「何でダメなんですか?」 なんでも何もダメに決まってる。っていうかなんなのこの人。初対面なのに。 頭の中で考えていたつもりの言葉は、しっかり口に出ていたらしい。 「なんなのと言われましても。まあ好きになっちゃったんで」 鼻傷を掻きながらの照れ笑いは可愛いと思えなくも無い…か? だが同性で、図体もでかい上に、脈略が無さ過ぎる。 楽しめるならどっちともなんていえるほど捌けてもいない。 というか、どっちかというと面倒だ。 女は温かいが存在自体が厄介ごとの塊だから、そんなものを相手にする位なら愛読書で十分だし、どうしても耐えられないときは商売女を買えばいい。 どうしても耐えられないなんて状態になったのは、せいぜい十代の始めまでで、任務で忙しすぎてすぐにそんなものはどうでもよくなった。 今更わざわざ…それも男相手にどうこうしようなんて必要はない。 ま、上忍なんだからそれが当たり前のはずなんだけど、権力かざしてふざけた真似する馬鹿がいないわけじゃないし、それを見越して利用しようとする奴らも減らないんだよねぇ? でもこの男は違う気がする。 …犬みたいにまっすぐな瞳は嫌いだ。 信頼するかわいい忍犬たちなら平気だ。 それは信頼の証であり、決して裏切らない仲間であるってことだから。 …人間はダメだ。こういう目をしているヤツはさっさと死ぬ。 俺を、おいて。 「男はいーや。他あたって?」 笑顔で犬を追い払うみたいに手を振ったのに、男はにこにこと笑うばかりでどける気配もない。 苛立ちと…それを凌駕したのは恐怖だった。 こういうタイプは苦手なのよ。諦めないっていうか…俺を変えてしまいそうだから。 「俺は他じゃダメなんです。別にあなたを強引にどうこうするつもりも、恥ずかしながらそれができるだけの能力もありません。好きなだけです。…ダメ、ですか…?」 途中まで情熱だなんだと騒ぐ自称ライバルと似た様な熱っぽい視線と言葉で語りかけてきたくせに、最後はしょぼくれた顔で俺を見るなんて、ずるいでしょ? なんなのよ。こんな顔されたら…みすてられないじゃないの。 「…勝手にすれば?」 ほら、やっぱり。 こんなに邪険に扱われてるのに、なんでそんなに嬉しそうに笑ってるのよ。 「はい!…あ、俺はうみのイルカと申します。よろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げた駄犬みたいな態度の頭の悪い男相手に、どうしてこうも心が揺れるのか。 「…俺は、はたけカカシ。じゃ」 名前を教えてやったら、なぜか大切そうに口の中で繰り返し呼んでいたから、もしかしたら俺の名前知らなかったのかね? 情報収集能力に問題あり。…やっぱりすぐ死にそう。 俺が見ていてやらなきゃいけないかもね? だからきっと、そのせいだ。放っておけないからきっと、だから。 こんなにも胸が騒ぐだけ。 「厄介なのに好かれちゃった」 呟きはきっと誰にも届かなかったけど、振り返った先で男は今にも飛び跳ねそうなくらい嬉しそうに笑っていた。 ********************************************************************************* 適当。 こないだ変態さんを間違えてアップしてました('A`) ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |