はないちもんめ(適当)



「お布団被ってちょっときーておーくれ!」
ああ、元気に遊んでるのがいるなぁと流せなかったのは、ここがアカデミーから随分と離れた実家だったからだ。
子どもがこんな所に?しかもあの遊びは一人じゃできない物のはずだ。
整理中の本をのけるのもそこそこに慌てて家を飛び出した。
「おーい?こんなところでなにやってんだ!クマも蛇もでるんだぞー!」
クマはでる。しかも結構でっかいのがうろついてる。ただあっちも忍がどんな生き物かしってるから闇雲に襲ってきたりはしない。それに蛇はでるっちゃでるんだが、細くて小さい毒のないやつばっかりだ。
それでも、子どもがこの辺にうろついてるってのは危険なのは確かだったから、脅す意味もこめて声を掛けたんだが。
「くま?へー」
振り返ったその顔がどうも…どうも知り合いに似てる気がする。
逆立つ銀髪、ちょっと眠そうな目元。
外見からすると8つかそこらだろうか?ほそっこくて小さい。
「か、かくしご…?」
写輪眼の上忍の秘密を俺は今知ってしまったんだろうか。
ごくりと唾を飲む音が頭蓋に響く。
だがこれは子ども。どっからどう見ても子ども。放っておける訳がない。
庇護を必要とする生き物な上に、晒しておいたら余計な面倒ごとを呼びそうな存在を、ここにおいていくのは躊躇われた。
少しばかり悩んだものの、子どもが小首を傾げるのをみたらもう、後は本能の赴くままに抱き上げて自宅に連れ込んでいた。
「いいか!あんな所で一人で遊んでちゃだめだろう!」
「イルカ先生?どうしちゃったの?」
「危ないっていっただろ?親御さんがしないするだろうが!」
「えーっと?」
「第一あの遊びは一人でやるもんじゃ…え?イルカ先生?」
あれ?今俺名前呼ばれた?っつーか名乗ってない。それは間違いない。
ってことは、知り合い?
「そ。ああ、変化してるのはね、ちょーっと任務で。姿止め使ったからもうしばらくこのままなんです」
イルカ先生のお宅ってここにもあったんですねーとか、こののんびりした空気の読めない話題の選択具合からして、これは確実に本人。
はたけカカシだ。
「えええええええ!?」
「あの歌は聞いた事があるんですけど、やったことなかったんですよねぇ。ただほら、お布団被ってって言う響きがちょっとこう…心に残ってたので、つい」
なんだそりゃと後半には思う。前半には胸が痛むばかりだ。
あー…まあ、その、いいよな?この人さえ良ければ保護しちゃっても。
だって放っておけないんだよ!
こんなほそっこい姿からもどれないのに、ふらふらこんな所うろついちゃうような生き物を。
「その遊びは二人でやってもおもしろくないので、今度アカデミーに遊びにいらしてください。それ以外のをやりましょう!」
「んー?…そうね。楽しそう」
「まずはずいずいずっころばしから!こうやって手を丸めて、指をこうして…」
「へー?卑猥」
「アンタの頭の中そればっかりか…」
「もっと色々教えて?」
「もちろんですとも!」
気合を入れて二人でも出来る遊びを考えては教える俺を、子ども風はたけカカシはニコニコ笑いながら見つめていた。
*****
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。おいしいね。イルカ先生料理できたんだ」
「失礼な!これでも中忍ですよ?まあ得意じゃないですが普通に作れます!」
…まあ、今日も大分この人に手伝わせちゃったんだけど、それはついナルトと同じノリで皮剥いてくれとか洗ってくれとか頼んじゃっただけで…気をつけよう…。子どもの形をしていても、この生き物は上忍。上忍なんだから上官で、うっかりワシワシなでたり呼びつけたりしちゃったけど子どもじゃない。
一人激しく反省している間にも、子どもなのに子どもじゃない上忍が、晩酌したかっただの、焼き魚が美味かっただの言っている。
そういや、根本的なことに気がついた。
「あのー。なんで俺の家の前にいたんですか?」
僻地というか、里からは随分離れた家だ。書庫用に使っちゃいるが済むには不便で、結界で隠されているから普段誰かが立ち寄るってことも殆どない。
どうしてわざわざこんなとこで?
「イルカ先生を探してたんです」
「えええ!?」
待て待て待て。この人に接触したのは日がまだ真上になる前…そして今は飯食い終わって、風呂だってもう沸かしてあるんだから…それだけの長時間、何で言わないんだよ!
「あ、任務じゃないから」
「それを早く言ってください…!」
冷や汗を拭いながら視線を合わせると、妙に近くに顔があって少しだけ驚いた。
「イルカ先生がね。子どもならかまってくれるかなぁって」
「へ?」
ああ構ったさ。だって外見は子どもなんだぞ?ほそっこくてほっとけない感じの。
そりゃ放置なんてできないに決まってる。
「だから目的達成。ね。でっかくなっても嫌わないでしょ?」
「え、ああ、はい。その、元から嫌いって訳じゃ」
「これだけごはん食べたりしたんだし、前みたいにしないでね?」
途端、寂しがり屋の子どもの姿が思い浮かんだ。
そうだ。上忍だからって当たらず触らず距離を取りすぎたのかもしれない。
…あんな遊びも知らない、遊んだことなんてあまりない人なのに。
「もちろんですとも!」
「そ?じゃ…これからも宜しくね」
ぼふんと上がった煙が晴れると、普段覆面だなんだで嫌って程隠された顔がものすごい器量よしだって事が分かったり、それがいきなり近くに寄ってきてちゅ、ちゅーなんて!ちょっと待てなにすんだ上忍!
「よ、よろしくされねぇ!なにすんだ!」
「約束破るの…?」
泣きそうな顔にぎゅうっと胸が締め付けられたように痛んだ。
ああくそ!罠だって薄々分かってんのに!
「破りません!破りませんがあんたもっと色々考えてから行動しなさい!」
そうガツンと言ってやったってのに、男はにこーっと、あの子どもみたいな笑い方をしたかと思うと、俺の手を握って言った。
「そりゃ無理ってもんでしょ?だって恋は盲目っていうじゃない?」
最初の口付けは唇に、二度目は右手に。
この男は凄まじく手が早い。
「見てろよ!絶対絶対!はないちもんめ三昧にしてやるからな!」
甚だ男らしくない宣言に、一瞬きょとんとした顔をして、それがまた可愛くて、でも次の瞬間ニヤッと笑った顔は不敵でふてぶてしくて。
もう一度なんとかして起こってることを伝えようとした口は、再び男の唇によってふさがれてしまうことになったのだった。
「なんでもいいよ。だってこれからずっと一緒にいてもらうから」


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適当。
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