「うるせぇ!そんなアンタに惚れてんだよ!いいからとっとと言ってこい!そんで幸せになりやがれ!」 居酒屋でいきなり酒をぶっかけられたかと思ったら、啖呵まで切られた。 仁王立ちで睨みつけている人は、さっきまで俺の愚痴を聞いてくれていたはずだ。 それが唐突にすっくと立ち上がったかと思えば、まだたっぷり残っていたコップ酒を勢い良く…当然俺はびしょ濡れだ。 それなりの量を飲んではいたが、ここまで酔っ払うこの人をみるのははじめてだったかもしれない。 受付業務が終わる寸前を狙って捕まえて、無理やりに近い状態で飲みに連れて行った自覚はある。 ためらいめいたものを向けられたのにも気づかないフリをして、寂しいから付き合ってなんてこの人なら断れないと分かっている台詞で追い詰めた。 しぶしぶながらでも頷いてくれたからと、他人を気にせず好きに話せる個室に連れ込んで、たっぷり愚痴を聞かせもした。 好きな人ができたとか、でも告白できない相手なんだとか、結構鈍い人で、俺の思いなんか絶対に気づいていないとか…ある意味あてつけに近い言葉たちを、この人がどんな気持ちで聞いていたかは知らない。 正直言って思い人の鈍さには万策尽きていて、気づいてもらえないのは自分のせいじゃないなんて思い始めていた。 だからこそ幾度もこの人を誘い、最近は断ろうとすることが多くなったから、こうして強引に連れ込んだのだ。 …要するに俺の行動はもういっそ嫌がらせに近かった。 逃げようとしていると感じても、俺と視線が合うとそらされるようになっても、どうしてもやめられなかった。 この人にしてみれば、知り合いの上忍が執拗に愚痴をきかせようとしてくるなんて程度の認識なんだから、そりゃそうだろう。 もう愚痴なんか聞きたくないって、いつか言われるのを待っていたのかもしれない。 好きすぎてこっちはどうにかなりそうなのに、一緒に飯を食っても酒を飲んでも、一緒にいると楽しいと…好きだといっても、酔っ払うのが早いだのなんだのと流されるこっちの身にもなれと、半ば自棄になっていた。 我慢強い人だけど、曲がったことが大嫌いでうそがつけない頑固者でもあるから、この人に本気で断られたら諦めようと思っていたのに…いつだって困ったような顔をするくせにほこほこついて来るんだもん。…ま、最近は逃げようとするのを捕まえてたけど。 …でも、これってまだ可能性があるってことじゃないの? 「好きって言ったらいいの?そしたら…幸せになれる?」 よっぱらった風を装った。元々酒には強いし、そもそもさっきの台詞でかすかに残っていた酒気などどこかへ飛んでしまっている。 でも、この人はあとになって上忍に酒をかけたって落ち込みそうだから、お互いよっぱらっていたってことにしたかった。 それから、この人は俺がこういう風に子どもっぽく振舞うと隙ができるのをしっているってのもあるけどね? 「そりゃそうです。アンタそんなに好きなんだから、相手だって絶対わかってくれます。…だからもうこんなのは止めてくれ。アンタが好きって言うたびにしにたくなる。アンタは気持ち悪いかもしれないけど、もう近づかないから」 なんでそんな悲壮な顔してるんだか。鈍いっていうかなんていうか…どうしてそんな勘違いしちゃったんだろう…。 「そんなの、わかんないじゃない。これまでだって何度も好きっていったのに。…あなたに」 「へ?そりゃ何度も聞きましたが…好きっつったってそういう意味じゃないでしょう?俺のは、その、あー…口にするのもはばかられるような欲求コミです。だからもうアンタ下手に近づかない方がいいですよ?」 今更照れてみせるってのはどういうことなのよ。かわいいけど。…それに逃がすわけなんてないんだけども。 「だから。アンタですって。俺がこんなにおかしくなるほど惚れてるのは」 「はぁ!?いやそんなありえねえ!」 「ありえなくないでしょうが!任務の合間縫って必死に会いに行っても好きだって行っても、見合いの話とかまでするし…!好きだって、なんどもいったのに」 ヤバイ。本気で泣けてきた。もう何なのこの人。でも好き。 …なんて、頭に血が上りすぎて、思わず思ったことが全部口に出ていた…らしい。 「アンタ趣味悪かったんですね…俺、男ですよ?」 それでなんでしょんぼりされなきゃいけないのよ。好きだって言ったくせに! 「そりゃそうでしょうね。でもあんたの言うところの口にするのもはばかられるようなことを、これまで頭の中で何度もしてるんですが。ぶっちゃけると最近あんたでしか抜いてないし」 「はぁ!?」 「好きなの。あんたが他の人が好きだろうが男だろうがなんでも!人にいえないようなことだっていっぱい沢山したいの!どうせしぬとかいうなら、俺のであんあん鳴きながらにしてよね!」 言いすぎな気もしたが、ここまでいえば流石にわからないってことはないだろう。 …とりあえず真っ赤になってるから、言ってることの意味ぐらいは把握しているはずだ。 「そんなの…俺の方が好きだ!ずっとアンタが好きとか言うせいで…!かわいい顔して酒なんか飲むしなつっこいしなんだよもう!何で上忍で男で見込みなしの男に惚れなきゃいけないんだ!アンアンとか言うな!むしろアンタが言え!」 支離滅裂ではあるけど、要するに…これってお互い好きってことでいいんだよね? 「もーかわいい!なんなのもう!…とりあえずここでますよ!俺んちでいいですよね?」 「はぁ?確かにもう食い物もないですけど…」 「そこじゃないでしょ!…もういいからアンタだまってなさい!」 支払いだけはきちんとしたけど、後はもうひっさらうように店を後にした。 ちなみに俺のであんあん…っていうか、かわいくあえいではくれたけど、それが癪に障ったとかで口でしてくれた挙句に挑戦的な顔で、俺の方が好きです!負けたわけじゃありませんからね!とか言ってくるあたり、やっぱりちょっとずれてると思う。 ま、そこもすきなんだけどね! とりあえず…言ったら幸せになれたってのは本当かもしれない。 ********************************************************************************* 適当。 ねむい。ねむすぎる/(^o^)\ ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |