「ほーら、こっち向きなさい」 「や!」 ぷいっと顔を背けて不満げに唇を尖らせているのは、立派な成人男子で、実は俺よりちょっと重いくらいだ。 その所作と外見との差に密かにダメージを受けながら、今日もせっせと世話を焼く俺だ。 この鼻傷の中忍は、元々こうだった訳じゃない。 切欠は単なる事故。…というか、俺が巻き込んだに等しい。 戦闘中にたまたま通りがかったこのお人よしの先生が、敵の放った術から俺を庇った。 中身は周囲にいる敵を全員子供にまで退行させるなんていう、タチの悪いもので。 戦意を喪失した子供を浚って敵を味方に教育しなおすことすら可能なものだった。 だが一応教師らしく術返しを試みたおかげで、中途半端に術がかかったこの人は…頭の中だけが子供になってしまったのだ。 そもそもその術を奪い取るために差し向けられた俺としては、術の回収には成功したのだがこの人がこんな風になってしまうなんて予想外にも程がある。 世話を引き受けたのは、この人がこうなってしまった原因が俺であることと、術を解くにはこの術を知る俺が一番だと里長には伝えてある。 邪なたくらみになど、気付いてもいないだろう。 …里も、本人も。 思い人のそばにあることができる。それもおおっぴらに。 なにせこの人が術にかかってしまったことへの罪悪感より、素直に甘えてくることへの歓喜が上回ったとはいえ、落ち込まなかったかといえばうそになる。 里長もそんな俺の姿に、里の稼ぎ頭に休暇までよこしたのだ。 タイムリミットは3日。 幸いにして、術返しのせいで半端に絡み合った術は、実はもうとっくに解けている。 あとは時間の問題だ。 強引に解くよりあと少し。…それこそ明日にはこの人は元の姿を取り戻しているだろう。 優しい笑みを浮かべて、でも俺に対してどこか壁を作ったままのいつものこの人に。 今なら二人っきりだ。壁も何もなく、真っ先に目の前にいる“大人”に懐いただけだとしても。 「でもだからって、食っちゃえる訳じゃないしねぇ?」 頭を撫でると、さっきまでお菓子の食べかすをくっつけて不満げな顔をしていた人は、にこにこ笑って抱きついてきた。 「カカシさんもいっぱい食べて?」 そんなセリフを言うなんて、この人が正気なら押し倒してでも思い知らせている所だ。 でもこの人の中身は子供で…。 ああそうか。でも体は大人だ 「どう思います?イルカ先生」 「ふぇ?」 唇に指を這わせても無防備に微笑む子供を、好き放題に穢しても…きっと今晩が終われば全てを忘れてしまうだろう。 でも、やることやって布団で絡み合っていれば…流石のこの人も無視できないはずだ。きっと慌てふためいて…怒鳴るか、詰るか、それとも…俺の方が責任とってと縋ってみようか。 「だってねぇ。好きなんだもん」 甘えるように抱きしめると、慰めるようにその手が俺を撫で返してくれた。 「イルカも!カカシさん好き!」 間近にある笑顔は、その言葉は、意味は違っても狂うほど欲しかったもので。 ぶつりと理性の鎖が途切れた音がどこかでした気がした。 …鼻傷を掻く中身だけが少年に変わってしまった思い人を、すぐさま押し倒したのは言うまでもない。 ちなみに詰るでも怒鳴るでもなく、勿論俺が縋ったわけでもなく。 目覚めたこの人が真っ先にしでかしたのは羞恥で真っ赤になって絶叫して、その勢いのまま行き成りの告白に及んだってことだけは言っておく。 「カカシさん好きです」なんて、教師として鍛えられたせいかそれはそれは大きな声で叫んでくれたおかげで、虫除けが必要なくなったのはありがたいけどね? ********************************************************************************* 適当! どうしてこんなにねむいの…。どっかわるいの…頭は元々だけどな/(^o^)\ ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |