早朝の訪問者

目覚めるといつもこの顔が待っている。
「ああ、起きたの?」
うっとりした瞳はいつだって優しくて、頭を撫でていく手は心地いい。
ぼんやりした頭でもこの状態が普通じゃないことくらいわかるのに。
「なんで?またいる…?」
知らない人のはずだ。
というか、ついこの間近所の裏道で行き倒れていたのを病院に運んで、ソレなのにどうしたことか、毎朝俺の家に来るようになっちゃったから、全然全く面識がないわけではないのだが。
「寝ぼけちゃってかわい」
困ったことはもう一つある。どうしても会話が成立しないのだ。
頭の打ち所でも悪かったんだろうか?
拾って慌ててこの人を持っていった先の医者のいうことには、どうやら怪我ではなくチャクラ切れが原因だったようなのだが。
それだけでこんな奇行に走るだろうか?
「うー…?」
ここで迷うのだ。毎朝。
俺はこれからアカデミーに行かないといけないし、朝飯も食わないといけないし、顔も洗って歯も磨いて気合も入れて出かける準備をしないといけない。
でも、この人にはその辺の事情を説明してもにこにこするばっかりで埒が明かないのだから困ってしまう。
「どうしたの?」
また撫でられた。まるで子どもを宥める様に優しく。
ああ、困った。
「…今日は、しゃけの塩焼きとのりと昨日の残りの味噌汁です」
朝は軽く済ませる主義という訳じゃないが、朝っぱらから色々用意するのは面倒なのでこれでも俺の朝飯としては上等な部類に入る。
でもなぁ。この人きっと上忍だと思うんだよなぁ…。
だって寝てるからっていっても、中忍の俺が気付かないくらいさりげなく俺の家に勝手に上がりこんだ挙句に勝手に添い寝してるんだもんなー?
そんな人に食べさせるにはこんなんでいいんだろうかとか、そもそもどうやったら困ってることが分かってもらえるんだろうかとか…いつもいつも考えるのだが。
「美味しそう。じゃ、イルカは顔洗ってきてね?俺はお味噌汁温めとくから」
にっこりと微笑むこの人に、それ以上何も言えなくなってしまう。
きっとこれからいつもみたいに一緒に飯食って、また飯食ってるこの人をうっかり見つめすぎて時間がなくなって慌てて色々仕度してるのをさりげなく手伝ってもらって、一緒に出かける羽目になってしまうのだろう。
俺と一緒に出かけた男がアカデミーまで俺を送って行った後、どこへ行くのかは知らない。
この現状に悩んではいる。悩んではいるのだが。
「顔、洗ってきます」
どうしてか手に入ってしまったこの生活を手放す勇気がもてない。
だって一人だったら温めたりなんかしないし、残りご飯ですませている。
でも、この人がいるから、温かい食事を一緒にとって、それから醤油とってもらったり、どうでもいい天気の話をしたりしながらゆっくり時間を過して…要するに俺としては寂しいとすら気付かなかった日常がいつの間にかこの人に埋められてしまったのだ。
今更一人になるなんてきっと寂しくてどうにかなってしまう。
「しゃけは皮までしっかりこんがりしてるのが好きだもんね?」
冷凍のしゃけの切り身を魚焼き網にのせながら、うふふと微笑むこの人が、どこかにいっちゃったらどうしよう?
…悩むポイントがずれてきてる気がするのだが、今日も俺は温かい飯を頬張りながら、この人がいなくならないように見つめるを止められないのだった。
*****
「あー…」
今朝も、またいる。
「おはよ」
ああだめだ。そんな風に笑いかけられたらもう我慢できない。
「あの!俺んちの子になりませんか?ご飯はいつも通りしょぼいし、ベッドはこれしかないので狭いし、でもあの!風呂場は俺の趣味で結構広いと思うんですけど!」
寝ぼけて我ながら訳のわからないことを口走っている。
でもこのままじゃだめだ。こんなに幸せなのにこの人はきっといつかどこかに行ってしまう。
だって、俺はこの人の名前も知らない。
「ホントに…!」
初めて、会話らしき物が成立した。
だって喜んでくれている。
「ホントです!」
力いっぱいそう言って、ちゃっかり手なんか握っちゃったりしてみた。
男の手はいかにも忍らしく指が長くて器用そうな手だ。それに、温かい。
がんばって言ってみてよかったと、自画自賛していたのだが。
「じゃ、もう我慢しないね!」
「え?あれ?…あぁ!」
何だか分からない内に…全部ペロッと食べられてしまった。
*****
見知らぬ行き倒れからちょっと変わった居候になってもらうはずが、今度はちょっと変わったケダモノ…じゃなくて、恋人になってしまったらしい。
「ベッドは狭い方がくっつけていいし、ご飯は俺が作るね!お風呂は…広いほうがいいよね!色々!」
まあ要するにやっぱりさっぱり訳が分からないんだけど。
まあいいか。幸せだし。
散々なれないことをして、気持ちよかったけど腕を動かすのもだるい。でも、男が抱きしめてくれるから、ぴったりくっ付いて寝るのも悪くない。
ああでも、そうだ。忘れていたことがあった。
「あのー?そういえばお名前は?」
「はたけカカシ。これからずーっと宜しくね?」
そうか。カカシって言うのか。この人。…何だか聞き覚えがあるような…?
「うーん…?」
思い出せない。悩みがまた1個増えてしまった。
「かわいいなぁ!もう!」
でも何だか喜ばれた。…考えるのがめんどくさくなってきたなぁ…。
まあ、いいか。布団は温かいし、この人も温かいし。

後になって同僚だの知り合いだのに声をそろえて適当すぎると怒られたのだが…。
まあ、幸せなんてそんなもんなんじゃないかなぁと思っている。


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てきとうー!
こんなうっかりしてる中忍はやっていけないと思うのでした。
ではではー!ご意見ご感想など、お気軽にどうぞー!

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