「あなたが、好きです」 その台詞を言った相手も以外だが、その表情がなにより予想外すぎた。 告白なんてものは数回しか経験がないが、それはこんなにも苦しそうな顔でするものだっただろうか。 どんなに分が悪くても、ふられるって殆ど確定してる状況でも、俺だったらこんな顔はしない。 不安と緊張で顔がこわばるならまだしも、この人の場合はこのまま倒れそうなくらい苦痛を耐える顔をしている。 「あ、の…」 何を言えばいいかわからない。だが何か言わなくては。 そう思ったのにそれを遮るようにその言葉は投げかけられた。 「正直こんな感情はいらない。あなただって困るでしょう?」 苦々しげな顔はそのせいか。 …それなら、少なくとも自分の感情だけは言うことができる。 「アンタがいらなくても俺が欲しいって言ったらどうすんですか。最初からいらないなんて言われて。…アンタ、俺の言葉信じるんですか?」 挑発染みた台詞には苛立ちと怒りがたっぷりと乗せられて、言った自分の鼓動までぐちゃぐちゃにする。 でも、だって、そうだろ? …この人は俺の気持ちを勝手に代弁して、勝手に俺のためだなんてウソの理由つけて、自分の感情を消し去ろうとしてるだけだ。 「そんなこといわないでよ。アンタ、自分がめちゃくちゃにされてもいいわけ?こんな…見るたびにアンタ浚って閉じ込めて、独り占めしたいなんて思ってる馬鹿相手に」 弱弱しい言葉とは裏腹に、男の瞳は確かに獣染みた光を宿して俺を射抜く。 上等だ。 「俺が欲しかったていったら、アンタが手にはいるなら俺はそういうに決まってる」 「やめろ」 その必死さはどこか滑稽でさえあるのに、俺は歓喜した。 諦めかけていたものが手にはいるかもしれない。…そうなったら舞い上がるのも無理はないだろ? 「告白ってのはな…こうやるんだよ!」 逃げようとする体を抱きしめて、ついでに顔を隠す邪魔臭い布切れを引っぺがし、あらわになった顔が動揺でこわばっているのに少し笑って、それから。 「…っ!」 「好きです。アンタ逃げ回るから脈ないのかと思ってましたが、今日告白しようと思ったらそっちからしてくれたんで、これで両思いですね?」 逃がすもんかと気合を入れて抱きしめたら、こわばっていた顔は泣きそうに歪んで、それから驚くほど綺麗に笑ってくれた。 「もう、どうしてアンタはいつもそうなの。俺を振り回してばっかりで」 振り回した記憶はないが、そう思うのはきっとお互いほれているせいだ。 決定的な答えが欲しくて、俺は囁くように男に答えをねだった。 「で、どうなんですか?…アンタ、諦められるんですか?俺を。俺は無理ですけど」 自分に感情が向いているとわかったんだから、早々簡単には退けない。 この人がどんなに苦しんでいても欲しいって気持ちは止められないんだ。 そういう意味では確かにこの感情は本当に厄介だ。 「…両思いですよ」 少し悔しげに俺を抱きしめ返す男にほくそ笑んだ。 欲しがりなのは自分だけだと思っている男に、これから俺の思いを思い知らせてやろう。 好きって言葉をあんなにも苦しげに告げた男が溺れるくらいたっぷりと。 「好きですよ」 手始めに告げた言葉を奪い取るように唇が重ねられた。 そのせわしなく必死な素振りに、互いに飢えすぎていることに少しだけ笑って、俺はその熱に溺れることにしたのだった。 ********************************************************************************* 適当。 ようするにいちゃいちゃばかっぷる? ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |