「あっちぃ…」 吹き出した汗がダラタラと肌を伝い、部屋全体が湿気で歪んでる様にさえ感じる。 この湿度の出所は、昨日の夕立のせいなのか、それとも…己からとめどなく流れていく汗のせいなのか。 むわりと蒸した空気が部屋を満たし、肺の中まで一杯にするそれは、部屋の中で窒息するほどに濃密で。 これだけ暑いと自分から湯気でも出ていそうだ。 当然…まともな服など着る気になれなくて、さっさとぬぎすてた忍服は部屋の隅っこでへたばっている。 水を浴びてみても一時冷やされた体には却ってこの熱が染み入るのが早い気さえした。 引っ掛けただけの浴衣の前を合わせる気にさえなれない。 これが夏の暑さか。久しぶり過ぎて忘れていた。 家に帰り着けばすぐにクーラーを入れてしまうくせに、それと一連の作業になっているかのように俺を抱き込み離さない。 そんな男と何度夏を過ごしただろう。 暑いのなら離れていればいいはずだ。 わざわざへばり付いて、それから俺の肌を暴いてもっと暑くなる行為にふけるなど、「暑がりなんです」などといいながら矛盾している。 …だが、男は俺から離れようとすることはない。いっそまるで俺の皮膚の一部であるかのように。 あの男の前でこんな姿を晒せば、どんな目に合うかは思い知らされている。 一人で過ごしていた頃は、クーラーなんて意地でも頼らないと思っていたのに。 この暑さを味わうことが懐かしく、少し苦しい。 「はやく、帰ってこい」 こんな暑さを吹き飛ばす位の熱で俺を翻弄する手を待ち侘びた。 …帰還が叶うと慌ただしい乱れた文字で記された式が届いたのは昨日のことだ。 待つのは慣れている。…ただ少し長いソレに焦れてはいた。 もうしばらくこうしていてやろうか。 泣き言を言い連ねながら「待っていて」と告げて任務に発った男の為に。 ただでさえ暑いというのに、そんなことを思う。 馬鹿らしい位溺れている。あの強引で驚く程純粋な男に。 それとも、これも。 「…全部暑さのせいだ」 呟きさえ熱に溶けて、そして…。 きっと、もうすぐ。 「ただいま」 扉を蹴破る様に開けた男に微笑んでやった。 飛び切り熱い夜の為に。 ********************************************************************************* 適当ー! あついので。 ではではー!なにかしら突っ込みやらご感想などございましたら、御気軽にどうぞ!!! |