帰る場所(適当)


大の男二人。両手を広げて並べれば壁に手がつくような狭い部屋だ。
だからこうして二人でくっ付いて過ごすのは合理的だ。
…そう主張する男が愛おしくてならない。
「イルカせんせ?」
ふわふわと笑う男はこれでも上忍で、それもそれなりどころか相当に腕が立つ。…はずだ。普段は随分とぼんやりしていてソコがかわいいせいで、どうにも実感は湧かないのだが。
「確かに、暖かいなぁ」
女のように柔らかい所など一つもない硬い体同士。
寄り添って奥の奥まで受け入れて、そうして得る快楽は頭のネジが飛んでしまいそうなほどに激しく、甘い。
どんなに気持ちよくても何も生み出さないその行為に駆り立てられる理由が、愛なんて感情だと、この人は決して認めないだろう。
「イルカ先生は暖かいね」
そういえば、この人は俺より少しだけ体温が低いかもしれない。
触れる肌は興奮の欠片を残して薄赤いのに。
目を細め、俺の胸に体重を預けて頬を摺り寄せている。
いつだって行為への言い訳も、甘やかなの言葉もない。
あるのは嵐のような情交と、少しの呟きだけ。
そのくせ、決して離れようとはしないのだ。
…便利な道具ならこんな風に執着しない。
ソレを認める事はこの人にとってよほど耐え難いことなのだろう。
任務を終えれば飛ぶ様に俺の元へ帰ってきて、任務に行く前にはマーキングと称して必ず俺を求める。
そうして、闇にまぎれて飛び出していくのだ。俺にその欲望の残滓を残して。
「寝ましょう?」
手で髪を梳いてやると気持ち良さそうに目を細めて、やがて呼吸が規則正しい物に変わっていく。
「せんせ。起きたらちゃんと側にいて」
ああ、いるとも。
意味すら理解せずに俺を手元に置く男が、俺に元に帰ってくるうちは。
ことりと落ちた睫と共に、少しだけ男を重く感じた。
「好きですよ」
忍として恐ろしく優秀なこの人は、普段なら眠っていても周囲の音を拾わないなどというコトはない。
…俺の側だけでこうして熟睡してしまうだけだ。
届かない言葉に答えるように身じろぎして肌をすり寄せてくる男を抱きしめて、少しだけ泣いた。
届かない思いへの答えを、体だけで返してくる不器用な男のために。


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適当。
春先なので不条理な何かをそっと。
ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ!

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