迷い犬(適当)

拾っちゃたけど、こいつどうしよう。
薄汚れた灰色の頭は洗ったらきれいな銀色だったとか、指先の汚れも丁寧に洗ったら白くて細くてきれいだったと かは置いておくとして、ひっぺがしたノースリーブの忍服に白いプロテクターに割れた面からすると…冷静になってみたら、コイツ拾ったらダメだったんじゃな いだろうか。
「うーん?」
乱暴に担ぎ上げてもガシガシ洗ってもベッドにそのまま放り込んでも目を覚ます気配がない。
怪我はないし、死んでるわけじゃないのは脈を確かめたから大丈夫だけど、顔色は悪い…っていうか、白い。
元々白っぽいイキモノみたいだけどな。髪も白っぽいし。
「捨ててくるかなぁ…?それともじいちゃん呼ぶとか…?」
流石にこの状態で捨ててたら危ない気がする。
きれいな顔してるし、人買いとかに連れて行かれたら…こんな状態じゃいくら強くても碌な抵抗も出来ずに飼い殺しにされるかもしれない。 じいちゃん呼んでもいいけど…こいつ自体が機密ってヤツだと思うんだよなぁ?
もしも俺がじいちゃんを呼んだせいで、コイツが大変なことになったり、俺が大変なことになったりしたらって考えると、なかなか思い切れなかった。
「やっぱり起きる前にどっか運んで…」
「捨てるのは、勘弁して」
かすれてはいるが、きちんと聞き取れる言葉だ。
幻術とかかかってて、錯乱でもされたらどうしようかと思い始めてたから、ちょっとほっとした。
「あ!おきた!だいじょぶか?なんか食う?」
「食うのは、いいから…ちょっと寝かせて。チャクラ切れ…」
それだけ言うと、男はもう一度ガクリと頭を枕に落とし、瞳を閉じてしまった。
「おーい…?ダメか」
チャクラ切れか。それなら納得できる。ほっといても治るし、今日の寝床は譲ってやろう。
起きたらじいちゃんに連絡するかどうか決めればいいよな?
「しょうがねぇなぁ」
こんなでかいヤツが着る服なんてうちにはないし、洗濯物が乾くまではふんどし一丁だけど、原因がわかったんだから今更叩き起こすわけにもいかない。
ベッドだって一個しかないんだけど、寝相の悪さには自信がある。
寝込んでるヤツを蹴り飛ばすわけにも行かないもんな…。座布団でも敷いて寝よう。
素顔見たなーとか言われて殺されるかもとか、ちょっと思ったりもしたけど、多分この分ならそんなこともなさそうだし。
「寝よう…。明日になったら飯食えるかなこいつ…」
任務で疲れてるってのに、自分より大きな生き物を洗うなんてなれないことをして、もうくたくただ。
適当に座布団を敷いて毛布かぶって転がったら、夢も見ないくらいあっという間に眠りに落ちていた。
*****
朝起きたらしっかりきっちり朝飯が用意してあって、ついでにベッドに寝ていた。
「一宿一飯の礼ってやつでしょ?」
しかもそうのたまう拾い物が隣に寝転がっているってのはどういうことだ。
「えーっと。もう元気になったんだな。私物は干してあるから!」
あえて暗部装束とかは言わない。面が割れてるとかも言わない。そこは大人のお約束だ。…まだ13だけど。
「ん。そうね。ってことで責任とってね?うみのイルカ」
「何で名前!?」
「えー?だってほら、俺って暗部じゃない?」
「そうだけど!だからって!?」
何で名前知ってんだ!?
「ま、ちょっとずつでいいから俺になれてね?」
「うっ!え!?なんで!?」
「ベッドは…ま、しばらく狭くていいでしょ?これはこれで」
そういって男は俺を抱きこんで眠ってしまった。
それから…恐ろしいことに何がなんだかわからないが、ぎゅうぎゅう抱きしめられてもがいているうちに力尽きて、うっかり俺まで眠気に負けた。
…それが大失敗だったのかもしれない。
結論から言うと、いついた。
「責任とって面倒見てよ」って言う割りには、ご飯作ってくれるのはこいつなんだけどな…。
とにかく、拾っていいものと拾っちゃだめなものが世の中にあることを、俺は学んだ。
「ま、諦めなさいよ。全部今更でしょ?」
そういう拾い物に抱きしめられながら、そのぬくもりにならされて、きっともう一人では生きていけない。
取り返しが付かないって、きっとこういうことを言うんだろう。
してやったりと微笑んで、やりたい放題の上にヤリタイとか不穏なことをつぶやく拾い犬に腹が立つから。
とりあえず「もうひろっちゃったんだからそろそろ諦めてやるよ!」とだけ言ってやったのだった。


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子カカイル祭り継続中。
喧嘩するほど仲がいい。
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