受付所が一番忙しい時間帯にトイレに行きたくなって、それでも人が切れるまで必死になって我慢して大急ぎでトイレに駆け込んだ。 やっと楽になれるとばかりに前をくつろげ、さっさと用を足して、開放感からほうっとため息をついたまではよかったんだが。 …悲劇はそのとき起こった。 急いで戻ろうとするあまり、勢いあまって大事なものをチャックにはさんでしまったのだ。 「うぐぅっ…!」 同じ急所でも腹を殴られたりするのとは違う、もっとオスとしての本能に訴える恐怖と痛み。 思わず背を丸めて呻く俺に、なぜか背後からそっと手を差し伸べる人がいた。 「イルカせんせ…!大丈夫ですか!?」 恐ろしいことにこの声には聞き覚えがあった。 上忍でしかも元暗部で、もっというなら顔までいい。 しかもかわいい元生徒たちの上忍師でもあるのだ。 いろんな意味でみっともない所を見せたくない人だというのに、なんてとこに居合わせてくれるんだ! 「え!?あ。はい!その!ほっといてくださればそのうち…!」 はさんだといってもすぐに手を止めることができたから、ダメージは最小限に抑えられた。 切れてもいないしせいぜい赤くなった程度で…まあそれでもしぬほど痛かったんだけどな…。 忍の反射神経にコレほど感謝したことは無い。もしかしたら万が一こんなところに怪我なんかしたとあっては、肉体的にみならず、精神的ダメージもっとずっと激しかっただろう。 幸いにしてたいしたことが無いんだから、後はこの激しい痛みとどっと噴出した冷や汗が収まるのを待つだけだ。 本当ならのた打ち回りたいくらいだが、この状況じゃそうもいかない。 とにかくひたすら耐えに耐えていると徐々に痛みも遠のいてきた。 おかげで前かがみになっている俺の背を優しく撫でる上忍の手に遅ればせながら気づいてしまい、申し訳なさと情けなさで涙がこみ上げてきた。 既に痛みで涙ぐんでいる瞳は、決壊寸前だ。 もし真実を知られても…いくら上忍とはいえ、こんなところは鍛えられないはずだから、同じ男としてこの痛みに共感してくれるかもしれない。 …で、そんなことされようものなら、俺は今すぐ火影岩から飛び降りてしまいたいほどに落ち込むこと受けあいだ。 何が起こったか気づかれていないことを祈りつつ、今度は慎重にズボンの前を閉めた。 「あのう。ありがとうございました。ちょっとその…!」 今度は別の意味で冷や汗を流しながら立ち上がったものの、視線は合わせられなかった。 なんだかしらないけど写輪眼ってのは心も読むそうだし、そんなものが無くてもこの人なら気づいてしまいそうな気がしたんだ。 そうしたら情けないこの状況も読まれてしまいそうで。 そそくさと手を洗おうと足を速める俺に、なぜか上忍はぴったりとついてきた。 「痛かったでしょ…?大事な所なのに…」 ばれてんじゃねーか! 「うぅ…その、あの!」 必死で隠したと言うのに無駄だったこの空しさ。 せめて見なかったふりをするとかして欲しい。洞察力だって俺なんかより数段優れてるのは分かったから、それならなおのことだ。 八つ当たり気味に睨みつけたら、にこやかな上忍はとんでもないことをしやがった。 「ああ、でも怪我はしてませんね?よかった」 「ぎゃあ!?なななな!?なにすんだー!?」 もまれた。どこをって…いえないようなところを。 それも手つきがどことなくいやらしいような…!? 「後でちゃんと治療しましょうね?恥ずかしいだろうから俺が診ますよ」 「い、いえ!たいしたこと無いですから!」 何なんだろうこの人。何で人のちん…いや、そんなもの握ったままさわやかに俺を慰めてるんだろう。 「駄目でしょ?大事な所なんですから。俺は穴さえあればいいなんて思わないですし」 「はぁ!?」 手が離れてくれたのはありがたいが、上忍の言いたいことがさっぱりわからない。 分からないのに本能的な恐怖を感じるなんて…相当だ。 「さ、行きましょう?受付、あとちょっとですもんね?」 「は、はい。そうですね」 そうだ。受付に急がなくては。 …仕事云々はおいといて、この人とこれ以上一緒にいたら怖いことになりそうな気がする。 ちゃんと手も洗ってついでにしっかり拭いて、逃げるようにトイレを後にした。 上忍はそれをにこにこ見守りながら手を洗うでもなく俺を見送ってくれたんだが。 「あの人、何しに来たんだ…!?」 考えるのが怖い。…もうこれ以上のことは忘れよう。 受付では同僚が待っていて、「なんだでっかい方だったのか?」なんてからかわれたのは癪に障ったけど、それはもうほっとしたのだった。 ********************************************************************************* 適当。 うっかり続いたりするかもしれません。゜。゜(ノД`)゜。゜。ってニーズあったらですが(;´∀`) アンケートにご協力いただきありがとうございました! ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |