くつどろぼう(適当)

早朝の病院で喚き散らすようなことじゃないってことは分かってた。
「俺は…大丈夫です。いいからアナタは任務に行って下さい」
深手を負ったのは確かだが、幸い命に別状はない。…今は。
ここに担ぎ込まれた時は、手当が遅れたのもあって血を流しすぎて、危険な状態だったのだと教えられてはいるから、心配されるのも無理はないのかもしれない。
この上忍は、仲間を守ることをなによりも優先するらしいから。
だが、心配してもらっているのだとしても、たまたま居合わせただけの上忍をこんな所に留め置いて置く方が心苦しかった。
例え、縫い合わされたばかりの傷口が、身じろぎするだけで痛んだとしても。
「…俺が帰ってくるまで大人しく寝てるんですよ?必要なモノを持ってきます」
俺の状態なんてわかりきってるんだろう。
突き放そうとしたのに冷めた瞳で俺を射抜かれると、言葉に詰まる。
…だからって、この人をこれ以上わずらわせたくなかった。
「大丈夫です。ほら、いざとなれば売店でも買えますし、手当ても済んだので退院しても…」
痛みはともかくとして、消毒と経過観察だけは必要だろう。
だが俺のためにベッドを一つ消費するほどじゃない。
もともと丈夫な方だったが、言われの無い暴力に耐えている内に、痛みには鈍感になった。
歩けないわけでもなし、家に帰ったところで問題はないはずだ。
風呂に入れないのが寂しいとか、せいぜいその程度の問題だ。
にこやかに微笑んで見せれば、この男も出て行ってくれるだろうと踏んだのだが。
「…これ、貰ってくね?」
にこやかに微笑み返してきた男の手には、俺のサンダルがぶら下がっていた。
奇襲されたときに脚絆をうっかりやられたが、サンダル自体は無事だったようだ。
…それをわざわざ見せ付けるようにした持ち上げた後、懐にしまう男が理解できなかった。
「あの、そんなもんどうするんですか?」
一応無事だったとはいえ、元々アカデミーで悪ガキ達と戦っている間に結構な頻度で酷使されたソレは、もう随分とぼろぼろになっている。
上忍が好意のつもりで捨ててくれる気なんだろうか?
家に帰るまではソレを履いていくつもりだったのに。
上忍には、中忍の貧乏性が理解できなかったとか?
とりあえず、自分が長らく使用したものを、上忍に持たれているだけでも少々辛い物がある。
清潔にしているとはいえ、靴は靴だ。そんなものを見せたい相手じゃない。
結局、返せとも言い出せず、疑問を投げかけた俺に、上機嫌なままの男がその意図を教えてくれた。
「コレ、なかったら帰れないでしょう?」
してやったりとばかりにそんなコトを言って、「俺が帰るまでここにいなさいね」だの、「どうしても嫌なら、帰って来てから俺のうちにいらっしゃい」だの…その言葉に目を白黒させたら、「怪我の消毒なら俺の方が上手いよ?」とのたまってくださった。
どういうことだ?これは。
「あの、いざとなれば素足でも帰れるんですが」
そう口にすることを躊躇っている間に、男はにこにこしたまま部屋を飛び出して行った。
「すぐ戻るから、イイ子で待ってて?」
笑顔がどこか恐ろしくさえ感じるほどに。
*****
すぐ戻るというから、トイレに行くのさえ遠慮して、投与されていた薬のせいかうっかり寝こけていたらしい。
…目覚めたら見知らぬ部屋だ何て恐ろしい事実はなかったコトにしたかった。
「起きた?ふふ…ここなら誰も入ってこられないし、勝手に出て行けないから安心してね?」
前半はまだしも、後半は一般的な感覚だと恐怖でしかないと思うんだが。
「あの、その、俺は自宅に…」
「ん?ああ、大丈夫。今日からここがアナタの家だから」
「え?」
…呆然とする他になにができただろう。
男が本気なのは残念ながら良く分かってしまっただけに、二の句を継ぎそこなった。
「怪我なんかして…ダメでしょ?」
笑顔で可愛らしくメッなどといわれても、どうなってるんだかさっぱりだ。
脳が理解を拒否している。
「…あ、えーっと…仕事が…」
「治ったら…今度からちゃんと送り迎えしてあげるね?俺がいない時は犬たちに頼むし、もう怪我なんかさせないから」
俺の頭をなでる仕草は、馬鹿にしているのとも違うが、幼子を見るものに似ている気がした。
…俺はいつから上忍に飼われてしまうことになったんだろう。
「自力で、なんとかできますから!」
そうつっぱねてはみたが、「そんなこといって怪我したじゃない」、「俺の見てない所で怪我なんて許さない」と逆に子どもみたいに拗ねられて埒が開かない。
どうしたものだろうか。ソレを一瞬嬉しいと思ってしまったことが一番の問題な気もする。
「怪我が治ったら全部俺のになってね?」
うっとりと呟く男の腕に抱きしめられながら、怪我が治るまでに何とかして俺の気持ちを男に伝えないといけないと思うのだが。
「もうぜーったいこんな傷、付けさせないからね…?」
…どうにも俺の決意は無駄になりそうな気がする。
こんなコトされたのに、この腕の中から出たくないなんて思ってる辺り特に。
「…とりあえず、寝ます。治るまでは…その、色々考えさせてください…」
「ん、そうね。色々…ふふ…」
気遣いながらだがしっかりと俺を抱きしめる腕を枕に瞳を閉じた。
靴なんかあったって、きっと逃げられないんだろうなぁと思いながら。


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適当ー!
眠かったので適当でございまする。

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