食っちゃうぞ(適当)



本当の所、ずっとずっと狙っていた。
そうしてたまたま小耳に挟んだ今日が誕生日だという情報。
…そりゃもう決行するしかないでしょ?
というわけで、今何も知らないイルカ先生は、俺の前で一生懸命ご飯を食べているわけです。
無理矢理上忍に誘われたってのに、無防備なこの人はほこほこついてきて、おごりですよーなんて言葉に涙腺を緩ませて、ついでに胃袋も広げてくれたようで、それはもう楽しそうに片っ端から俺の頼んだものを口に放り込み、頬を緩ませている。
無防備すぎる。今なら代わりに俺の突っ込んでも気づかないんじゃ…なんてありえないことを考えながら俺も適当に飯をつまんだ。
美味い。そりゃそうだ。俺が吟味に吟味を重ねてこの人が一番気に入ってくれそうな店を選んだんだから当然だ。
ありがたいことに予約するときも色々細かい注文を聞いてくれて、この人はまさかここが予約席だなんてことはしらないし、料理や酒が段取りどおりに出てきていることも、隣に部屋に男二人が寝て余りある大きな布団が用意されていることも知らない。
だから当然隙だらけだ。
「うっま!カカシさんも食べてますか?これすっごく美味いですよ!」
「ん。食べました。おいしいですよね」
「そっちのも!いやーこんな店知らなかったなぁ!今度また来ましょうね!」
「もちろん」
ま、それは今夜の首尾によるんだけど。
そんなこといえないから曖昧に笑って箸を動かした。
いざとなれば記憶を消すという手段はあれども、緊張はする。
無防備に笑顔を垂れ流し、酒もいい飲みっぷりだ。おごりますといったのに払いますなんていうし、この分じゃただ一緒に飯を食いにきただけだと思ってるにちがいない。
ま、あたりまえか。時々行き会って挨拶するだけの人間に誘われて、それがまさか自分を食うつもりだとは思うまい。
俺だって思わないし。罠は警戒するけどねー?流石に。
この人は無防備すぎる。このままぺろっと食べたくなっちゃったらどうしてくれるの。
「…今日は、本当にありがとうございます」
「いえいえ?」
何せこっちは下心の塊だ。今角煮を放り込んだその口に別のものをねじ込みたくて仕方がないくらいには。
やっぱりこういうとき上忍って不便で便利。誘いは強引でも許されるけど、こうして薄くて、でも通り抜けられない壁が作られる。
ま、壁なんて関係ないくらいぶつかって、この人の常識とかそういうものを全部めちゃくちゃにしちゃう予定なんだけど。
「今日、誕生日だったんです」
「あーあ。いっちゃった!俺、お祝いするつもりだったのに」
そうか。俺が知らないと思ったらいっちゃうよね。そりゃ。うーん。ちょっと残念。
「あ。ごめんなさい。えー…その、そんな日にこんなチャンスが来たので、言ってしまいたくなりまして」
「へ?」
チャンス…チャンスってなによ。この人は不満があったら馬鹿正直に真っ向勝負かけるから、俺に何かってことじゃないと思いたいんだけど、この人の常識どおりの行動なんて取れてる自信はまるでない。
あ、ヤバイ。恐くなってきた。
…この人はすごい。上忍で修羅場まみれの暗部にもいたのに、そのときに出会った恐怖のどれよりも、俺はこの人の一言が恐い。
「す、すきです!」
「ええ!?」
「あ、やっぱり気づいてらっしゃいませんでしたね?いやー…前に俺が啖呵切ったことあったでしょう。その後すごーく悲しそうな顔でごめんなさいって言いに来てくださって、あの時俺も謝りに行こうと思ってたんですよ」
「あー…いや、だってアレは俺が」
一度だけ、この人と派手にやりあったことがあった。
あなたとは違うとか言われて…ちょっと前から気に入っていたこの男まで俺を化け物扱いするのかと思ったら、あの子は大事にしてくれるのに俺はそんな扱いをするのかって…要は僻みと嫉妬だ。
ちょっと所でもなく、八つ当たり気味だったのもあって、ものすごく反省して、さっさと謝りに言ったら、あっちも泣きそうな顔してて、ものすごーく緊張してたのに謝ったら花が咲くみたいに笑って慰めてくれたから。
それ以来、俺は片思いをこじらせ続けている。
で、ちょっとまって。今その長い片思い生活、もしかして終わった?
「まあその、そのときにね。あなたが、なんていうか無防備ににこって、ほっとしたみたいにわらったでしょう。それでまあ、その。…惚れてしまいまして」
流石に言う勇気がでなかったんですけどねぇ!密室だったのでつい!
朗らかにそういえるこの人は、何度だって俺をめろめろにする気らしい。
そんなの…俺だって惚れてるって!
「お返事はあせらずにちょっとでも考えていただけると嬉しいです。あと不愉快な思いをさせたと思うので、ここの払いは俺が」
「好きなの」
「へ?」
「ずっとイルカ先生が好きで、だからここに連れてきたし、お祝いした後隣の部屋に連れ込んでやっちゃおうとまで思いつめてました!」
「なっ!アンタなにかんがえてんですか!」
「アンタのことだけにきまってんでしょうが!」
「そんなの俺もですよ!」
お互い激しく言い争いすぎたのか、ふすまの向こうで咳払いが聞こえた。
…お互い顔を見合わせて、そうしたら…。
もう笑うしかないでしょ?
「ぷっ!あはははは!」
「もー…なんなの!好き!」
「俺も好きです!」
「じゃ、今夜はしっぽり…」
「早すぎます!まあまずは飯食って風呂入ってそれからです!」
あら?もしかして駄目かと思ったら気にするのそっちなの?
「じゃ、まず食いましょうか?」
「もちろんです!」
きりっとした男前な笑顔だ。俺の大好きな。よっぱらってほっぺた赤い所もかわいい。
…我慢できる気がしないんだけど、がんばってみよう。
とっくりをつかんで恋人になってくれちゃった人の杯に注ぎながら、そんなことを思った。


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適当。
今食っちゃわないと誰かにとられちゃうかもと思った中忍は、自分が食われてからアレ?嘘逆?とか思ってるといい。
かわいいし一生懸命だからいいかーみたいな男前ぶりで。
五月一杯(`ФωФ') カッ!祝う(`ФωФ') カッ!
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