ヤンカカモノ連載的な何か。その13。 カカシてんてー視点。 いつも通り病んでるのでご注意ー? まどろむ姿はいつだって可愛らしかったけれど、今は…。 あの時よりずっと美しい。 あの頃の無防備さに鮮やか過ぎるほどの色を刷いた寝顔は、俺の心を揺さぶる。 ずっと腕の中に閉じ込めておきたかったけれど、イルカはソレを望まなかった。 …早速とばかりに舞い降りた哀れな老人の式の呼び出しを、しどけない姿のまま受け取って、そうして笑ってくれたのだ。 「そんな顔しないで下さい。…俺はもう、あの頃みたいに小さくない」 力強い笑顔。 優しさだけじゃなく、何かを決意した漆黒の瞳は輝いて美しい。 もう、守られているだけの子どもではないのだ。 ソレを思い知らされて、心臓を鷲づかみにされたように胸が締め付けられた。 離れていた間にこんなにも…俺の大切なイルカは鮮やかに成長を遂げた。 …その点だけは、老人に感謝すべきかもしれない。 とっさに仕掛けた口づけに甘く蕩けながら、それでもあのまっすぐさを失わない瞳を、食べてしまいたいとさえ思った。 我慢はしよう。 もう絶対に離さないと決めた。…イルカが望むなら少しだけ、あの老人を待ってやってもいい。 だが、あれでもあの老人は里長だ。老獪で陰湿で…だからこそ心配すぎるほど心配だ。 様子は見てやろう。だが目を離すつもりはない。 「行ってきます」 そういって出て行くのを捕まえて、こうして待つくらいには警戒して、俺は厚く重い執務室の扉の前で、愛しいイルカを待つ。 あのときよりももっとずっと…俺を捕らえるその瞳を思いながら。 ***** 途切れ途切れに老人の喚き声が聞こえる。 「…あの男は…おぬしにとって危険じゃ。必要以上の接触は…」 「なぜですか?あの人は…上忍師ですよ?」 どんな顔でそう言ってくれているんだろう? 誤魔化すための言葉なんて嫌いなはずのイルカの、忍らしい一面にほくそ笑む。 だってこれは俺のためだ。 「…とにかく、よいか?アヤツに近づくことはまかりならん」 必死で言い募る老人にとっては、威厳ある言葉のつもりだろう。 もはや誤魔化しきれない動揺に、その真意が透けてみえる。俺じゃなくてイルカにだって。 …焦っているのだ。俺がもう奪い返したのだと知らずに、今更引き離そうとしている。 「三代目。俺は、あの人が」 イルカの声は澄んで甘い。 俺のために戦っているのだからなおさらだ。 息を飲んだ老人の顔など、見なくても分かる。 きっとさぞや…怯えていることだろう。 大切な大切な…俺のイルカを慈しんでくれたことには感謝してやろう。 もう、俺のモノだ。 完全に消していた気配をジワリと開放した。 「三代目。…ああ、取り込み中ですか?」 ぎりっと歯をかみ締め、顔色を無くした老人が立っている。 その傍らで俺を見つめるイルカは、視線を絡ませただけで頬を赤く染めて。 老人の瞳を狂気に近い絶望の色に染めた。 「すみません。俺、もう行きます!…御前失礼」 ふわりと俺に微笑んで、イルカが駆け出していく。 なでて、抱きしめてそれから…何度だって喘がせたい。 噛み殺した欲望の気配に、老人は敏感だった。 「貴様は…!何度アヤツを…!」 震えて途切れる声。いっそ笑えるくらいだ。 今更だ。全てが。…なぜそれがわからないんだろう。 「しょうがないでしょ?…ね、もう無駄なことは止めませんか?」 「なにを世迷いごとを…!」 「俺もね、離して上げられるなら…」 「ならば…!」 懇願染みた色を浮かべて縋る老人を、哀れだと思った。 でも…もう、離せない。無理だ。 取り戻した半身を、手放せる訳がない。…もう、二度と。 「何を…!」 「…ねぇ。だから。…俺に無駄なことをさせないで?」 強請るなんて、したことがなかった。 嫌がらせのような任務ばかり押し付けられても、俺は老人に強請るより冷笑で応じた。 だから…老人の驚きが手にとるように分かった。 …それに付き合ってやる気もないが。 「…貴様から近づくことを許した訳では…!」 ああ、まだわかっていないらしい。この老人は。 「あの子は、来ますよ?」 何度引き離そうとしても、俺を求めて。…二度と引き離されないために必死になって。 「何故…!何故じゃ…!」 呻き声にこみ上げる笑いを押し殺した。 無駄だっていってるのにね? 「…では、また…呼び出しならいつでも受けますよ?」 ガクリと肩を落とす老人を置いて、重い扉が閉ざされる。 それがまるで老人の未来を映しているようで。 「…あーあ。馬鹿だねぇ?」 愛しい人のことを思った。 今頃俺のことを心配している。 後で、邪魔が入らなければまた攫いに行こう。 きっと安心したように笑ってくれるだろう。 そうしたらずっと一緒だと囁いて、抱きしめてやればいい。 老人どうあがいても、俺とイルカを引き離すことなどできないのだから。 ********************************************************************************* ヤンカカモノー。 …ぶんさいがほしいな。だめにんげんにもめぐみがこないかな。 ではでは!ご意見ご感想など御気軽にどうぞ! |