まどろみ(適当)


 タオルケットさえしけっぽくて寝苦しい最中に、執拗にしがみついてくるイキモノがいるってのは拷問だと思う。
「あちぃ…」
 正当な感覚で、文句のつもりでもあったが、原因となっているイキモノの方は感情を伺わせない一瞥を寄越しただけで、離れてくれるつもりはなさそうだ。
 なんだってこうなったのか良くわからない。よくわからないがしかし相手は上忍で、しかも元暗部…というか、うちに転がり込んできたときの服装からすると、どうやら現役なんじゃないだろうか。
 暗殺戦術特殊部隊…機密の塊で、ついでに過酷な任務をこなしつづけるだけあって、その強さと裏腹に変わった人が多いってのは定説だ。
 思ったより赤い瞳に違和感は感じないが、人にへばりついて一言も発さない姿には違和感がありまくりだ。
 どうしたもんだろうか。正常な状態とはいいがたいような気はするんだが、実害はない。怪我でもしてれば医療班も呼べるんだが、この人どっからどうみても無傷なんだよな。
 平和な夜に暗部装束の男が転がり込んできただけでもありえない話だというのに、それの様子がおかしいとなればやはり火影様に報告すべきだろう。
 でもなぁ。なんとなくそれをし辛い。
 へばりついてくるだけで何をしてくるわけじゃないし、なぜか妙に必死な様子なのが気にかかって、無理に引っぺがして何かあったらなんて考えてしまった。
「あったかい、ね」
 しゃべったかと思えばそれか。あったかいじゃねぇよ。暑いんだよ。
 だが、そのやたらと幸せそうな顔に、結局俺の感情が白旗を揚げた。
 …しょうがねぇ。一晩だけ我慢しよう。
 俺よりずっと強いはずの男が妙にたよりっけない表情を浮かべるからにはきっとなにかしら原因があるはずだ。
 とりあえず、こっちの被害は暑いってところだけで、この人は今限りなく無害だ。
 寝苦しいのはいただけないが、そんな顔されたら無碍にできない。
「…寝ましょうか」
「ん」
 返事なのかそれともうわごとなのか、瞳を閉じた男はよりいっそう強い力で背中に回した腕で身動きできないほど拘束してきた。
 今日の眠りはおそらく浅いものになるだろう。
「…明日になったら」
 とりあえず火影様に連絡を取ってみよう。
 そうすればきっとなんとかしてくれるはずだ。何とかって、具体的に何をして欲しいのかなんて眠気と寝苦しさの狭間にいるぼんやりした意識じゃわからなかったが。
 暑さは歓迎できるものじゃない。でも鼓動が。どこか懐かしい記憶を思い出させるのか何とか少しずつ眠りに落ちていけそうだ。
 半分沈んだ意識の片隅で、囁くように甘い声で俺の名を呼ばれたのを聞いた気がした。

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適当。間に挟んでみた。
術にかかったのでほだされてくれないかと強攻策に出た上忍は、弱った顔して翌朝礼をいっちゃったりなんかしちゃった結果、うっかりその策にはまりそうだったりして。

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