時々無性に苦しく思うことがある。 自分だけに向けられる視線に、甘い声。 この人の側にあることが、あまりにも心地良くて。 ふと不安になるのだ。…これら全てがまやかしだとしたら、俺はどうしたらいいんだろう。 俺はもうとっくにこの人の側以外で生きていけないというのに。 「カカシさん?」 泣きそうな顔してますよ。 そう言って撫でてくれる手がどこまでも優しくて、すりよってそのぬくもりに甘えた。 この優しさが全て嘘かもしれなくても。 …これが最高に使い勝手のいい武器である俺を捕らえておくために里の仕掛けた罠だとしても。この人がずっと俺の側にいてくれるならそれでいい。 「だから、ねぇ。どこにもいかないで」 そう言ったら思いっきり殴られた。 「あんた馬鹿ですか!」 真っ直ぐに俺を睨む漆黒の瞳が愛おしい。 怒ってくれているのが、俺のためなのだと感じさせてくれる。 この痛みすら幸福感に変わりそうなほどに、俺はこの人におぼれている。 それなのに、信じることができないでいるのだ。 …だって、みんな先に行ってしまった。側にいてくれる誰かが存在することすら信じられないくらい簡単に。 それに強さを尊敬しても、同時に恐れるのがひとという生き物だ。 傍らにいてくれるこの人が俺を蔑んでいても不思議はない。…そんな風に欠片も感じられないとしても。 そんなことより、この人までいなくなってしまったら。 想像だけで狂いそうだ。 奪い続けて失い続けた俺に、こんなにも大切で大切すぎて苦しくなる人ができるなんて。 …あまりにも幸せすぎて嘘にしか思えないといったら、呆れたとばかりに真顔でため息を吐かれた。 「あんた馬鹿ですね?馬鹿で間違いありません。不幸慣れしたふりして怯えるくらいなら、やっと 勝ち取った幸せを自慢するくらいでちょうどいいんですよ!」 俺みたいにね? その笑顔にときめいた。 そっとその手が俺に伸ばされる。触れる体温がじんわりと俺に染み渡り、まるで毒のように依存させる。 ああ、この人だからこんなにも幸せで不安なんだ。 だれよりも愛おしいひと。 きっと永遠に信じきれない。 「まあ、いいですけど。あんたが馬鹿だって知ってて惚れたんだから」 ちょっとだけ寂しそうに、でもとても大事そうに俺を抱きしめてくれた。 この狂おしいほどの執着を、それと知って受け入れてくれる腕に大事にしまい込まれて、己の歪んだ思いに少しだけ泣いた。 ********************************************************************************* 適当! あーあ。ばかでかわいいなぁと思われているなんて知らないほうが幸せ? ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ! |