とりあえず一服盛った。 手に入れるにはなりふりなど構っていられない。 恋だとか愛だとか、そんな感情はよくわからないけれど、この狂いそうなほどの飢餓感を埋められるのはこの人だけだ。 それはもう腕によりをかけて罠に嵌めたつもりだが、思いのほかあっさり掛かってしまったのには拍子抜けした。 この人は、これでも凄腕の忍のはずなのに。 確かにつかった薬は開発中のもので、まだ誰も耐性をつけていない。 いつも通り俺に回ってきたばかりだから、恐らく里内でまだ誰も知らないだろう。 …俺に薬物の耐性があるなんて知っている人間の方が少ないんだし。 モルモットだなんていわれることもあるが、自分としてはそれなりにこの立場を気に入っている。 最初に俺に投与されて、それから俺から抗体を採取する。 何しろほぼ全ての薬物が効かない。…というか、効き難いのだ。 毒でも媚薬でも…反応しはするが、常人の半分以下の時間で俺の体はそれを壊してくれる。 丈夫に産んでくれた両親に感謝…というより、うみのの家の生業として、元々備わっている能力だから仕方がない。 苦しいのも痛いのも、それから熱に浮かされるのも好きじゃないが、俺のおかげで助かる命があるのなら、多少の苦痛など望む所だ。 …まあ、以前その手の薬を飲まされて、本来なら状態を観察するはずの人間に手を出されそうになったときには閉口したが。 すぐに毒が抜けるのが分かっていて、高まりつつある体がおさまったら、覆いかぶさる不愉快な男を蹴り飛ばしてやるつもりだった。 まるで映画のように颯爽と、見知らぬ暗部が助けに入らなければ。 「え…!?」 「だいじょーぶ?辛そうだけど。…俺でイイ?この馬鹿みたいに突っ込んだりしないよ?」 穏やかにとんでもない提案をするその俺とそう大して年の変わらないであろう青年に、それはもう口では言えないような目に合わされた。 …で、まあその仕返しと思えば今回の件も許されるんじゃないだろうか? 最後までしなかったにしろ、かなりきわどい行為を仕掛けられ、最後には涙を流しながら縋っていた。 これが屈辱でなくてなんなんだ? 確かに快感は凄まじく…残念すぎることに、ソレは薬が抜けても変わらなかった。 翻弄され喘ぐ俺を柔らかく包んで刺激する男に、情けなさと悔しさで涙を零したというのに、困ったように微笑まれたっけ。 「苦しい?…すぐ済むよ…?」 そんな風に…単なる治療だと言い聞かせるような声で言わないでほしかった。 だってもう、とっくに恋に落ちていたのだから。 思う様吐き出してどろどろに男も俺も汚して、それでも男が欲情した様子など欠片もなくて。 何度目か分からなくなった絶頂の瞬間、薬のせいでなく意識を手放しかけた俺に、男は言った。 「またね」と。 それから里で目覚めるまでの記憶は途切れている。 胸のうちに燻る思いを誤魔化し続け、忘れようとした。 …再会するなんて思いもしなかった。 相手は暗部で、それもせいぜい盛りのついた犬の世話をするくらいのノリで、俺の体を弄繰り回した。 屈辱的で…どこか甘く痺れるような記憶。 …もう一度出会ってしまえば、生々しい記憶の全てが俺の心をとんでもない方向に引きずり出してしまうのを止められなかった。 余りにも簡単に罠に嵌った男に、どうしてももう一度触れたかった。 卑怯なマネと知りながら、欲情するのは男の悲しいサガだろうか。 「カカシ、さん」 眠るように横たわる体に触れると、それだけで興奮した。 きちがいじみた自分の一面を知って、溜息所か眩暈すらするというのに、男の体を暴く手は止まらない。 全てを剥ぎ取り、男として羨ましいとすら思わされる体を露にして、溜息が零れた。 …触れて、それから…。 ゴクリと喉を鳴らして、男の胸元に滑らせた手は届かなかった。 反転する視界の先で、男が微笑む。 「おいたは、ダメでしょ?」 やはり、わざとか。その笑みがヤケに楽しそうなのに絶望した。 あの時と同じように、おもちゃにでもするつもりだろうか。 …それでもこの男に触れられるだけで幸せだと思ってしまう自分もいるのだから、涙も出ない。 「その顔、好きよ?…前はめちゃくちゃにしたくなるの我慢したけど…今日は、いいよね?」 そうやって欲しがってくれるのを待ってたんだから。 そう言って、自分ばかり楽しそうに笑っている男の瞳に、うっとりと目を細める俺が映っている。 そうだ。欲しかったんだ。ずっと。 …だから。毛並みばかりいい性悪なケダモノに自分から食われることを望んでいる。 「ケダモノ」 あの時と同じの罵り言葉で愛を囁いて、にんまりと唇を吊り上げる男を挑発するように微笑んだ。 自分から男の餌となるために。 ********************************************************************************* 適当! ねむいのでー…。こういう系のニーズはどうなんだろうかと呟いてみるテスト。 |