堪忍袋の緒が切れて(適当)

ちょっと聞きたいことがあって恩師を訪ねたら、職員室じゃなくて薬剤室にいるって言われて、そっと覗いたら、いつも通りの犬の尻尾みたいに括った髪がひょこひょこ揺れていた。
普段の大雑把さが嘘みたいに真剣な面持ちで繊細な調薬作業をこなす先生の姿を見たら、なんだかちょっと…そう、ちょっとだけなんだけど知らない人みたいに思えて…寂しいなんて思っちゃった。
でもそんなことを話してる余裕はなかったから、こっそりさり気なく私の用件を果たすつもりだったのに。
「もう困っちゃいますよねー?正直になれないみたいで」
冗談めかしてほのめかしたのは…もう一人の恩師の恋心だ。
名前なんて出さなかったし、懸想してる相手がまさか同性のあなたですなんて言えないし。
だから気付かれなくてもほんのちょこっとだけでもイルカ先生の反応がわかったらいいなーとか、気付いてくれたらちょこっとでもいい意味での動揺でもしてくれたらッ手思ったのよね。
でも、先生の反応はそのどれとも違っていた。
「先生もなぁ。そろそろなんとかしなくちゃって思ったんだよ」
にこやかに微笑むその姿は卒業する前にいつだって私たちを励ましてくれたのと同じはずなのに…目が笑ってない。少しも。
部屋の温度が下がったような気がするほどに冷たい微笑み。
こんな笑みはむしろ今の上司でもある上忍の方に似つかわしい。
忍そのものみたいな笑顔だった。
混ぜ込まれていくものたちはどれも強力な…。
「えっと、その、もしかしてイルカ先生って…」
「大丈夫だよ。サクラ。…でも、自分の部下に迷惑かけちゃだめだよなぁ?」
凄みのある笑みに気圧されて、引きつった笑みを浮かべた私を、イルカ先生は優しく撫でてくれた。
「…イルカせんせ。がんばってくださいね!」
「おう!…サクラも無理するなよ?」
何もかも分かってるみたい。
そうよね。なんてったって私たちの先生何だもん。
あの薬。配合の全部はわからなかったけどあんなに無味無臭の癖に、中身は相当キツイ興奮剤だった。
ってことは…そういうことなのよね?
「じゃあ、また遊びにきます!」
「はは!いつでもいいぞ!…コレが、すんだらな?」
鋭さを含んだ笑みに安堵した。
だってこれで相談事は必要なくなったもの。
脈有かどうか聞いて来いって言われてもって、思ってたけど、これなら放っといてもいいわよね?
そうね、でも飲みに誘うようにだけは言っておこう。
お酒に入ってたらまずわからないもの。
…結構はきっともうすぐ。
「ま、なるようになるわよね?」
その呟きどおりに翌日にはすっかりよくしつけられた犬みたいに恩師につき従いおおっぴらに愛を請うようになった上司兼恩師には…丁度良かったですねって言っておいた。


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適当!
怖い中忍フェア。
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