肉をえぐり、骨を断ち、切り裂けるだけ切り裂いて、それを届ける。 権力者ってのはろくでもないことを考えるものだ。 「先輩。終わりました?」 「んー。こんなもんでいいよね?」 できる限り細かくって注文だけど、一々切り刻むのも面倒で、術を使った。 首だけを残し、風遁でそれこそ元がなんだったか分からない位に粉砕したそれを、後輩が面倒臭そうに袋詰めしている。 「また随分細かく…あ、もしかして先輩手抜きしましたね?」 「だってめんどくさいじゃない」 適当にひき肉用意してつっこんでもいっしょだ。こんなの。 「まあそうですね…。あーあ。重いし臭いし面倒なことやらせますよねぇ…。首から下なんていらないでしょうに」 「見せしめだなんだって騒いでたねぇ。頭悪く」 クズどもに送りつけるだのなんだのと言っていたから、本気で依頼してくるかもしれない。 敵対する組織だかなんだかしらないけど、そっちの壊滅は依頼しないくせに、こんな下っ端を殺させる。 ま、財政的にむりってのもあるだろうけどね。俺たちの単価は高いから。 「ほんっとーに迷惑なんですよ!こんなものもって歩けって言われてもね」 「はいはい。文句言ってる暇あったらさっさと送り届けちゃうよ。めんどうでしょ?」 「はぁ…まあそうですよね…」 途中から面倒になったのか、後輩も術で集めることにしたようだ。 元人間で一杯になった袋の口をぶつぶついいながらもきっちり閉めている。 「間取りは完璧。あと仕込みもしといたから今度はがんばってね?」 「先輩…まさかまた当日サボる気ですか…?」 「だって今日こんなに働いたもんねー?後は後輩の修行に協力するよ」 「先輩…酷いです…」 しょぼくれた後輩は…ま、この任務が終わったら褒めてやればなんとかなるでしょ? こんな任務、本当なら俺たちレベルのヤツには回ってこない。 この肉片になったのの雇い主が、邪魔になった部下の処理がてらに、自分たちの組織をつぶさせようとしてるなんて、あの頭の悪そうな依頼人じゃ予想もしていないだろう。 任務は、任務だ。 依頼はしっかり果たさせてもらおう。 「はいはい。後片付けはやっとくからさっさと行っといで」 「はい…」 あーあ。しょぼくれちゃって。じっとりした目でこっち見てるし。 ちょっとだけ餌を追加してやろうか。 「コレ終わったら、修行、ホントにつけてやるから」 「え!ホントですか!絶対ですよ!」 途端にうきうきした足取りになった後輩は、あっという間に走り出していった。 こっちはこっちで、血だの広い切れなかったモノが飛び散っているのをしっかり焼き消しておいた。 「ま、テンゾウがあっち片付けてる間に、こっちも片付けちゃうんだけどね」 後輩には知らせる必要はないだろう。まだ。 敵の組織を綺麗につぶせたと思っているだろうもう一人の依頼人は、さらに依頼人がいることを知らない。 「大きすぎる闇はいらないってさ、かわいそうだけど諦めてね?」 火の国大名子飼いのごろつき連中。 それがまさか体よく厄介払いされるとまでは思ってもみないだろう。 ややこしい任務は多いけど、ここまでめんどくさいのはめったにない。 そもそも三代目がこの手の任務を嫌うから。 悪党から搾り取って、始末する。 「その依頼人が一番悪党でしょ?」 忍なんて矛盾だらけだ。そんなの今更分かったことじゃない。 …ただ、今とても疲れているだけだ。 「早く帰って、慰めてもらおうっと」 幼馴染は、きっと飯食えとか風呂入れとかしかりつけた後、多分だきしめてくれるはずだ。 そのときのことだけを考えて、俺も走り出した。 このわずらわしいもの全てを片付けるために。 ********************************************************************************* 適当。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |