「ねぇ。好き」 温かい布団と体温に包まれてまどろむ俺に、柔らかい声が降り注ぐ。 「ん…」 心地良いその甘さに、まだ浸っていたくて、傍らの温もりを抱き寄せた。 「聞こえてないかなー?」 ちょっと不満げな呟きはすぐにくすくすと笑う声に変わって、するりと髪を、肌を辿る手に誘われて、緩やかに眠りに落ちていく。 「また寝ちゃいそうだねぇ…?」 でも、完全に眠ってしまうのももったいなくて、重くて重くて仕方が無い目蓋をなんとかして見開いた。 今にも閉じようとするこらえ性の無い目蓋と必死に戦っていても、それはしっかりと俺の瞳に焼きついてしまった。 甘い甘い幸福に満たされた蕩けきった瞳に、今にも眠りこけてしまいそうな俺だけを写して、カカシさんが笑っている。 それはもうこれ以上なく幸せそうに。 そんな瞳で見られたら、こっちが溶けてしまいそうだ。 銀色の髪が窓から差し込む朝日をはじいてキラキラしていて、闇夜では薄く光って浮かび上がって見えるような白い肌も惜しげもなく照らしている。 そんな、忍としてだけでなく出来すぎた美しさの男が傍らで馬鹿みたいに夢中になってみているのは自分で。 その事実に急に気恥ずかしくなって、眠気で鈍った手でのろのろとソレを塞いだ。 どっちかというと、塞がせてくれたんだと思う。だっておもしろそうに笑って、俺のすることを見ていたから。 「そんなにみたらだめです」 良く回らない舌で一生懸命になって訴えた。 「ん。なんで?」 簡単に避けられたはずの俺の手は、まだちょっとだけ冷たいカカシさんの頬に触れたままだから、その指にカカシさんの穏やかな吐息が触れてもっとどきどきしてしまう。 「だめ。だってそんなに見たら溶けちゃいます」 自分でも何を言ってるんだろうなぁと思ったけど、それ以外にいうコトが思いつかなくて、気がついたらまるで子どもみたいに文句を言っていた。 だってあんな風に見られたら、もともとメロメロなのにもう何にもできなってしまう。 「あはは! 溶けちゃいそう? でも、俺としてはもっと蕩けてもらいたいんだけどねぇ?」 甘すぎる視線をさえぎるはずの手はとっくにカカシさんに捕まっていて、こんなコトしてる間にもきっと外はどんどん明るくなってしまうのに、その手が俺を、俺の欲望を暴いていくのを拒めない。 だって、こんなに気持ちイイんだから無理に決まってる! 「骨抜きって、きっとこういうコトを言うんだろうなー…」 無自覚に零したその呟きに溜息を返して。 「こっちこそ、もう骨なんて残んないくらいメロメロですよ?」 なんて言ったカカシさんになんだかたまらなくなってしがみ付いて。 甘くて蕩けるような時間に二人してどろどろになるまで溺れた。 …それは、目覚めるにはまだ早過ぎる朝の話。 ********************************************************************************* HHONEY? HONEYv HONEY!にのっけてたらしいのですが(忘れてた。)どうやらめでたく完売、跡地サイトとなるに当たって 再録しろとの仰せを受けましたのでそっと置いてみるのでした! つっこみかんげい! |