縁側での日向ぼっこって気持ちイイよねぇ。 恋人の膝枕までついてきてるんだもん。最高。 ま、その恋人はかわいい顔して不満そうにため息なんかついちゃってるんだけどね? 「また行くんですか?」 「んー。だってやっと時間ができたっていうか、ね?」 だって戦争終わったら代替わりだなんだって言われるし、大戦のおかげで情勢がびっくりするほどかわったから、任務の種類も様変わりして、ついでに無駄に人が死ななくなったから文化の発展や雇用の創出ーとか、もうとにかく仕事に追われ続けて、やっと次に押し付けることができたんだから、ちょっとくらい満喫してもいいでしょ? 「まあそうですね。…お疲れ様でした」 側で支えてきてくれた人が一番お疲れ様って言われる立場だと思うんだけど、それを言うと遠慮したり照れちゃって黙ってなさいとか怒られちゃうから黙っておく。ま、怒った顔もかわいんだけどね?でもせっかくのこんな穏やかな時間がもったいないじゃない。 子どもにするみたいに褒めてくれて、ゆっくりと俺の頭を撫でる手はどこまでも優しい。 その手に頬ずりしてついでにキスもして、にんまりと頬を緩ませる。ああもう決心がにぶっちゃうじゃない。 「ん。きもちい。もっとして?」 「はは!アンタこんな年になっても甘えたですねぇ?」 「だーって、イルカ先生だからだもん」 ぶーっと頬を膨らませたら、おもしろそうにそこをつつかれた。あーもう!余裕たっぷりなんだから!この年になるまで俺の方が年上だってのに、一度だって勝てた事がない気がする。意地張って逃げても、追いかけてぶん殴ってでも説教して、それから抱き締めてくれる…大好きな人。 「はいはい。まあいいんですけど、ほどほどにしてくださいよ。もう若くない…っていっても、アンタは若いですよねぇ…俺なんかめっきり老け込んだのに!」 「イルカせんせに捨てられたくないんだもん!若い女なんかに負けません!」 老けてもかわいいこの人は、この年になってもまだモテる。俺なんか結婚しなかったっていうか、イルカせんせがいたからなんだけど、勝手に孤高の忍びとか大戦の戦功をもてはやされすぎて、勝手に周りが距離を置いてるから、その手に誘いは殆どなくなった。色仕掛けで先代火影をなんて手を使ってくるヤツは、俺の鉄壁の防御を前にその手の類の策を使うのは諦めちゃったみたいだしね。 浮気したって誤解でもされたらイルカせんせに捨てられちゃうじゃない!もう! 「…気にしてるのはそこだけですか…」 「イルカせんせはずーっとかわいいもんね…。俺なんか先代様は化け物っぽいとかさー…」 必死で若さを保つ努力をしたのは確かだ。俺の先代が先代だったからか、火影になると老けなくなるみたいなわけの分からない伝説も作っちゃったけどそんなわけないし。 元々丈夫だったし、任務漬け生活から解放されれば、そりゃストレスもなくなるし、恋人がずーっと側にいてくれたらこうなりますって。 …その代わりに俺と里に関することで気を遣いまくってたみたいだけど。イルカ先生は。 「あー…若い子は歯に衣着せるってことを知らないから。あとは里の間の壁みたいなものがとっぱらわれちゃったせいで、さらに遠慮しなくなりましたよね」 「そうですねー」 敵がいたから一つになれたってのは確かに事実だと思うよ。オビト。お前は色々間違ってたし、相変わらず馬鹿だなと思ったけど、今でも親友だ。 もう一人鬱陶しい自称ライバルとの旅行が終わったら、慰霊碑に会い行くよ。またのろけばっかり聞かせちゃうと思うけどね。 「しっかしアンタホント旅行好きですよね」 「うん。だってイルカせんせにお土産あげると喜ぶじゃない?一緒にいけたらいいんだけど、どうしてアンタそんなに仕事好きなの?」 「引退は考えてますよ。そりゃ。でも稼げるうちはしっかり稼いでおかないと!」 もうしっかりものなんだから!未だにきっちり割り勘しようとするし。 いいじゃない。ちょっとくらいって思うけど、そんなイルカ先生お土産なら受け取ってくれる。だから俺はこうしてしょっちゅううろうろする訳だ。勿論里のための情報収集も兼ねてるけど。 「温泉、またいきたいなー?」 「…うッ!ま、まあそうですね。そろそろ温泉にいくにはいい季節になったしなぁ…!」 こーの温泉好きめ!俺がいくら誘ってもうんって言わなかったくせに、温泉ってなるとほこほこ…! …ま、いいんだけど。温泉ではしゃぐイルカせんせを見るのも、もちろんイイコトするのも楽しみだし。 「じゃ、楽しみにしてますね!」 「アンタが旅先でゆっくりしすぎなきゃいけますよ」 「んーじゃ、さっさと切り上げますね!」 旅は好きだ。ここに一緒に行きたいとか下調べだってできるし、平和ってモノを肌で感じる事が出来るから。 …任務に出なくなった俺に、帰ってきた実感をくれるから。 「さて、それじゃいってらっしゃい。気をつけて」 「うん。イルカせんせも誘われてもついてっちゃだめですよ!らーめんばっかりも駄目です!」 「はいはい。アンタもう毎回それですよね…カカシさん」 「だってイルカ先生ったらモテるのに鈍いから!気をつけてくださいよ!ちゃーんと!」 「わかりましたって」 もうちゃんとわかってんのかなぁ…心配。帰ってきたらすぐに連れていけるように下見してこよう。温泉でねちねち聞き出すのも楽しそうだ。 「お土産楽しみにしててねー!」 いつまでもここにいたくなるからそろそろいかないと。 さっと立ち上がって重い足を振り切るように立ち上がった。 頑張って門の前まで飛ぶ。振り返ってもそれくらいの距離があれば浚って行きたい気持ちを抑えられるから。 「アンタも!浮気すんなよ!」 …我慢してるのになんなのそれ! 「しないにきまってるでしょ!好きなのはアンタだけです!」 「…なら旅もほどほどにしなさい。フラフラで歩くのは自由ですが、折角時間出来たんだから俺だってアンタを構い倒したいんですよ。この仕事中毒!」 「はい…そーします」 ありゃ。ばれてた?肝心なところは鈍いのにどうしてそういうことには鋭いんだか…。 「さ、行ってらっしゃい。帰ったらアンタの好物作っといてあげます」 「うん!うわーいきたくねぇ…!」 「作戦通りですね。ったくもう…!」 あ、あの目だ。いつもの優しくて、慈愛っていうの?大事にされてるなーってすぐ分かるこの瞳。俺を捕らえ続けてくれる大切な大切な…。 「好き。大好き」 思わずチューなんかしてみたんだけど軽く殴られた。 「ば、ばかもん!こんな人目があるかもしれないとこで何すんですか!」 あーまっか。どうしよ。…うーんでもなぁ?このタイミングだとちょっとマズい。 怒った顔は好きだけど、怒って無視されるのは辛すぎるから。 「…帰ってきたら、覚悟しといてね?」 笑顔で誘惑を振り切って走りだした俺に、なんてこといいやがるとかいうイルカ先生の怒号が聞こえたけど、それすらも心地良くて。 俺は、帰ってきたらたーっぷりおいしくいただいちゃおうと決意したのだった。 ******************************************************************************** 適当。 こんな風に生きてって欲しいなという妄想。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |