クリスマス(適当)

「ケーキなんて似合わない物かっちまった…」
子どもたちと一緒に祝うならまだしも、俺が待っているのはとっくの昔に成人したいい年の…それも男だ。
勿論酒も、ついでに肉…っていうと言い方が良くないか。でかい鳥の丸焼きも奮発した。
クリスマスを祝ったことないなんていうから。
プレゼントは貰ったことがあるらしいけど。…どうもそれも怪しげな物だった気がしてならない。
便利でしたよと笑う男に、何を貰ったか聞いても教えてはくれなかったけど、戦場で便利なものなんて、子どもに嬉しいものなんかじゃない気がする。
そういうときに思い知らされるのだ。
この男には、子ども時代なんて碌になかったんだってことを。
「甘い物、苦手なのにな」
我ながら苦笑した。
これはちょっとした意趣返しでもある。
お祝いなんていらないから裸で待っててだの、プレゼントに欲しい物を言えって怒鳴ってやったら真顔でイルカ先生なんて言いやがった。
馬鹿だ。それは良く知ってる。俺なんかに告白してきた時からずっと。
頭のネジがまともなら、俺みたいな男を、それもどう考えても同性に靡きそうにない製革してる俺を、あれほど必死になって欲しがったりはしないはずだ。
お陰で今では俺もすっかりホモなわけだが…まあその辺はしょうがない。
あれだけ好きだ好きだ言われて、つっぱねてもつっぱねても諦めなかったくせに、S級任務一つで諦めようとしやがるから…だから。
「好きなら戻って来やがれ」
そう言って口付けをくれてやったのが今年の…確かあの男の誕生日だったか。
お調子者の男が目を見開いて驚くのを見たのも初めてだったし、顔を真っ赤にしたのを見るのも初めてだった。
泣きそうな顔も、血を吐くような言葉も、その全部が俺の知らないものだったのに、俺はそれを知っていた気がした。
やっぱり強がってばっかなんだよ。こいつはって。
「もう、知らないから…!好き、すごく好きです。あなただけが。帰ってきたら全部頂戴」
その告白をやらかしてから、あの馬鹿はちゃんと帰ってきてくれた。
…俺の全てを奪うために。
それからはまあ…世に言うバカップルってものに成り果てている自覚はある。
あの朴念仁がとまで言われるほど、色ぼけちゃいないつもりだけどな?
クリスマスでやたらはしゃぐから祝ってやろうと思ったのに、大騒ぎしてる理由が恋人同士がいちゃぱらできるからなんて理由でだったし、ちゃんとした理由すら理解していなかった。
挙句任務で間に合わないかもなんて、本当にあの男は…。
そんな訳でケーキは野郎二人でやっつけるにはちょっとでかい。
クリスマスにはぴったりのそのケーキをぶら下げて歩けば、周りからデートなのか騒がれもしたから、明日には大騒ぎになっているかもしれない。
「ま、それはそれだな」
帰って来いといったら、あの男は必死になって帰ってくる。
…死ぬなって言葉には最後まで頷かなかったけど。
自称愛の言葉とやらのたっぷりつまった手紙には、卑猥な要求と会いたい会いたいと繰り返し記されていた。
帰れますって言葉と一緒に。
「早く、帰って来い」
その口にケーキをねじ込んで顔を歪ませるのを楽しんで、それから…存分に欲しがってた物を与えてやるのもいいだろう。
調子に乗りすぎる男相手じゃ、明日はろくに立っていられるかどうかもあやしいんだが。
なんたって、クリスマスだしな?
「今日こそ好きだって、ちゃんと言ってやるか」
くすくす笑いを覆い隠すように、ゆっくりと降り積もる雪がキラキラと輝いていた。


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適当。
めりーくりすまぁああす!いぶ。
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