いたいけな(適当)



「イルカ先生」
「はい」
「あのね、今日ね、任務だったの」
子どものような口調で…いや、今は実際子どもなんだが。見た目だけは。
だからこその保護だ。
うっかり任務で部下を庇って…というのはまあこの人らしいと納得した。ふわふわした言葉遣いとはうらはらに、この人はどうして中々同胞を大切にする。
結果的に、中忍の家では警護レベルがどうとかで、トラップまみれの仮宿に二人して押し込まれているってのは本音で言えば迷惑でもあるんだが。
何で俺だったんだろう。
そうため息が零れそうになるのを堪えるのに疲れはじめている。
これは任務だ。
いくら大人のときから甘え癖のある上忍に懐かれて困っていても、今子どもの姿になっているとかわいさがドストライクでついつい構ってしまいそうになったとしても、それら全てを押さえ込んで、世話役の中忍としての仕事を全うしなければならない。
「そうですか。それは大変でしたね。お疲れ様です」
膝に懐く子どもを振り払うことはできないが、必要以上に構うのは階級から考えても失礼に当たるはずだ。だから今、なでる必要もない。
どんなに子犬のような瞳で見上げられても、だ。
「うん。今さ、チビじゃない?俺。だから動きにくくって」
情を移せば苦労するのは自分だ。
何度も己に言い聞かせながら、洗濯物を畳む。
夕飯のしたくはほぼできているから、後はこの人に風呂に入ってもらって、それから飯が済んだら寝床に入ってもらえばいい。
あーあ。これじゃ俺、母ちゃんみたいだ。
そもそも家事能力の高い、そこそこ使えてこれを期に写輪眼のカカシの命や貞操を狙ったりしないということで選ばれたらしいから、ありがたくない話だ。
能力を買われるなら、忍としてもっとわかりやすいものの方がよかった。
外のトラップを仕上げたときに、お前はトラップもできたんだったなぁと感慨深げに言われて落ち込んだのを思い出してしまった。
俺をなんだと思ってるんだ。里長も、この人も。
「不都合なことがあれば声を掛けてください。その前にまずは風呂にはいってください。上がったらすぐに食事を準備しますから」
「んーそうします」
のたのたと風呂場に向かうのを見送って、台所に急いだ。
何もかもが早く終わらないかと嘆きにもにた呟きをこぼしながら。
*****
「そーだ。イルカ先生。週末ヒマ?」
「え、ああ、まあ、はい」
この人の任務のおかげで出勤時間が非常に短くなっている。週末なら余計にヒマだろう。
「そ?じゃ、ごはん一緒に食べてくれる?」
「へ?ええもちろん」
最初は食事を持っていって、食べてもらってから片付けつつ俺も食ってたんだ。
でも何度も一緒じゃないとヤダと泣かれて、これは正当な要望って考えていいよなって判断して、最近はずっと一緒だ。
わざわざ言うことじゃないだろうに。
あっさり頷いたのがよほど嬉しかったのか、上忍がにこにこと笑いながら手をとった。
いきなりひざまづかれて、面食らってたら、いきなり破裂音と共に煙が上がった。
まさか敵の術かと警戒したが…。
「じゃ、絶対ですよ?」
そういって笑う男は元のサイズに戻っていた。
「え!あ、なんで!」
ずっとずっと断ってきていたのに。これで水の泡だ。
これ以上惹かれたくなんてなかったのに。
「約束。ちゃんと守ってくださいねー?」
そういって手の甲に口付けるのを呆然としながら見ていた。
どうやら、これ以上逃げることはできそうにないらしい。


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適当。
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