強制プレゼント(適当)



誕生日だということを今の今まですっかり忘れていた。
「お誕生日おめでとうございます。イルカ先生」
見えているのが片目だけでもにこにこ笑っているのが分かる上忍に、報告書を手渡されついでに告げられて、そのときになってやっと、そういえば一つ年を取ったのだと思い出した。
日はとっくに暮れて、今日も残す所あと数時間。
この所急に持ち込まれた大規模な任務依頼のお陰で忙しかった。
毎年それなりに誰かしらが気がついて、誕生日にかこつけて酒を飲む事が多いんだが、今年はそれ所じゃなかったからなぁ。
受付業務が終わってから一人酒ってのも寂しいし、大分落ち着いてきたとはいえ明日も仕事は山積みだ。
…今日は帰って寝るか。
少しばかり寂しく思いながら、どうせなら黙っててくれれば気づかないでいられたのにと、八つ当たり染みたことを思ったりもした。
とにかく仕事は仕事だ。
報告書のチェックは隅々まできっちり行い、決済印を押してすぐに処理済の箱に放り込んだ。
コレでこの人も帰れるはずだ。
…ランクの高い任務ばかりを引き受けているのは知っていたが、今日の任務内容でよく今日帰ってこれたもんだと驚いた。
さすが上忍だ。知り合ってそうたして付き合いのない俺なんかの誕生日まで覚えてるなんて、やっぱり気遣いのレベルが違う。
「お疲れ様でした。帰ったらゆっくり休んでくださいね!」
せめて笑顔はいつもより三割り増しくらいがんばったつもりだ。
…が、どうやら逆効果だったか。
一瞬戸惑った顔をしたのを、俺は見過ごさなかった。
折角祝ってくれたのにな。さすがにちょっと落ち込んだが、気合で笑顔をキープした。
「イルカせんせ」
「はい。なんでしょう?」
なんか急に舌ったらずになったような…?そんなに驚かせてしまったんだろうか。
「お仕事、いつまでですか?」
「ああ!それなら…あ!もう定時すぎてる!」
書類整理なんかをちまちまやりながらだったから、気づかなかった。
「なら、ちょっとだけ付き合ってくださいませんか?飯食いに行くんですが」
「…そうですね。俺なんかでよければ」
財布の中身を一瞬だけ思い出して、まあなんとかなるだろうと頷いた。
誕生日に一人ぼっちで家に帰るよりマシだ。
…でもなんだってこの人、俺を誘うんだ?やっぱり任務後で人恋しくなったんだろうか。
せめてものお詫びにできるだけくつろいでもらいたい。
「よかった…!」
「ああでも、どこがいいかな…?」
「あ、それなら」
上忍クラスが好みそうな店に心当たりがない訳じゃないが、この人が落ち着きそうな店となると個室だ。飛び込みで入れそうな店を必死で思い出そうとしていると、なぜだか店は決まっていると言い出したのだ。
「それなら、そちらで」
誰か先約に任務でも入ったんだろうか?
それで俺に声を掛けたってのなら頷ける。
まあなんにせよ一人でいたい気分でもなかったから、手を引かれるままに受付所を後にしたのだった。
*****
そうして色々とうやむやのうちに連れ出された先が遊郭で、誘いを受けただけに断るわけにも行かず、飯は美味いんだが落ち着かない思いで過ごしていると、そのままごく自然と押し倒されていた。
「は?え?ええ!?」
隣に絵に描いたような緋色の布団が敷いてあって、そのことにも驚いた。
…不肖、うみのイルカ。こんな店に来たのは任務のときだけで、そのときだって俺には向いていないからとこんな部屋に入るようなことはなかった。
うわー…ほんとに布団あかいよ!っていやいやそうじゃねぇ!
「イルカせんせ?」
「あの…!俺男ですよ!落ち着いて!」
「ああ、知ってますよ勿論。…ここも立派ですね」
駄目だこの人。なんで人の大事なモノ握ってんだ。それも楽しそうに!
「なにすんだ…ッ!」
「好きです」
「へ?」
「何度も飯食いにいったりしてんのに、全然靡いてくれないもので煮詰まってまして」
「は、はぁ。そうでしたか」
謝るべきなのか。ここは。でも俺もこの人も男で、そんな意図があるなんてきづけるはずがないだろう?
かといって怒っていいものか戸惑っているうちに、無残にも俺の忍服はひっぺがされていた。
「というわけで実力行使です」
驚くほど整った顔で微笑んだ男の手によって。

…で、まあ恐ろしいことにあんな所にあんなもん突っ込まれる羽目になったんだが。
「お誕生日プレゼント、どうでした?おいしかった?」
朝っぱらから色気全開の男に組み敷かれたまま聞かれても、どう答えればいいんだ。
「飯は、あっ!うま…やめ…!」
気持ちイイのがまた情けないというかなんと言うか、酷くいたたまれない。
抱え揚げられた足にも、何一つ纏うものなどない腹にも赤い痕と白いものが散っている。
「まあ俺なんですけど。…どう?おいしい?」
答えられずに喘いでいると、答えるまでやめないと恐ろしいことを言うので必死で頷いた。
だがしかし。
「ならもっといっぱい食べてね?」
そんな鬼畜な台詞と共に再度押し倒されて、それはもう酷い目に遭ったのだった。
全部終わった後、半泣きになりながら男を詰ったのだが。
「誕生日プレゼントですから、ね?」
なぜだか笑顔でそういわれると、なにもできない自分が不思議だ。
とんでもないものに捕まってしまった。それは分かっているというのに。
「ああくそ!仕方ない…のか?」
「そうそう。諦めて俺のモノになってね?っていうか、もう俺のものですんで」
誕生日プレゼントの分際でそんなことを言う男には、いっぱつ拳骨とキスを贈っておいた。
ちょっとばかり驚いた顔をされたので、今日はコレで許してやろう。
「え!ちょっと!もっと!」
「バーカ」
おかわりは…飯食って風呂入るまでお預けしてやると決めてから、こういうのも悪くないのかもしれないと思ったのだった。


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適当。
五月一杯(`ФωФ') カッ!祝う(`ФωФ') カッ!
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