「ねーだめ?」 イルカ先生は俺のおねだりに弱いから、できるだけかわいらしく見えるように工夫していったつもりだ。 この人よりでかい図体でしかもそれなりに筋肉がついた体でどうしてかわいいと思ってくれているのかについては我ながら不思議なんだけど、お互いそれでいいと思ってるんだからそれはそれってことで。 一度酔っぱらいすぎた時にかわいいかわいいって撫で繰り回された挙句に押し倒されかけなければ、そんな風に思ってくれてるなんてこと、絶対に気づけなかったと思う。 っていっても、俺をどうこうしたいっていうよりぎゅうぎゅう抱き締めたいだけだったみたいだけど。…そんなイルカ先生をペロッと食べちゃって責任とってるんだから結果おーらいだ。 表情は豊かだけど、意外とポーカーフェイスなのよね。この人。 ま、そこも段々わかってきて、無表情なようでいて耳の後ろが赤かったり、動揺を隠そうとしすぎて逆に動きが硬くなるところとかで気づけるようになったけど。 だからこそのおねだりだ。効果があるってわかってるんだから、使わない手はないでしょ? 「だ、だめかどうかはその!け、検討の余地がないとは言いませんが!」 ちょろい。 …って思ったけどそれをおくびにも出さずに再度追撃を仕掛けておく。 だって筋金入りの頑固者でもあるんだもん。 この人と違って、毛の一筋ほどの乱れもなく、純真な子どものように…まあ自分でやってて気色悪いって思うこともあるけど。目的達成のためにはやむをえない。 「じゃ、いいの?ホントに?良かった!」 にこにこ笑ってついでにそっと抱き着きつつ喜びを体で表現する。具体的にいうと猫みたいに体をこすりつけて、犬みたいに大げさに動いて見せる訳だ。 イルカ先生は俺の見た目も好きだ。胡散臭い覆面つけた男に惚れてくれたんだから、面食いじゃないのかもしれないけど、俺が笑うと一瞬硬直した後、物凄い勢いで赤面する。 そこがまたかわいいんだけど。 …ま、とにかく。隙だらけの今、チャンスを逃すわけにはいかない。 「ええと、その、休暇申請してみます」 きりっとした顔で、実はもう楽しみにしはじめてるのがわかる。この人も結構な仕事人間だもんね。おおっぴらに休暇を楽しむとかは苦手なんだと思う。 でも、俺からのおねだりだから。きっと俺のためになら。 「じゃ、決まり。…でね。実はお休み取っちゃった。二人分」 「ええ!?なんてことしてんですか!しかも他人の申請で…!」 「…だって、イルカせんせと一緒に行きたかったんだもん」 時々わがままなんだけど可愛くて許しちまうんだよなーって、よりによって職員室でぼやいて周りの人間を凍りつかせてたけど、そんな風に派手に惚気けてたおかげで、簡単にお休みはとれましたよーだ。 …多分自覚してないんだろうけどね。 「でででででも!どこに!いつ!」 「行きたいって言ってたでしょ?ここの温泉。出発は来週ね?色々準備したい方でしょ?美味しいお店とか」 「こ、ここは…!いやでも!」 「楽しみにしてますね?」 ぎゅーっと抱きついて、ついでにちゅーもして、後はまあちょっとばかり興奮を隠し切れなかった下半身も押し付けてみたんだけど、動揺の真っ只中にあるイルカせんせは気付かなかったようだ。 「そうとなったら!ええと!色々!備して!その!」 「うん」 「絶対にカカシさんが楽しかったって言える旅行にしますから!」 「…かっこいい」 「へ?」 「ごめんなさい。がまんできなくなりました」 ま、でももういいよねー?約束してくれたら絶対に破らないもん。イルカ先生は。 「ちょっ!なんですか!まだ寝るには早いじか…んぐ」 「イルカ先生が美味しそうなのでいただきまーす」 「え?うえ?わぁ!」 そうして美味しい美味しいイルカせんせが可愛く喘ぐのを楽しんだんだけど。 寝ぼけながらがへへ温泉っていってくれたから、俺の計画はまあまあ上手くいったってことにしておいた。 ******************************************************************************** 適当。 あつい…。怒涛の休日出勤祭りでござる。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |