やんでますーごちゅういー! 「ひ、ひいぃ!こ、この気狂いが…っ!」 そんな捨て台詞は聞き飽きた。 いつも思う。それが事実だからなんだというんだ? コイツがこれから俺に処分されることも、俺がこれからも同じようにターゲットを処分し続けることも変らない。 コイツの言うところの“気狂い”である俺が、今更狂っていることを嘆くとでもいうんだろうか。 「じゃーね」 喚き倒していたせいか、赤い水を吐き出しながら切り落とされた首が、未練たらしく空気を吐き出してひゅうっと音を立てた。 用があるのは憎しみと恐怖を貼り付けたまま、すぐそこに転がっている首だけだ。 身体の方は…まあ適当に燃やすか、それとも一応引き摺っていくか…。 「ま、コイツのだけ持って帰っても今更か」 気狂い。確かにそうだろう。 部屋一杯に広がる赤い水溜りも、人形のように転がる元人間も、全て俺が作ったのだから。 目的はこの男の首だけだったが、手向かうようなら始末していいと言われていた。 こいつらの目的は今回の依頼人である火の国の要人の情報を盗み出し、他国へ売ることだ。 匂いが漏れないよう専用の袋に突っ込んだ頭の持ち主がその要人の弟で、だからこそごろつきどもに混ぜるには全員殺した方が面倒がなかっただけのこと。 顔を隠していたとしても、安全とは言えない。 あまっちょろいことをいう依頼人は、事態の深刻さよりも、身内が罪を犯したコトに怯えていた。 一刻も早くなかったことに。 依頼人がそう望んだからこそ…弟の存在ごと全てを消してやった。 腑抜けた上に、それでも情があったのか、それとも体面だけを慮ったのかは知らない。 こんな兄だからこそ弟がこんな行為に走ったのかもしれない。 頭をよぎった考えは、いつの模様にさっさと捨てた。 どうでもいいことだ。俺にとっては。 少なくとももっとずっと価値のある行為が待っている。 「好きっていったら、また泣くかなぁ…?」 驚いて目を剥いて、それから悲鳴だか歓声だかわからないものを上げた挙句に抱きついてきたあの人は、「うそだったっていうなら今ですよ!?」なんて言うくせに、鳴きそうな顔をしてたっけ。 それからもそれはもうとても純情というかなんというか…。 キスするだけでうろたえて真っ赤になって、愛の囁きだけで涙ぐむ。 そこがまた俺にとっては可愛く見えて仕方がないんだけど。 「早く、帰りたいな」 気狂いでも血まみれでも…俺が俺である限り、絶対に受け入れてくれる人の下へ。 きっとまた任務馬鹿の俺にも分かるように、やりすぎだとか怪我はないのかとか怒鳴りながら風呂に入れてくれるだろう。 それが嬉しくて好きって言ったら、それだけで倒れそうなくらい真っ赤になってくれたっけ。 あんまりにも居心地が良くて「ここは居心地が良すぎて…いつか愛想着かされそうで怖いです」なんていったら、「離してもらえると思ってるんなら甘すぎます!アンタもう俺のなんですから!」って殴られたりもした。 頭一個分の重さはたいした事はないはずなのに、こんなモノ振り捨てて飛んで帰りたい俺にとっては、邪魔者過ぎて嫌になる。 とんだひとでなしだ。確かに狂っているといわれればその通りなんだろう。 「任務は任務なんだから、アンタみたいに場か正直に悩んでたらダメです。反省は意味のある物にしなさい」 そう言ったあの人が、俺の最後に残った何かごと俺の心をもぎ取っていったことに気付いているだろうか。 あれ以来、何をしても苦しいと思うことはなくなった。 あの人はソレをどう思うだろう? ま、どっちでもいいんだけど。 「好きっていっぱい言って、それから一杯シテ、それから…ずーっと一緒に寝てもらおうっと」 月夜の森の中で軽やかにステップを踏みながら、あの人のことだけを考えた。 それだけで幸せになれるんだから、気狂いなのも悪くないなんて思いながら。 ********************************************************************************* 適当。 陽気な気狂いというかなんというか…? ではではー!お気が向かれましたら突っ込み等御気軽にどうぞー! |