「へ!?振られた!?」 「でっかい声で言わないでくださいよー…これでもおちこんでんですから」 我ながらしおれ切った声が情けない。 久しぶりに優しい女にめぐり合って、そろそろ年も年だしとなれない告白なんてものをしてみれば…こっぴどくなんてもんじゃないくらい全力で振られた。 「カカシ先生…覆面剥がせばいい男なのに」 「うーるさいですよーだ。…それ、その子にも言われました」 覆面が怪しいとか、色々。でも多分それだけなら耐えられたと思う。 「ねぇ。イルカせんせ。俺って気持ち悪い?」 「はぁ。そんなこといわれたんですか…?」 あーあ。男に慰められてなんでこんなに癒されてるんだろう。 よしよしなんていいながら頭撫でられて、それで泣きそうになってるなんて、ね。 しかもこの人を捕まえたのだって、無意識に縋りたかったせいかもしれない。 辛くてつらくてしょうがなくて、そこでふっとこの人の笑顔を思い出したらもう我慢できなかった。 殆ど無意識にこの人のことを忍犬まで使って全力で探し出していた。 「んー、ま、しょうがないんですよね。きっと」 うちはの目を盗んだって、そう言われた。そうだね。きっと俺はアイツが知るはずだった幸せを全部奪って生きている。 それなのに幸せになんてなろうとしたからバチが当たったんだ。 もうちょっと甘えさせてもらったら、礼にもならないけどおいしいものを食べてもらって酒もたらふく飲んでもらって…それから、今日は一人でいたくないから泊めてくれないかなぁ。 前も酔いつぶれたときは持って帰ってくれた。今日ピッチが早いのは落ち込んでいる生だけじゃなく、確信犯でもある。 「笑うな!」 うそ。怒られちゃった。 んー?甘えすぎた? こうも何もかもが上手く行かないのは、やっぱり俺が悪いのか。 闇雲に悲しい気分に浸っていたら、ぎゅうぎゅうに抱きしめられてしまった。 「しょうがなくなんてないし、辛いなら泣くなり喚くなりすればいいんですよ!」 あー…あったかいなぁ。 どうしよう。このぬくもりを手放したくなくなってしまった。 …こうなるのが恐かったのに。だから優しそうな…この人に少し似ていたあの女に声を掛けたのに。 この人を、幸せにしたかったのに。俺なんかが側にいたらそんなの無理だとわかってるのに。 「ねぇ。泣いても、いい?」 「どうぞ。好きなだけ」 慈愛ってのはこういうのをいうのかも。 誕生日にズルイ告白をして玉砕して、そうしてこうして一番欲しかったけど一番手に入れたらいけないはずのものを与えられている。 それなのに、ごまかしようがないくらい幸せで、なんて最低な。 「イルカせんせ」 でも、言わないから。絶対にずっと言わないから。今だけでいいから。 そう思って縋りついた人は、小さく笑って。 「お誕生日おめでとうございます」 痛みさえ覚えるほどの優しさを込めて、そう言ってくれた。 ******************************************************************************** 適当。 上忍は、中忍が、「早くうちの子にしてしまわないと」と決意していることを知らない。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |