立つ毛に混じりこむようにふわふわとした和毛に覆われた耳が生えていたし、赤い口の中に覗けた牙だって生えていない。 とっさに尻を探ったが、さっき俺の体にするりと回された尾もついていない。 「なぁに?足りない?」 色悪に微笑む顔はそっくりそのままだが、どうやら夢を見ていたようだ。 「はぁ…びっくりした…」 さりげなく俺の体を撫で回す手を振り払い、尻を探っていた手も引っ込めた。 上忍なだけに、この男は油断もすきもない。それ以上に色事に慣れすぎているせいもあるのだろうが。 最初に押し倒された時も驚く所じゃなかったのに、あっという間に追い上げられて快楽に飲まれて…気がつけばすっかり美味しく頂かれていたくらいだ。 …一応付き合うコトに関しては同意らしきものをした気もするので、今はとやかく言わないことにする。 だが流石に真っ直ぐ顔を見る気にもなれなくて、だからといって寝室は一つだしベッドも一つだ。 乱れたシーツに視線を彷徨わせどう堂誤魔化すか考えていた俺に、くふんと鼻を鳴らす音が響いた。 「俺もびっくりしたねぇ?隣でいきなり気持ち良さそうな声出すし」 「なっ!?」 確かに、とんでもない夢だったのは認める。 普段としてる事は変わりがないが、いつもは卑猥な言葉で俺を追い詰める口はにゃあにゃあという猫のような鳴き声と荒い呼吸しか吐き出さず、その仕草も獣のようだった。 後ろから抱きすくめられて首筋に噛み付かれて、牙が食い込む感触にすら感じて吐精したことなど、今思い出してもゾクリと鳥肌が立つ。 …情けないコトに、快楽の記憶で。 まさか寝言でも…!? もしもそうならいたたまれないにも程がある。 「効きすぎちゃったねぇ?」 聞き捨てならない言葉を聞いた。 「まさか…また何か俺に…!?」 この男はビンゴブックにも載るほどの手練のくせに、非常に悪い癖を持っている。 ふとした隙に、俺にタチの悪いイタズラを仕掛けてくるのだ。…それも、こういう方面で。それこそ、薬から術からなにから様々な手を使ってくるこの男に、俺は気付けたためしがない。 こんな下らないコトに、上忍の全力を出すこともないだろうと詰ったこともあったが、腰が立たなくなった俺を見て、嬉しそうに頬を緩ませた男は、あろうことかさらにそんな折れ相手にコトに及ぶという暴挙に出たので、今はもう何も言えないでいる。 「いい夢、見られたんじゃない?」 ひらひらと見せ付けるように振られている札が何なのかは分からなくても察しはついた。 「なんてことするんだ…!」 「だぁーって。コレ、折角作ったのよ?気持ちよくなってもらおうと思って。どう?」 問われても答えられるわけがない。 「え!?ぅ…し、知らない!」 ふいっと視線を逸らすと、そのまま背中から抱きすくめられた。 「これ、ね?獣の姿で他人の夢にもぐりこむ術だったはずなんだけど…中途半端になっちゃったねぇ?」 獣、そういえばあの姿は確かに獣だった。…ごく一部が。 「アレ、もしかして…!」 「獣になるのは姿だけのはずだったんだけど。姿は中途半端で理性のほうが獣に流されちゃった。ま、かわいく喘いでくれたからいっか」 あっけらかんと話す内容からして…つまり俺はまたこの男に振りまわされたってことで…! 「いい訳あるかー!」 怒鳴りつけてついでに殴っても、男はにやにやと脂下がるばかりで埒が明かない。 「ふふ…今度はイルカに獣になってもらおうかなぁ?そしたら今度は俺が襲っちゃうかもねぇ?」 性懲りもなくろくでもないたくらみを口にする男に溜息をついて、それからその腕を適当に押しのけてすっかり肌蹴てしまっていた布団にもぐりこんだ。 「なぁに?もう寝る?」 くすくす笑う男はご満悦だ。 俺としては色々といってやりたいことだってある。 だが…。 「寝る」 何を言っても無駄だ。 この男がこの下らない企みを止めることはない。 そして、なにより…俺がいくらこの男がタチの悪い遊びを仕掛けてきても抗えないほどにこの男に溺れているのだから。 「ん。お休み。楽しみだね?」 楽しいのはお前だけだろうといってやれたらいいのに。 そうひとりごちて、俺は今度こそ安らかな静かな眠りに落ちて行った。 ********************************************************************************* 適当ー!のニーズを探りたくなったので適当に増やしてみる。 ではでは!ご意見ご感想など御気軽にどうぞ! |