「殺しても、いいですよ?」 男は追い詰められて尚、挑戦的な瞳に笑みを浮かべさえしたのだ。 ただの中忍教師だと侮るべきじゃなかった。 …俺がこんなにも欲しいと望むものが、そんなお綺麗な人間であるはずがないのだから。 「殺さない。…でも」 男の瞳に映り込む己は、まるで餓えた獣のようだ。 目の前の獲物を捕らえ、引き裂いて、全部食ってしまいたい。 男は怯えなどしなかった。 「…ああ、そうですね…?そっちの方が気持ち良さそうだ」 にんまりと笑った男は、悪鬼と、化け物と呼び蔑まれている俺よりも…よっぽど悪魔じみていた。 男のまとう服が落ちていく。 雨上がりの森には土の匂いが満ちているはずなのに、どこか甘い匂いが俺の鼻を飲み込んだ。 …まるで毒のようだ。 誘われるようにその体に手を伸ばし、気が付けば地に伏せた男の腹に己の欲望を飲み込ませ、そのまま激しく揺さぶっていた。 その中を自分の熱で汚し、抱えきれない欲望の残滓を溢れさせるまで。 ***** まるでタチの悪い毒のような男だ。 さりげなく距離を取り、だが虎視眈々と俺を狙う。 近寄ってもこないのに、その視線だけで側にいると分かる。…俺をどうしたいのかも。 流石上忍だ。 …その日は、演習場の下見だった。 子どもたちとはいえ、もう高学年だ。それなりに本格的な演習を行うために森の奥深くまで分け入っていた。 ここには結界を張って、それから崖には転落防止ネットを仕掛けて、教師を3人配置。ルートは中央の川を必ず一度は通るようにするが、流れの弱い上流にはトラップを。 …地図はあっという間にメモで一杯になった。 大まかなチェックが終り、一息ついていた時、ゆらりと揺らぐ何かが俺の前に立った。 「なんで、いるの…?」 夥しい血の匂いを漂わせ、不安定なチャクラを放ちながら、瞳だけはギラギラ輝かせて俺を見る。 あの、見られるだけで背筋が震える視線で。 川の側で休憩を取ったのがまずかったらしい。男はどう見ても任務帰りだ。その身に纏う赤い命の残滓ごと、殺気も洗い落とすつもりだったのだろう。 本当は、すぐに医療班を呼べばいいとわかっていた。怪我をしていなくても、この状態なら呼び出して咎められることはないし、俺以外の目があれば、男は暴走を止められる。 …それだけの精神力がある男だ。 だが、俺は。 「殺しても、いいですよ?」 笑っていた。誘うように。 …その赤く染まった男の瞳が揺らいで、獣から迷子のものに変わって行く。 餓えて乾いて、誰かを求めるその瞳。 俺に伸ばされる手は、縋るための物にしか見えなかった。 こういう時は、どうすべきかなんて分かりきっている。 「…ああ、そうですね…?そっちの方が気持ち良さそうだ」 引き裂かれてもいいとさえ思わされた男に、この身を差し出すのも悪くない。 これから里に帰るのだから、服は汚されない方がいい。 奇妙なほど冷静な己の思考にしたがった。 脱ぎ捨てる服を、露になる無骨な男の体を食い入るように見つめ、男が喉を鳴らしている。 餓えているのだ。なら与えてやればいい。 「カカシさん」 差し出した手を引かれ地に倒された。 餓えた獣は獲物を蹂躙するコトに夢中だ。 俺も…食われることへの幸福感に浸りながら、男を抱きしめ、その熱を受け入れた。 全部が済んで、さてこれからどうしようと思うまで、男に溺れていた。 ***** 「あっちょっ!いいですって!自分で!」 「ヤダ」 どこもかしこも赤い。俺が運んできた返り血はとっくに洗い流してしまったから、当然それは俺のつけた印だけだ。…それから、男の羞恥心の賜物か。 とろとろと零れだす白い物が水に散っていくだけで喉がなる。これは俺のモノだという満足感と、もがく獲物へのもどかしさでジワリと腰が疼いた。 「…ここじゃいやだ。水が冷たい。…帰りましょう?アナタにも報告が…」 「式で」 男が四の五の言うのにイラついた。逃げようというなら…ここまでしておいて俺から離れようとするなら、いっそ言葉通り殺してしまおうか。忍としての男にどうしようもなく惹かれたけれど、失うくらいなら誰にも見つからない所に閉じ込めて、犯して鳴かせて、そのためだけの生き物に変えてしまおうか。 「…しょうがねぇなぁ」 男が手を引く。その身を惜しげなく晒しながら。 「俺の家、行きますよ。アンタは…まず飯食って、それから温かい風呂に入って、ベッドは狭いけど我慢しろ!」 「…うん…!」 「あーあ…まあいいか」 笑う俺に男が更に肌を赤く染めた気がした。 「もう、俺のもんだしな」 …そのセリフに俺の理性がまた溶けて、帰還は結局その日の夜になったが、男は嬉しそうに笑ってくれたから。 上忍の自制心を凌ぐ挑発をしてのけた恋人を、強く強く抱きしめた。 どこにも、逃がさないように。 ********************************************************************************* てきとー! ねむいー!←アホ。 あきなので!なんかこう…しっとり!でもむり!どうしよう!? ねます! ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー! |