名前を呼んで(適当)

「イルカ」
この人は名前を呼ぶのが好きだ。
何の用だかしらないが、別に声なんかかけなくてもいいようなときでも俺を呼ぶから、最初の頃は鬱陶しいなぁと思ったことすらあったほどだ。
あんまり嬉しそうに笑って俺を見ているから、上忍が遊んでるか、からかってるのかと。
それがこの人なりに気を惹こうとした結果だと知ってから、世界の色すらかわったのだが。
「はいなんですか」
視線を合わせると長々とのさばっていた男がするりとまとわりつくように寄ってきた。
「イルカ。イルカせんせ。ねぇ」
「だーかーら。なんですか?」
とりあえず撫でてやる。ついでにかわいいからキスもする。
唇になんかしちゃうと調子にのるからそこまではやらない。
まだ飯も食ってないのに縺れ込むのはごめんだ。
一度始まると大抵長いからな。
かわいくて好きすぎて止まらないのなんていうから、こっちだってそんなかわいいこと言われたら止まれないってもんだ。
女のように喘がされていることについては深く考えないことにする。気持ち悪いよりいい方がいいんだし。
口布はもう下ろされている。にんまりと笑った顔は、まさに何かたくらんでますといわんばかりだ。
何するつもりなんだろうなぁ。身構えてもどうせついついわがままを聞いてしまうからなにもできないんだけど。
相変わらず綺麗な顔をしている。体も。
ひょろっとしてるから線が細い人なのかと思っていたのに、こうして懐いてこられると猛獣というか、大型の肉食獣のようなイキモノなのだと分かってしまう。
最初のときだってそうだ。
なんだかくっついてくる人だなぁと思いつつ、俺は昔からこうしてくっついてくる連中が多かったからついつい放っておいたのがまずかったんだろう。
言い訳をさせてもらえば、俺も同僚も大抵あの世代だ。何かあればつるんで酒飲んでくっついて泣いてなんてのは日常茶飯事だったんだよ。
同年代のこの人もそういう人なのかなと思ってしまったのは、仕方がないことだと思う。
甘える相手がいないから、身を寄せ合って耐えてきた。
それが勘違いだと身をもって、本当にそれこそその身の痛みでもって思い知る嵌めになったのはいつだったか。
「イルカせんせ」
あの日もしきりに名前を呼んでくる男を撫でてやったりしたような気がする。酔っ払っていたから定かじゃないが。
それが自分の家だったことと、万年床が側にあったってことと、多分上忍であるこの男が理性をすっ飛ばすほど疲れていたってのも全てがまずかった。
ケダモノははけ口を求めていて、それが目の前で暢気に酒飲みながらもろ手を挙げて抱きしめてきたんだから…そりゃあ食うだろう。俺でも。
それからずっと好きだったとか、告白の言葉に混じってしきりに名を呼ばれて、この人が俺を欲しがって鳴いていたんだと思ったら…もうまっさかさまに落ちていた。
「イルカせんせ?」
やばいなぁ。ムラムラする。自分ばっかりしたいと思うなよ?
「飯作ってきます。カカシさんは風呂沸かしてきなさい」
「はぁい」
不思議そうな顔をしつつ、いいこのお返事をしてくれる。うん。上々だ。
飯食って風呂はいって、それからたっぷりいちゃつこう。
ほくそ笑んだ俺は、男がクリスマスの予定を聞きたがっていたことに欠片も気がつかなかったんだが、やった後ちゃんとあなたのために明けておきましたよって言ったらもう一度ベッドに逆戻りすることになったし、よろこんでたから、まあいいか。

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適当。
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