こどもの、ひ(適当)


「折角子どもの日ですんで、子ども作りましょう」
人を押し倒しておいて、頭のネジが二本も三本も…いやそれ所じゃない数抜けまくった上忍が訳のわからないことを言い出した。
一応恋人で、なぜだかしらないが、こんなどこからどうみても男にしか見えないもさいからだで、ベッドの中では女役だ。
…それはいい。納得しているとは言いがたいが、お互いに快感を得られるのであれば、それを否定するつもりもない。
男としての矜持など簡単にねじ伏せられるだけの強さとずうずうしさを持ち合わせたこのケダモノに、今更何を言っても無駄だというのもある。
それに、この美しいイキモノが俺のものであると実感できる行為を、大きな声じゃ言えないが、俺は多分気に入っていた。
同じものをぶら下げておきながら熱心に弄り、それはもう必死になって求めてくる姿は、見ているだけで胸に迫るものがあった。
…惚れた弱みと笑わば笑え。下に敷かれて喘ぐ自分に常ながら違和感と羞恥を感じながらも、それらを遥かに凌駕する快感と充実感に、俺はすっかり溺れていた。
でも。だが。とにかく。
男同士で何を言い出したんだ。この馬鹿上忍は。
「俺は男ですね?」
「そうですね。中々立派でいっぱい出しちゃった時の顔なんてたまりません」
淡々と、だが瞳を輝かせながら語る男に、底知れぬ恐怖を感じる。
なんか悪いものでも食ったのかもしれない。毒も幻術も効かないくせに、どこか詰めの甘い人だから。
大体しょっちゅうチャクラ切れでぶっ倒れすぎなんだよ。挙句看病してくださいとか泣きついてくるくせに、復活した途端に押し倒してくるし。
…なんだか腹が立ってきた。
「だったら!子どもなんて作れないって事くらいわかるだろうが!」
不毛な関係だ。少なくとも生物として正しいかといわれれば首をかしげる。
愛なんて目に見えないものは証明できないし、傍からみれば上忍の慰み者にすぎないのかもしれないなんて、柄にもなく悩んだりもした。
でもだな。それでもこの人の側にいようと思ったのは俺だ。
どんなに欲しくても手にはいらないと諦められなかった。
…要は俺はとんでもなく欲深いのだ。
こどもなんて。
自分には絶対に出来ないことで失うかもしれないことに、気が狂いそうなほどの不安に狩られている。この人の気まぐれが終わるのはいつなのか、それを引き伸ばすにはどうしたらいいのか悩み続けていることにも疲れた。
「できるかもよー?なにせほら、愛の結晶っていうでしょ?」
人の話を聞いてるんだろうか。いや…こりゃぜってー聞いてねぇな。要はただやりたいんだろう。きっと。
ある意味望む所だ。
悩みに沈むより、快感に溺れた方がよっぽどましだ。それが建設的かどうかは別として。
「できるんなら、やってみやがれ!」
「いっぱいつくっちゃいましょうね?」
売り言葉は買われずに流されて、代わりに寄越されたのは欲情にまみれた男の視線。
吐息がうなじをなぞり、不埒な手は下肢を暴いていく。
もう、なにもかんがえたくない。
手馴れた男のされるがままにしているうちに、本来ならそんなものを受け入れるはずじゃない場所に男の性器を受け入れ、それが寄越す快感に喘いだ。
「もっと」
「もちろん。いっぱい、ね?」
いくらでもくれるというから、声が枯れて意識が途切れかけても強請り続け、どうせならこのまま死ねればいいのにと思ったのは覚えている。
*****
「じゃーん!これなーんだ」
「これって…なんですか?」
「養子縁組」
「…なるほど。まさか俺にアンタの子になれと?」
「ま、それもかんがえてみてーっていう話です」
一応色々考えてはくれているらしい。
…まあ死後の財産処理文書に俺の名前が踊っているのを嬉々としてみせられて、火影様に泣き付いたときよりはマシか。
桁の違う財産よりも、この人が死ぬなら俺も連れて行って欲しいと思う程度には溺れている。
受け取るなんて言ったらすぐにも死にそうだと告げたら、深い深いため息と共に新婚旅行の休暇が欲しいとごねられていることまで教えられて、身の置き所がないほどの恥を掻いたのも記憶に新しい。
里長相手に涙ぐんだ挙句に、お前も大変なのに目をつけられたななんて慰められた俺の気持ちが分かるか?
…いや分かられても困るんだが。そんなのが他にもいたらどうしたらいいんだかそれこそ恐ろしい。
要は、コレのために昨日の騒ぎがあったということなら…まあ、考えてやってもいい。
「今年の子どもの日は終わっちまったし、来年までには考えておきますよ」
この上ない本気を無意識に見せ付ける男に、こうして何度も囚われている。
紙切れ一枚で繋がるよりは、こうしてずっと欲しがってもらえるほうが安心かもしれない。
「来年まで、ね?」
なにをにやにやしているのか知らないが、じとっとした視線を向けた所でうれしそうにするばかりだ。
やりすぎてへっぴり腰の俺にもかわいいなんていうだけあって、脳みそが多少残念なんだろうなぁ。時折酷く苛立つこともあるが、そこも好きだ。悲しいかなベタぼれだ。
「もうちょっと、寝ます」
「そうしましょーそうしましょう!…ま、来年なら上手く行ってれば…ふふふ」
うーん。何でこの人こんなに浮かれてるんだ?
…まあこの人がおかしいのは前からだけど。
起きたら問いただしてやろうと決めて、忍び寄る眠気に身を任せた。
あたたかく抱きくるむ腕に甘えながら。

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適当。
できちゃいましたねーって言われて怯えるイルカ先生がいたりいなかったり。
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