有り体に言うと溜まっていた。 下に敷いた男の帰りが遅すぎたせいだ。 「イルカ先生…?」 普段は自分の方が好き勝手するくせに、こういうときに純粋に不思議だって顔をするなんてずるいじゃないか。 まあ、いい。どっちにしろすることは決まっている。 …そんな顔にすら興奮する自分は、そういえば組み敷かれるより組み敷く側の性だったのだと今更ながら思った。 風呂上りに禄に服も纏わず、バスタオルだけでふらふら無防備に歩いてるのがいけない。 透き通るように白い肌を薄赤く染めて、俺を見て…安心したみたいにため息なんかつくから。 「あんたが、悪い」 無造作に寝巻き代わりの浴衣を脱ぎ捨てた。 夜はまだ少し膚寒い。すぅっと肌を撫でる冷気が心地よくて、自分が酷く興奮しているのだと知った。 欲望に尖る性器は、開放を待ちわびている。 それに気づいてか、男がまたそっとため息をついた。 「すごい眺め。…どうしたの?」 細められた瞳が潤んでいる。男も興奮しているのだ。 確かめるために男のソコに触れると、その存在をしっかりと主張していた。 どうしたもなにも、この状況でわからないわけがないだろう。 「あんたが、欲しくなりました」 任務は随分と長かった。 男が帰還するまではすっかり忘れていたというのに、側にいることに安堵した途端これだ。 毎度毎度、帰ってくるなり盛る男を疑問に思っていたものだが、結局は俺も同類か。 興奮に乾く唇に舌を滑らせて、男に見せ付けるように笑って見せた。 何の潤いもなしにはつながれない己の体が疎ましい。痛みなど気にしないが、男はそれを嫌がるだろう。 もどかしい。…興奮でおかしくなりそうだ。 「イルカ」 絡みつく手が腰に回り、後ろにまで伸ばされる。覆いかぶさるようにキスを落として、絡みつく熱い舌を夢中になってむさぼった。 足らない。ずっとこの男に飢えていたから、早く満たして欲しくて我慢できそうにない。 男が小器用にベッドサイドの引き出しを開けて、いつもの潤滑剤を取り出している。こんなときでも余裕がある男を少し憎らしく思った。 「ん、あ…っ!」 ぐんと一度に突き入れられた指は、ぬめりを帯びて奥まで入り込んでくる。性急なその動きからして、男にも外見ほどには余裕がないのだろう。 勝手に揺れる腰に男が挑発的に笑うから、意趣返しに男の性器に手を伸ばした。 「ん…っ!もっと、一緒にシテ?」 言われるままに自分と男のモノをこすり合わせて、快感に酔った。滴る欲情の証はすぐに手を汚し、ぬちゃぬちゃと卑猥な水音を立てている。 もう我慢できない。それは男も同じだっただろう。 続きをそそのかすように、後ろに飲み込んだ指を締め付けてやった。 「はやく」 「ん、腰あげて」 「ん、あぁ…あ…!」 入り込んでくる欲望が中をいっぱいに満たして、待ちわびた刺激に身を震わせた。 やっとつながれた。それだけで奇妙な達成感が胸を満たす。 もちろんこれは始まりに過ぎない。 飢えが、俺たちをそそのかすから。 どちらともなくゆらりと視線を絡ませ、動き出したのはどちらが先だったか。 欲望をぶつけ合い、目がくらむような快感に溺れた。 飢えて飢えて互いを求める俺たちは、いずれ食いつぶし合うのかもしれない。 それでも求め合うことを止められない。 離れればまた飢えに支配されると知っていても。…だからこそ、この行為に没頭するのかもしれない。 やがてはじけた熱を内側で受け止めて、自分の吐き出したもので男を汚しても止まる事等できなくて、結局いつ行為を終えたのか記憶に残っていない。 ***** 「イルカせんせ。かわいかった」 「そ、ですか」 声もでない。腰も抜けている。ついでに言うと上に乗ったままの男が重い。 不埒な手つきは相変わらずで、満足げな獣の笑みもいつも通りだ。 「はつじょうき、かなー?イルカの発情期ってすごいらしいですもんね」 「うるさい。あんたがさっさと帰ってこないのが悪い」 「ん、そうね」 悪いなんて欠片も思っちゃいないだろう。…勝手な男だ。昨夜の行為を反芻でもしているのか、やに下がった顔で俺に張り付いている。 そんなのに惚れた俺も相当に馬鹿だが、惚れた弱みと諦めた。 「あんたも…」 こうだったんだろうか。いつも。 ふとそんなことを思った。…こんな飢えに耐えていたのかと。 「動けないでしょ?今日は一日いちゃいちゃしましょうね?」 調子に乗った男に拳を振り下ろしついでに、またあんな顔が見られるなら、俺から誘ってやるのも悪くないだろうかなんて不埒なことを思った。 ********************************************************************************* 適当。 はるなので。 ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ! |