「ママ…」 どこか甘えたような声にその声に驚いて、半分眠っていた眼は完全覚めた。 焦るに決まってる。 …その声は明らかに自分の口から飛び出たのだから。 大慌てで自分の口を押さえたものの、飛び出した言葉は戻らない。 落ち着け俺…!今は真夜中。それもさっきまで散々喘がせた恋人は、もうとっくに夢の中のはずだ。 半ば気絶するようにして眠りに落ちていった恋人に愛おしさがこみ上げて、その体に残る情事の痕を清めてから大切に抱きしめて、幸せな気分で眠りに落ちていったはずなのに。 「なんで…なにいっちゃってんの俺…」 そっと視線を滑らせると、隣で寝ている大切な大切な恋人であるイルカ先生は、その素肌をしどけなく晒したまま、ぐっすりと眠っている。 その様子にホッとして、それから…たとえようもない幸福感に誘われるようにその肌に触れて…。 「うーん…」 「っ!」 いきなりもぞもぞと体を動かされて、思わず飛び上がって驚いてしまった。 落ち着け!ただの寝返りだ!何年上忍やってるの俺! 「寝て、るよね…?」 呼吸も正常、怪しげな様子は見られない。 夢現にでも俺の台詞を覚えてるって事はないだろう。…ないと思いたい。最悪の場合は借り物の左目を使ってでも記憶を抹消しなければ。 …絶対に、この人に嫌われたくない。 なんで…唐突に、今になって。 俺が生まれて数年で、あっというまにその生を終えた母を呼ばねばならないのか。 確かに抱きしめているのに包まれるような温もりを感じたのは覚えている。 だからって…ママはないだろうママは。そもそも天に召される直前には、すでに母さんと呼んでいたのに。 「なんなの俺…どうしちゃったのよ…」 …そうして、動揺のあまり寝付けなかった俺は半裸のまましばし呆然と過ごしてしまったのだった。 イルカ先生の顔見てたらむらむらきてそれを抑えるのに一生懸命になったせいで、なんとか落ち着くことができたんだけどね…。 ***** 「ママ」 驚いたなんてもんじゃない。 そのか細い声は隣に眠る頼もしいというか…しっかりしてるくせに時々酷く抜けているかわいい恋人の口から飛び出したからだ。 慌てている気配。それからすぐにそれは俺の様子を探るものに変わった。 必死で、上忍だった両親さえ騙し通した狸寝入りで誤魔化したものの、動揺は中々おさまってくれない。 なんて…なんてかわいいんだ!幸せそうにママなんて呼んじゃって! 悶えたいのを押さえ込んで、寝返りを打つにとどめたが、本当なら喚きだしたい位だ。 しかもこの人、言った瞬間俺に縋った。本人が驚いてるみたいだから気付いてないだろうけど。 ぎゅうっと抱きしめられて、それから…すごくすごーく幸せそうに。 ママ、なんて。なんだよそれ!胸がきゅんきゅんするだろ! …俺にそんな趣味があったなんて…! もしかしてこれは一種の、チャイルドプレイとかそういったものに入るんだろうか。 むしろその点への動揺でどうにかなりそうなほど焦ったが、その後すぐに、それは忘れることができた。 あ、見てる。…あんだけしたのにまだヤりたりないのかよ! 視線の意味が分からないほど鈍くはない。…それに、必死で我慢してるのも。 明日…多分もう今日だけど、授業は講義だけだ。 体が多少辛くても、多分なんとかできるだろう。 「カカシさん…」 自分の口から零れた声の甘さに我ながらちょっと退いたけど、カカシさんはすぐに罠に引っかかってくれた。 「イルカせんせ…!ごめんなさい!も、我慢できません…!」 他愛のない上忍め!かわいいと思って…もう!大好きだ! すがり付いて降るようにキスを落として、きれいにしてくれたらしい下肢をせわしなくまさぐる手にさりげなく腰を押し付けて…その度に興奮を深める愛しい人に縋りついた。 「っ…!カカシさん…!」 あーあ。きっと今夜はもう眠れない。 それでも。俺は。 「イルカせんせ…愛してる…!大好き…!」 全身で俺に愛を囁く恋人に求められて、こんなにも幸せだ。 …さっきの台詞は心の奥底に大事に仕舞っておこう。変にプライドが高くて、俺に嫌われるのを極端に恐れるかっこつけのこの人には、きっと酷だ。 もう一度言って?なんて…絶対にいえない。 …たとえそれがとてつもなく俺の胸をときめかせたとしても。 「好き、です。カカシさん…!」 囁きは永遠の秘密を誤魔化すために…まあ勿論本心でもあるんだけど。 そしてしっかりそれに騙されてくれる所も大好きだ。 「俺も…!」 愛しい恋人の熱に溺れて、今夜の秘密は大事に墓まで持っていこうと思った。 当然、俺のちょっと曲がった趣味と一緒に。 ********************************************************************************* 適当。 アホップル。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |