「木の芽時だなぁ」 そのせいでふわふわ頭の上忍の頭もふわふわしたんだろう。きっと。 いきなり無言であがりこんできたのには驚いたが、縋りつくようにして抱きしめてきた男はそのまま寝息を立てはじめたので驚きを通り越して呆れた。 チャクラ切れでも起こしたんだと思いはするのだが、だからってなにも俺の家に転がり込まなくてもいいだろうに。 見知った気配を、この場合は俺の気配を感じ取って、知り合いの家だとでも判断したのかもしれない。 意識を失っているらしいことは気にかかったが、チャクラ切れならそっとしておくほかない。 医療班を呼ぶことも考えては見たが…本当に危険な状態であるなら、それくらいは自力でできたはずだ。 それなのにわざわざここに転がり込んできたんだから、多分できない…いや、したくない事情があったんだろう。 …何を考えてるんだかまではさっぱりだったりするんだが。 とりあえず、抱きつかれたままでは色々と都合が悪い。 今日が休みとはいえ眠らずにすごしたいとは思えないからな。 とりあえず抱きつかれたままなんとかベッドに移動した。 重く、自分と同じか少し大きい生き物に張り付かれたまま動くのは骨が折れる。目覚めたらその辺りの苦情は伝えることにした。 倒れこむに近い状態で何とか寝床にはたどり着いたが、しがみ付く力ばかり強くて障害物を避けてもくれない男に腹が立った。 意識がないんだから当然なんだろうけどな! 幸せそうに眠る男にちょっとしたいたずら心がわいた。 …ふわふわした頭に、実は初めて会ったときから興味があった。 触ってみると予想以上にふわふわしていて、あれだけ逆立っているんだから硬いかもしれないという不安は払拭された。 撫で回しているだけでもしあわせになりそうだ。うさぎとかねことか、そういう生き物に近い柔らかさで、おまけに色も綺麗だ。 ちょっとだけにしようという思いは、あっという間に吹き飛んだ。 勝手に人んちに転がり込んでくる方が悪い。こっちは寝る寸前だったんだし、多少頭をなでるくらい許されていいはずだ。…多分。 「イルカせんせ」 いきなり名を呼ぶから、目を覚ましたのかと思った。 慌てて頭から手を離してみたものの…むにゅむにゅと人の胸に頭をこすり付けるばかりでその瞳も閉じられたままだ。 寝ぼけている。いい年の凄腕上忍が。…ナニがうれしいのかふにゃけた笑みを浮かべながら。 悪事…ってほどじゃないが、頭を勝手に撫で回してたのがばれたのかと思った。 やたら幸せそうに眠る男にこれ以上ちょっかいをかけるのは止めておこう。心臓に悪い。 「眠いしな…色々聞くのは明日でいいだろ」 四苦八苦しながら男ごと布団に潜り込んで、瞳を閉じた。 男だと思うから落ち着かないんだ。これはうさぎとかねことかそんな生き物だと思えばきっと大丈夫に違いない。 自己暗示のおかげか、眠気はすぐに襲ってきた。重い生き物を担いで移動したせいもあってか、あったかい生き物が懐にいるってのはなかなか寝心地がいいのかもしれないと思いながら意識は途切れた。 翌朝目覚めて、自分の頭がくしゃくしゃであることを不思議がるくせに、俺にしがみ付いていたことは不思議がらなかったふわふわ頭の上忍は、やっぱり中身までふわふわしているらしい。 …木の芽時以外にも、恐らく。 何せ既成事実だなんだと意味の分からない言葉を発して大喜びしたあと、いきなり唇を掠め取って家から飛び出していったからだ。 礼くらい言え。…と思いはしたが、なにするか分からない人間が家にいるのも落ち着かないと思い直した。 「なんだったんだかなぁ?」 とりあえず、寝心地は良かったからいいか。 色々面倒になった結果、とりあえず休日の長寛な朝を楽しむことにした俺は知らなかった。 …飛び出していった男が勝手に俺を恋人だと宣伝して周り、出勤するなり問い詰められまくる羽目になるなんてことを。 ********************************************************************************* 適当。 弱ってたらあがりこめると判断した上忍の計画的犯行。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |