「痛い?」 そのセリフはいたわりに満ちているのに、与えられている苦痛は容赦などあるわけもなく。 腕も足も…全身に巻かれた細い鎖は一分の隙もなく、俺の動きを封じている。 その手際のよさと、正確さは…さすが元暗部というべきだろうか? だがそれは決してこんなコトに使うための能力ではなかったはずなのに。 「なんで…こんなことを…!?」 とらわれたのはいつだったか…。 アカデミーや受付と一人暮らしの侘しい中忍寮を行き来するだけの…だが平穏でいつも通りの生活。 すべてが、打ち砕かれた。 平穏こそ得がたいものだと知っていたのに、油断したということなんだろうか? 里内で…それも狂った男に捕らわれるなんて。 「ねぇ?痛い?」 俺の問いに返ってくるのはいつもこのセリフだけ。 俺が痛みを覚えていることなど、分かりきっているだろうに。 最初はこうじゃなかった。 普通に他愛の無い事を話し、時々は飲みに行って…。 だから、ただの上忍と中忍としては親しい方だったのかもしれない。 あの日も、そうだった。 珍しいものが手に入ったからと、自宅に呼ばれたのだ。 そこで勧められるままに酒を干し、珍しい物はなんだったのかを聞く前に意識を失った。 目を覚ましたときには、嬉しそうに俺に鎖を巻きつけ、子どものように無垢な微笑みを浮かべているこの男がいたのだ。 …そうして俺は捕らわれた。 澱んだ、だが幸福そうな瞳で俺を見つめるこの男に。 思い出しても、何がきっかけだったのかすら思いつかない。 痛みは、耐え切れないほどじゃないけど…この男がどうしてこんなことをしたのか分からないのが辛い。 床に転がされたまま男を見上げると、いつの間にか距離を詰めてきていた。 その白い指が俺の身体に伸ばされる。 身をよじれば鎖が擦れて皮膚を削り、血がにじむ。 「痛い…!痛いに決まってるだろう…!?」 いつもは押し問答で終わる。 でも、この痛みはもう我慢できないから。 血反吐を吐くようなセリフは届くなんて思えなかったけど…どうしても知りたかった。 …どうして、こんなことに? 「痛いの?なら良かった…!ねぇ?狂わないで。ずっとここにいてね?」 狂うななんて…めちゃくちゃだ。 鎖をほどくこともなく、任務以外の時は必ず俺をこうやって見つめて…そうしてただ問うのだ。 痛いかと。 そうして今この男は俺が痛がっているのにほっとしたような顔をしている。 「アンタは…何をしたいんだ…!」 痛みを与えたいのなら、確かにこういう方法もあるが、拷問にしては手ぬるく、洗脳にしては暗示すら与えられず、ただここに捕らえられているだけ。 叫びじみた問いに返ってきたのは…。 「ただ、欲しかっただけ。でも…外に出すとずっと他のヤツにばっかり構うからいやになって…。丁度ね、ソレ、手に入ったから。」 「これ…!?この鎖…!?」 他のヤツに構う…そういえば、飲みに言ってるときにも冗談めかして俺以外を見ないでと言っていた。 酔っ払いの戯言と流したソレが…まさか本気だったなんて。 「動けないでしょう?そういう作りだから。チャクラも使えない。それに…良く似合ってる。」 「ふざけるな…!」 血がにじむ手に構わず、暴れる俺の手に、生暖かく湿った感触が滑った。 「うん。でもねぇ?俺は好き。…好きって言うか…もう、アナタ以外はいらないんだ。」 舌なめずりでもするように、俺の手を…血を、舐め取って。 …笑っている。 「な…っ!?」 その言葉は熱烈な告白にも似て。 …だが、その行為が全てを裏切っている。 「だから…ずーっとここにいてね?」 鎖ごと俺を抱きしめて、うなじに顔をうずめて、懇願にしては甘く、命令にしてはぬるいそれを吐き出して…。 ああ、どうして…? 嗚咽交じりの笑い声が聞こえる。 …狂ったように笑う自分の声が。 …求めていた物が手に入ったなんて思いたくないのに。 「アンタは…俺を放さない?」 「うん。ずーっと。俺が消えたら一緒に連れて行く。」 そう言って抱きしめる力は強く、痛みさえ覚えるほどで…。 俺の身体に食い込む鎖がかちゃりと音を立てた。 鎖何よりも俺を縛るのは…この腕なのかもしれないと思いながら…俺は手を伸ばし返せないことを少しだけ残念に思った。 ********************************************************************************* 何だか全身が痛いのでこんな話を上げてみたぜ!!! …アホでごめんなさい…!そして既に鎖ネタやってたって気がついたけど書き直す体力がないのでこのまま行きます! いつにもまして酷い出来ではございますが、ご意見ご感想突っ込み等ございましたら、お気軽にどうぞ! |