「ねぇ。どこにも行かないで?」

…どこにいけるって言うんだろう。


「今はねぇ…桜が綺麗だよ。」

そんな物ここにいたら見えるはずもない。
この人の肩に残された花弁と香りだけがその名残を感じさせてくれるけれど…。


「でもね…出してあげない。」

そうだろうなぁ…この鎖も、この部屋も…そしてなによりこの腕が、俺を捕らえて離さない。


「ねぇ。イルカ先生。俺すごーく嬉しいの。だって、いつ帰ってもイルカ先生がいてくれるでしょ?」

…微笑むその顔が、あまりにも純粋で愛おしい。
この人は確かに狂っているのに。


「イルカ先生は…幸せ?」

縋るような言葉とは裏腹に、腕に込められる力は壊されそうなほどで。
…まあ、いつも応える言葉は決まってるんだけど。


「幸せですよ?アナタがちゃんと帰ってきてくれるんなら。」
「うん!…うん!俺、必ず帰って来るから…!」

誰よりも大切で愛しいひと。
…壊してしまったのは自分だから。


「だから…ずーっと一緒にいてね?」
「はい。もちろん、ずーっと。」


じゃらりと音を立てる鎖が、この人を繋ぐものになるのなら、ここにずっととらわれていようと思った。

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こっそり増える拘束具シリーズ?
どこにもいけないのは鎖につながれた心。みたいな?
変な話。

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