夏のある日の(適当)


だらりと横になってごろごろころがっている姿は、どっからどうみても高名な上忍様には見えない。
「ちょっと。じゃーまーでーすーよー」
それでなくてもここはもともと小さな部屋だ。その決して広くない廊下に寝そべっていられたら邪魔なことこの上ない。
成人男性の、しかも比較的大柄な男が廊下を塞いでいるから、取り込んだ洗濯物を片付けるにも一苦労だ。
邪魔だってことを示すのに、口だけじゃなく、足で軽く腹をつついてやった。
…あ、一応言っておくと、両手が洗濯物で一杯だったからだぞ?普段は流石に…あ、ま、うん。…踏んでるかも。
最近とんでもなく暑い日が続いていて、クーラーかけてるって言っても限界がある。
ソレは分かる。忍だっていっても、一応、人だ。暑くてだらける気持ちも分かる。
でだ。当然…俺にも限界があるわけで。
「んー」
腹を小突かれたってのに気持ち良さそうな顔して転がって、俺を見上げて笑っている。
そのクスクス笑いが癇に障った。
「何で廊下に寝るんですか!居間いって下さいよもう!」
外に出すなりあっという間に乾いた洗濯物は、このところの横着の結果結構な量になっている。さっさと畳んでしまいたいのに。
「イルカせんせ」
甘えを含んだ声で男が笑う。
思わず視線を吸い取られてしまった。…あんまり綺麗に笑うから。
そして、するりと巻きつく手が俺の足をひょいっと引くまでぼんやりしてたのは、流石にまずかった。
「うわっ!」
廊下にぶちまけられる洗濯物は、洗い立ての太陽の香りがしていて、気持ちイイ。
だが…何だって男の上に洗濯物ごと抱き込まれなきゃいけないんだろう。
「あー…いーいにおい。イルカせんせのにおいー」
ごろごろと喉でも鳴らしそうにご機嫌だが、折角洗った洗濯物の上に汗みずくの俺が乗ってしまったら意味がない。
「なにするんですか!」
大体洗濯物がこんなに溜まってしまったのだって、暑いっていうのにせっせと人を押し倒すこの男のせいなのに。
…どうしてこういう方面ばっかり律儀なんだ!
「汗が美味しそうだなぁって思いながら見てたの。ズボンがさ、張り付いてて…やっぱり卑猥だなぁって思ってたのに…近寄ってくるんだもん。も、我慢できないよ?」
この瞳はよく知っている。こうなると止まらないのも。
舌なめずりする獣の瞳。
どうせならこれが終わってからにしたかったんだが。
「堪え性のない…」
溜息をついて見せたが、俺の状態なんてとっくにばれてるだろう。
…あんな風にあからさまに欲望を乗せた視線を向けられて、平気でいられるわけがない。
どうやら急いで畳んで汗を流してからにしようなんてもくろみは、男のせいで台無しになりそうだ。
「暑いから、でしょ?きっと」
誤魔化しようもなく熱を帯び、硬くなり始めたソコを、男がなぞる。
熱い息がこぼれた口をふさぐように、唇が降りてくる。
「暑いってのになにやってんでしょうね。俺たち」
背に回した手に気を良くしてか、男の瞳が緩やかにたわんだ。ぺろりと舌なめずり一つして、我慢できないという言葉どおりに俺の服をはいでいく。
「暑いから、でしょ?」
溶けちゃいたくなるくらい暑いから。他の事なんか全部放っといて一緒に混ざろ?
そう言って笑う男の誘惑はいつだって酷く魅力的で、抗えた例などないのだ。
「暑いから…そうですね。どうせなら」
何もかも分からなくなるくらい蕩かせて?
囁きが耳に届いたのか、一瞬驚いた顔がおかしかったけれど、あっという間に俺を暴く作業は激しさを増し、俺も笑いながら競って互いの服を脱がせあった。
「ぜーんぶ溶けちゃえ」
そうだ。全部溶けて混ざって境目もわからないくらいに。
そんなのも悪くない。
「夏だから。か」
じゃれるような…くすぐったいような愛撫はすぐに欲望を煽る激しいものに代わって、荒い呼吸が笑い声に混ざって部屋に熱を篭らせていく。
「…ま、俺はいつだってイルカ先生が欲しいけどね?」
そうだ。俺だって。
「…欲しい」
その一言で目の色を変えて覆いかぶさってきた男を抱きしめて、こんなに馬鹿なことをするのは、全部暑さのせいだってことににしておいた。


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あついーねむいー…。
そんなわけでてきとー!
ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー!

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