きもだめし(適当)


夏休みともなれば、人影のない校舎はあっという間におどろおどろしいものとなる。
…と、子供たちは考えているらしい。
今日も今日とて肝試しにきたのが三人もいやがる。
夜もとっぷり更けて、忍ならまだしもひよっこたちには十分足元をとられる可能性がある。機材の移動や修繕なんかもこの時期にするせいで、床に大きなものが転がっているからだ。
それを殺しきれない気配を垂れ流しながらきゃいきゃい騒いで…すぐ見つかるって分かるだろうに。
あれだけ危ないから入るなっていってるだろうが。
…まあかく言う自分もかつては通った道ではあるわけだが。
連中はどうやら先に潜んで後からきたのを脅かそうと考えていたらしい。
自分たちが脅かすつもりでいただけに、油断しきっていたか、逆に臆病風に吹かれていたか…ちょっとした幻術トラップに警告を無視してあっさり引っかかった上にお漏らしまでしてくれた。
普段入れない所に興味を持つってのはよーくわかる。だがそんな所は大抵貴重なものや危険物が収納されている。が何の対策もせず放ってある訳がない。特に先輩のいたずら小僧のおかげで、里中の書庫の警戒レベルが引き上げられたばかりだ。
今回はまだ教員専用書庫だったから良いようなものの、この手のトラップに何の策もなくつっこめば下手すりゃ命だって危ないってのに、低学年だけあってどうもまだ考えが甘い。
アカデミー用とはいえ、危険な術も納められている書庫にそう簡単に入り込めるわけがないと気付いて欲しいもんだけどな…まあまだ早かったってことにしておこう。
へたり込んでいる子どもたちを助け起こすとしがみ付いてきて、随分と懲りた様子だったから、軽率な行動で痛い目を見たのもいい修行になったかもしれない。
とはいえ廊下を汚したものをなんとかしなくてはならない。本来なら掃除させたい張本人たちは怯えきっていてどうしようもないから、宿直室の風呂場に放り込んで体を洗わせている間に、こっちは真っ暗闇の中、床掃除に精を出す羽目になった。
何とか拭き終わったものの、後続が来るかもしれない。
もらした連中が言うことには、売り言葉買い言葉で肝試しの約束をしたらしいから。
掃除用具を片付け、ごたごたしている間に入り込んでいる可能性も考えて見回りをいつもより入念にした。…が、どうやら誰もいないようだ。
正直言って面倒でもあったので、ほっとしながら宿直室に戻った。
「イルカせんせー!」
「おかえりなさい!」
「ここすげぇ!家みてぇ!」
…どうやら風呂に入っている間にさっきの恐怖は大分薄れたらしい。
体を拭いてアカデミーにおいてある予備の服も着せてやったから、ここらでもう一度釘を刺して帰らせよう。
口を開きかけた途端、入り込んできたうちの一人がぼそりといった。
「先生。だれか、きた?」
「来なかったみたいだな。今の所誰もいなかった」
「あいつ…!ビビったんだ!」
「あのなぁ。お前らが言うな!」
見当違いの怒りをさっさと嗜めつつ、一応しっかり叱っておいた。まあ男子なんてこんなもんだよな。
褒められたことじゃないが、気持ちはわかる。
男と男の約束ってやつだもんな。
たとえ肝試しなんて大人にとっちゃ下らないものだったとしても、嘘を吐かれるのは嫌なもんだ。
「…ごめんなさい…」
こうしてちゃんと謝れたし、こいつらはもう大丈夫だろう。
「いいからもう帰れ。送ってくから。なんだったらここに泊まってってもいいけど、お前らがいやだろう?」
夜道をふらふら歩かせるのも不安だし保護者への説明もしたい所だが、おもらしだのなんだのは割り引いておいてやろうと思った時のことだった。
「せ、せんせ…う、うしろ!?」
気配もなかった。とっさに子どもたちを背に庇い、振り向いた先には…銀色に光る髪をした子どもが浮かんでいた。
「迎えに、来たよ」
子どもらしいかわいい声と、赤く光る瞳。
…そんな物を見せられてさっきまで怯えきっていたこどもたちが正気でいられるわけがなかった。
「うわぁぁああああ!」
「逃げろ!」
「ひっひぃいい!」
逃げ足の速さは評価できるな。三々五々散らばっていく子どもたちは心配だが、この人のことだから手はうってあるだろう。
…現に見覚えのある犬が着いていっている。
それだけのことができるんだから、こんなことしなきゃいいものを。
「なにやってるんですか…カカシさん」
「んー?ま、売られた喧嘩を買ったってやつですかね?」
煙が上がり、変化の術が解かれるとそこには、見慣れた男が立っていた。
…大方家での留守番に飽きたんだろう。任務先から今日帰れるかもしれないのにと、式で愚痴られて呆れた覚えがあるからな。
「子ども相手になにやってんですか…」
「だってねぇ?こっちは任務でガキの格好しなくちゃいけなくてウンザリしてたのに。ま、肝試しーとか言ってるだけなら良かったんですけど、宿直がイルカせんせだとか、イルカ先生は怒ったら怖いとか、でもやさしいとか…俺の知らないこと楽しそうに話してたんだもん」
動機は嫉妬か。ばかげちゃいるが嬉しいと思う辺り俺も大概いかれてる。
拗ねて甘えるいい年の上忍で元暗部の二つ名もち相手に、なんでこのひとこんなにかわいいんだろうなんて思ってる時点で、もうとっくに溺れてるんだろう。
…この、恋とか愛とかいう恥ずかしい感情に。
「まあ、いいです。見回りも終わってますし、お茶ぐらいなら出しますよ」
「じゃ、いただきます。朝までいっしょにいましょうねー?」
当然の権利とばかりに唇を掠め取っていった大きな子どもを撫でてやりながら、子どもたちには後でしっかり説教しておこうと思った。

余談だが、書庫の幻術結界に余計なちょっかいをかけていたことをうっかり白状した恋人には、1週間子どもに変化して俺に思う様かわいがられるという罰を与えておいた。
コレじゃできないと騒ぐ姿もかわいかったから、今度また何かやらかしたら覚悟してもらおうと思っている。


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適当。
おとなげないひとたち。
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